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101話 親子の再会と新生活

過去1長い1話になりました。気づいた時にはもう既に数千文字書いているのは普通なのでしょうか。


貴族とか王族とか、異世界の政治は難しいからあまり書きたくなかったのですけど、書いてしまったものはしょうがないですね。敬語とか礼儀作法とかうち自身がよく理解していないのでこれも勉強の一環だと思って色々調べてみることにします。

「サルト、起きて。王城についたよ。」


ルイーザさんに起こされた。

車窓から見えた空はまだ薄暗く、日が昇り初めて間もない時間かな。


王都に来ても遠くからしか見ていなかった王城。そのワイトパレス王城の大きな庭に車を停めていた。


ルイーザさんも運転手のお姉さんも暇そうに座っている。誰か来るのを待っているのかな?


そう思っていたらルイーザさんが突然窓の外を見て、「げっ」と、 言いたげな表情をしていた。それと同時に少し頬が赤くなっていたは気のせいだろうか。


不思議と理由が分かった気がする。


ルイーザさんの視線の先に居たのは薄紫色の髪のイケメン。

なんか、女を沢山誑かして遊んでいるチャラ男系のイケメンだと直感が告げていた。

できる限り関わりたくないな。


「なんであんたが来るのよ。ヘルファス。セレナルコが来てくれるって話じゃなかったの?」

「そんなの、俺が代わりに行ってやるって言ったらすんなり承諾してくれたな。」

「この女たらしが。軍人のくせに倒してきた魔物より食ってきた女の数の方が多いんじゃないの?」

「可能性はあるかもだな。ルイーザ、今夜空いてるよな。」

「空いてないし、空いていたとしても絶対にあんたなんかと一緒にいるつもりはないし。」

「連れないなぁ。まだ10年前はあんなにいい声で鳴いていたというのにな。」


うーっわ。最低な男だ。


「まあ、今はサルトの案内が最優先。例え、その案内役があんたでも今は我慢してやるわ。」

「そうかいな。なら、明後日の夜はどうか。空いてる? イテッ。」


運転手のお姉さんがイケメンの頭にチョップ!


「僕たちみんな同期でしょ。喧嘩は良くないよ。」

「「黙っておけ。暗殺姫!」」

「「ハモる」」な!」んじゃねー!」


2人はそのままお互いを愚弄するだけの口論をし始めた。

状況が掴めない。3人は知り合いで同期?


「 3人はどういう立場の人なの?」


子どもらしく聞いてみる。


「僕はスフェリサ・セリステラ、王国軍暗殺部隊の隊員よ。あの喧嘩している2人はルイーザとヘルファス。ルイーザは王国軍遠距離射擊部隊副隊長。ヘルファスは王国軍陸上戦部隊副隊長だね。」

