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近代乙女怪談物語集  作者: 白百合三咲
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海のお城 第2話

「やめて、何をなさるの?!」

少女はわたくしの腕を強く掴むと海に入っていきます。冷たい水の中で。

「おやめになって!!」

「うふふ、怖がらなくても大丈夫。素敵なところに連れて行ってあげるわ。」

少女はわたくしを海の底へと沈めようとします。

(やめて、わたくし死んでしまうの?)

 わたくしはもがきました。しかし

「大丈夫。」

少女に諭されます。

水の中なのに冷たくありませんし苦しくもありません、息もできます。

「どういう事なの?」

話もできます。

「立ち話もあれだから話ながら行きましょう。」

わたくしは少女に手を引かれ泳ぎます。少女は鈴音と言って海の底のお城の召し使いをしてるそうです。

「お城には艶姫様がいるわ。人間の女の子を招いて宴会をしているの。楽しいわよ。」

海のお城?

わたくしはその言葉を聞いてははっとしました。それは学校で噂になっている話でした。鈴音はお城の使者なのか?

 不安が押し寄せてきましたが、そんな心配は必要ありませんでしたわ。

わたくしはお城に着くとワンピースから漢服へと着替えさせられました。今着ている物ですわ。上衣が白が下衣がピンク。袴みたいでしょ。でも袴よりスカートの広がりがありますわ。

 わたくしが着替えを済ませると部屋に美しい女性がやってきました。水色の漢服に髪を下ろしていました。

するとわたくしの着替えを手伝ってくれた女性達が一斉にお辞儀をします。傍らにいた鈴音も含めて。

「今度はこの娘?」

「はい、艶姫様。」

彼女が艶姫様、お城の主です。

「なんと可愛らしい娘じゃ。」

艶姫様はわたくしの髪を撫ではじめます。

「妾と一緒に来るがよい。」


 艶姫様に連れて行かれたたのは宴の席でした。席にはすでに少女達が座っています。彼女達も同じく鈴音に連れて来られた少女達です。

「艶姫様にはいつも教えられています。親切にしてくれた少女にはきちんとお礼をするようにと。」

わたくしは艶姫様の隣に座りました。

楽団の演奏が始まると天女の装いをした舞姫達が現れました。

 先月に兵庫まで観に行った宝塚少女歌劇の「浦島太郎」を思い出しましたわ。

冒頭で天女に扮した舞姫が踊る場面は幻想的でしたわ。お姉様も一緒に観に行ったでしょ。

「貴女も何か披露してくださる?」

艶姫様にそう尋ねられました。しかしわたくしは舞など習っていません。

「艶姫様、わたくしは皆様のような舞は披露できません。」

「舞ではなくても構わないわ。貴女の好きな事何でも。