「へー。ルイーザさんってそんな凄い人だったんだね。」

「そうよ。ルイーザなんて軍学校で僕達の代の首席だったんだよ。」

「ええっとそろそろ行きませんか。」


お互いが髪を掴み合って,今にも殴り合いに発展しそうな喧嘩をしている2人に声をかけた。


2人は睨み合いながらも王城へ案内してくれた。


王城は、早朝なのにメイドがそこら中で掃除をしていた。

メイド長のセレナルコの嚮導である部屋に連れて行かれた。



部屋には、人が3人居た。2人の男性はブロンド色の髪で1人は50代の中年、もう1人は20代前半くらいの青年。もう1人は茶髪の女性。40代かな。


ルイーザたち3人が突然跪いて頭を下げた。

慌てて真似をする。


「第2皇女をお連れしてきました。」


ルイーザさんの進言に、


「表を上げよ。」


豪勢な服。威厳ある態度。それを見て何となくこの人達の正体を理解した気がする。


「国王?」

「そうだ。俺こそウェンティサ・セリンデブル。セリンデブル王国現国王だ。」


ですよねー。


「じゃあ,サルトのお父さんってことだよね。そっちの女の人はお母さん?」

「そうよ。10年間、顔も見せなくてごめんなさいね。」



こういう時は「なんで今まで会いにこなかったの?」とか「今更。」って怒ったり、両親との感動の再会を喜んで,母親か父親に抱きついたりするのが普通なのだろう。

でも、両親と再会しても、不思議となんとも思わない。

憎しみも怒りも、喜びもない。


仕送りのおかげでお金には困らなかったし、メイドのおかげで生活にも困らなかった。転生してから十分充実した環境で生きてきて不満はない。

だから、怒りとか憤りとかの負の感情はない。

記憶の中にこの世界での両親はいなかったから別に寂しいと思ったこともないし、会えたことを嬉しく思うわけでもない。


不思議な気持ち。



これからどのように2人と関わればいいのか。

国王と皇女って普通はどんな関係なんだろう。

色々礼儀作法とかあるだろうし、多分前世の母親、花野井(なり)と同じように接しちゃダメだよね。ああ、絶対なんか間違える。不安だ。


分からないことは人に聞くのが1番てっとり速い。


「えぇっと、お父さん達にどう接したらいいのか、サルトよく分からない、でしゅ。」


噛んだ。

敬語なんてめったに使わないから、尊敬語や謙譲語、ましてや丁寧語すらまともに使えない。

別にいう言葉が分からない訳ではない。テストで敬語について問われても難なく解ける。

というか丁寧語なんかは“です””ます”“ございます”をつけるだけの簡単なことだ。

作文や手紙でも必要なら書ける。書く分には問題ないのだが、人と話す時となるとタメ口の方が自然と出る。

今みたいに特別意識して話すと最後に“です”をつけるだけなら、って感じ。


慣れない敬語に加え、どう接したらいいのか分からない両親を前に、緊張してつい噛んでしまった。

大丈夫かな。怒ってないかな。変に思われたかな。お父さんずっと真顔だし何考えてるのか分かんないよ。これで怒らせちゃって不敬罪で首を刎ねられて第2の人生お終いになるのは嫌だよ。


「サルトが接したいように接したらいいんだよ。」

「うん。わかった。お母さん! お父さん!」

「いきなりタメ語とは、こりゃびっくり。とても面白い。王之威圧をモノともしないとは。」


ん? 王之威圧?

何だそれ。怖そうな響きなんだけど。


はてなマークを浮かべていると20歳くらいの方のブロンド髪の男が説明してくれた。


「王之威圧は国王にしか使えないスキルだ。目と目が合うだけで萎縮させ、思わず(こうべ)を垂れてしまうようにさせる状態異常を付与する効果がある。サルトの場合は何らかのスキルで無効化させているのだと思うぞ。因みに俺は君の兄で、この国の第1王子だ。これからよろしく。」


確かにずっと真顔で怖いなとは思ったけど、萎縮したってほどではない。


凄いね。なんて言うスキルだろう。

誘拐犯にかけられたルイーザさんを眠らせた魔術もそのスキルで無効化したのかな。


こっちの世界には兄がいるのか。

前世は5人兄弟で最年長だったからなんだか新鮮。


「父上の言うように王之威圧は高位のスキルでそれを無効化するのは相当凄いことだ。俺ですら、父上に睨みつけられたら多少抵抗できても完全に無効化することはできん。父上が感心するのも頷ける。」

「余談はそこまでにしてそろそろ本題に入らないといけないのではないでしょうか。」


ヘルファスの言葉に男2人がハッとする。


「ゴホンッ。それではサルトの今後について話したいと思う。ルイーザ以外の3人は扉の外で待っておれ。」

「承知しました。」

「それでは失礼します。」


ヘルファスはその指示にすぐに返事して出ていった。その後、セレナルコも返事をして軽くお辞儀をして出ていった。スフェリサは会釈だけして、黙って出ていった。

皆、個性が出てるな。


「それではサルトの今後について話し合っていこうと思う。皆が知っている通り、サルトはこの国の第2皇女であり、死んだことになっている。昨夜の事件以前にサルトが生きていることを知っていたのは王家一族と、俺の近衛兵10人と王国兵の一部の部隊の隊長と副隊長8人、セリンデル公爵家の当主、王国宰相だけだった。生存の噂はあったが、シュセンド伯爵が今回の事件を起こし、共和制革新派を中心にサルトが生きていることが広まってしまった。深刻な状況であると同時に好機だとも考えている。ルイーザとランドールからサルトの魔術と弓術の腕がぐんぐん伸びているという報告は予々受けていた。故にそろそろ潮時だと考えていて、生きていることを公表してサルトを皇女として育てていくことを検討していたんだ。バレてしまったものはしょうがないからな。この機会に全貴族にサルトが生きていることを伝える。そしてサルトを第2皇女として教育する。異論がある者はいるか?」


皇女教育って面倒そうだな。

イメージとしてはヒステリックなお団子ヘアの逆三角形の眼鏡をかけた人が淑女教育を施してくる感じを予想してるけど。


「王女としての教育ってどんな感じなの?」


気になって聞いてみた。


「基本的に礼儀作法と舞踏、あとは最低限の常識の学習かな。王国史と多言語学が中心だろうて。王位継承権が欲しいなら政治学と軍事学も必要になる。魔術や魔物学などは魔術学院て学ぶことになるから、やはり必要になるのは歴史と語学だな。」


語学はあまり心配ではない。前世で英語を覚えたのもこのくらいの年齢だしちゃんとした教師が就くならサラッと覚えられると思う。記憶力は良いし、ストーリー性を見出せば歴史もすぐに覚えられるはず。


問題は礼儀作法と舞踏だ。前世で服に特別(こだわ)りはなかったけど、ロングスカートとかワンピースとかの裾が長い服を避けてきた。

こっちの世界での普段着は軽いローブで色も簡素でお洒落も何もない服。そこらの人が買える程度の値段だから珍しい格好なんかでもない。


でも、貴族の服ってドレスとかだよね。

そんなコルセットでお腹周りを絞めて、足まで完全に隠すような服をそもそも着こなせる自信がないし、踊るなんて以ての外。


「先生はどんな人?」

「デーズハイルが今は誰も教えていないはずだな。彼女なら適任だろうて。ああ、そうか。質問はどんな人か、だったな。変わり者だが家庭教師としてなら過去の教え子達からも折り紙付きの実力を持ち合わせている人だ。あ、1番大事なことを言い忘れていたな。彼女は獣族だ。」


国王にあそこまで言わせるということは相当凄い人なんだろうな。

猫の獣族かな。犬の獣族かな。

犬派だから犬の獣族がいいな。


「明日早速紹介しよう。他になんか聞きたいことはないか?」

「多分何もないけど。あ、そうだ。お母さんが化学魔術を誰かに預けたって。それが貰えたんだよ。ありがとう!」


ナノに聞いた話だと母親がそのナノたちの主人さんに化学魔術を預けてナノたちに委託されて届けにきたみたいだし、感謝はしないと。


「何の話? ()()()()()()()? 身に覚えが無いわ。私があなたに上げたものはそのリボンだけだよ。」

「へ?」


変な声出た。知らないってどういうこと? お母さんじゃないってことか。ナノたちの主人さんに預けてからその記憶を失ったという可能性もあるか。前の世界の母親からの贈り物なんて可能性は限りなく低いけどあるかもね。ママがこっちの世界との繋がりがあるとは思えないな。ていうか天使族であるはずのエレメンタムの主人ってことはもっと上位の天使族か神族かだよね。そんな手の届かない存在に接触することも難しいはず。いくら王族だからと言って簡単に会えるものではない。その相手に頼み事をするなら尚更のこと。

結局分からないけど貰えたものはありがたく使わしてもらおう。


「ううん。やっぱり何でもないや。気にしないで。」

「そう。」


ちょっと下手な誤魔化しだったかも。お母さんの反応も微妙だった。


「もう聞きたいこともないだろうし、セレナルコ。入れ。」

「はい。只今。」


セレナルコが丁寧にお辞儀して入ってきた。


「サルトはこれからこの城に住むんだ。少し案内してやれ。前の家からの荷物の運搬も任した。」

「承知いたしました。案内は2番にさせて、運搬は10番以降に行わせます。王城に残る者が私含め、10人のみになりますが宜しいでしょうか。」

「問題ない。というかそういった管理は君に全て移管しているから一々許可を取る必要はないと前にも言ったはずだ。」

「申し訳ありません。では、直ちに取り掛かります。それではサルト様は、ご退出願います。部屋の外にいる2番がサルト様がこれからお暮らしになるこの王城を案内致します。」


さっきから2番とか11番とか言ってるけどこの人部下を番号呼びしてるのか!?

と、初めは思った。

でも、扉の外で待っていた人を見てちょっとだけ理解した。


セレナルコがいた。


本当にそっくり。ドッペルゲンガーって本当にいるんだ。いや、まだ双子って可能性がある。

と、思ったら1人、また1人とセレナルコが増えていく。


「ん? ふぇ? えーー!?」


気付いたら5人のセレナルコに囲まれていた。


「私達共がご迷惑をお掛けしたようで申し訳ありません、サルト様。3・5・8・9番、あんた達はさっさと持ち場に就きなさい!」


部屋から出てきたセレナルコがスッと顔を出して5人のうちの4人を叱った。


「すいませんっス。すぐ戻るっス。」

「チーフは厳しいのだ!」

「3番が2番に着いて行こうって誘ってきたばい。やけん、私は悪くないばい。全部3番が悪いばい。」

「ごめんなさいですの。」


謝って4人ともどこかへ行ってしまった。いや、1人他責していたセレナルコがいたけど気にしないでおこう。


チーフと呼ばれていた最初に出会ったセレナルコは部屋に戻っていった。


「城内の案内を担当させて頂きますです。私はサルト様のことはサルト様とお呼び致しますです。私のことはご自由にお呼びなさってくださいです。普段は2番と呼ばれておりますです。」

「2番達はセレナルコの姉妹?」


気になって聞いてみる。ただの姉妹にしては似過ぎている。6つ子の可能性がないわけではないけど、さっきの話しぶりからして11番以降がいることになる。確か、あっちの世界の最高記録が9つ子だったはず。となると何らかの魔術かスキルかで生み出されたと考えるのが妥当か。


「いえ、私達はチーフの分体でございますです。チーフの家系に伝わるメイド魔術の1種です。」


予想は的中。ていうか、メイド魔術って、めっちゃ便利そうな名前してる。


「そうなのね。そしたら王城を案内して頂戴。」

「承知いたしましたです。ですが、その前にお召し物をお着替えになることをお勧め致しますです。」


確かに。そうよね。こんな質素な見た目のローブだと、悪い意味で目立っちゃうよね。


「陛下より、『サルトが第2皇女だとバレないように案内せよ』と申しつかっております故、使用人専用の更衣室にてメイド服にお召し替えなさってもらうことになりますが、宜しいでしょうかです。」


元日本人としてはこう言った貴族文化は縁遠いものだったから面倒だと思いながらもそういうものだと割り切って承諾した。


数部屋分移動した所の周りの壁と同じ色で塗られた目立たない扉の部屋に入った。


セレナルコがもう1人いた。着替えながら大きなあくびをしていた。


「13番は今日も寝坊なのかです。チーフが今日は特別な仕事を出してますよです。」

「大丈夫だよさ。皆もいつものことだって諦めてるのよさ。」

「大丈夫ではありませんです。早く準備して裏口に向かってくださいです。」

「急いでるさ。2番こそサルト様を放ったらかして私と言い合いしてたってチーフにチクっても大丈夫のかなさ。」

「13番が寝坊するのが悪いのです。」


その後3分ほど言い合いが続いて13番が出ていって口喧嘩が終わった。


2番に子供用サイズを取り出してもらって、それに着替えた。

棚の奥から取り出された服だったから埃を被っていたのに2番の魔術で瞬く間に新品のようなメイド服になった。


これでやっと王城を案内してもらう準備が整った。


「それでは参りましょうです。」



王城は広かった。

壁をすり抜けられる所。階段がエスカレーターのように勝手に動く所。許可のある者だけが入れる領域。押したら落とし穴が開くボタン。そう言った通路の仕掛けが印象的だった。

謁見の間、舞踏場、応接間、客間、厨房などなど、部屋の数が多く、1人で行動したらすぐに迷子になれる自信がある。


偶に重要な貴族っぽい人とすれ違った。今はメイドの格好をしているから、2番の真似をしてお辞儀をした。不恰好かもしれなかったけど、2番が新米メイドはそんなものですと言われて少し安心した。


結局案内は半日くらい続いた。昼頃になって、


「最後にサルト様のお部屋に案内させて頂きます。」



と言われた。

どんな部屋なんだろう。ドキドキ。


数分歩いた所である部屋の前で止まった。城のどこらへんかと聞かれても分からない。


「こちらがサルト様のお部屋になりますです。今日中にはお荷物が全て運び込まれる予定となっておりますです。」

「わあぁぁ!」


思わず声が出てしまった。

前の世界の家の自室が8帖くらい。セリンデル公爵領の家の自室が12帖くらい。

この部屋は20帖くらいだった。前の世界の家のリビングくらいの広さ。

そんな部屋にクイーンサイズのベッド、大きな本棚、アンティーク風の椅子と机、立派なクローゼットが配置されている。

そんなたくさんの家具が置かれているのに窮屈さを感じない。

恐ろしい、王族の自室というのは。


「喜んで頂けたようで嬉しい限りでございますです。暫く私は別の仕事へ参ります。私が帰ってくるまでこの部屋でお過ごし願いますです。」

「わかったわ。」

「では、失礼しますです。」


そう言って、丁寧なお辞儀をして2番は部屋を出ていった。


さて、暇だったので掃除でもしようかと思ったが、すでに埃1つ見えない綺麗な部屋なので、本を読むことにした。

前の家にも本は沢山置いてあったから暇があれば読んでいた。家から滅多に出してもらえなかったため、この世界のことは本から学ぶ必要があったというのもある。


無造作に手に取った本を開く。

クルーン語の教科書だった。


セリンデブル語は日本語に似ている。一人称が多く、擬態・擬音語が充実している。敬語の表現も豊富。文法的にも主語、目的語、述語という順番で使うことが多い。

対するクルーン語は英語に似ている。この本を読む限り、文型がしっかり定められており語順が意味を決定している。加えて結論を先に述べる論理的な構造も目立つ。


どちらも文法的な理解は簡単にできるはずだ。あとは語彙力がどれだけ付くかの問題だろう。


他の本にも手を伸ばしてみる。


「こんにちは。」


突然後ろから声をかけられた。

びっくりして、本棚に衝突してしまった。


「いてて。誰?」

「デーズハイルだ。」

「デーズハイルって、家庭教師をやってくれる人?」

「そう。よろしく、サルト第2皇女殿下。」


紺色の毛、猫耳、尻尾。猫の獣人だ。この人が先生に。


「えーっと、よろしく。扉が開いた音が聞こえなかったけど、どうやって入ってきたの?」

「影を伝った。」


説明不足過ぎる。この人全然喋らない。

ていうかなんでこの人メイド服着てるの? 家庭教師だよね。


「デーズハイルはなんでメイド服を着ているの。」

「副業。」


やっぱり全然喋らない。本当に優秀な家庭教師なのだろうかって疑いたくなる。


「挨拶は済んだ。帰る。」


そう言って影に潜って消えていった。

これから勉強やっていける気がしない。


デーズハイルがいなくなってすぐ、扉にノックがあった。2番が帰ってきたのかな。


「どうぞ。」

「サルト様、昼食会にご参加願いますっス。あ、因みに私は3番っス。2番の代わりにサルト様を呼びに来ましたっス。でも、その服装で参加するわけにいかないっスよね。すぐにお召し物を用意するっス。」


そう言ってまたどこかに消えていった。慌ただしい人だ。

1分もせず、3番がもう1人セレナルコの分体を連れて戻ってきた。

その手にはグレー味のある青色のドレスと踵が高い靴。リボンと刺繍が施されていて見るからに高級品だった。


服を着るのには10分くらい掛かった。実際には2人が着せてもらったから着るという表現は間違っていたかもしれない。でも時間が掛かったことが伝わればオッケー。


「では、食堂へ向かいますっス。王家一同がお待ちになられておりますっス。」


3番の案内で走らない程度に急いだ。

分かってはいたけど、ロングドレスとハイヒールは凄く歩きにくい。


迷路のような城内を移動すること数分。大きな2枚扉の前に来た。

ここが食堂か。ここで家族の皆と顔を合わせることになるのか。

緊張してきた。


スーハー

深呼吸を1回。

よし、もう大丈夫だ。


3番にもう大丈夫だと目配せをすると、サムズアップを返され、3番は扉をノックした。


コンコン。


「サルト様を連れて参りましたっス。」

「入れ。」


スーッと開いた扉の向こうに右足を踏み出した。

家族団欒の昼食会に参加。

頑張れサルト!


この投稿で1週間に1回投稿したとして6月1日までの分が投稿できました。あと4週間分どこかで頑張って取り返したいと思います。

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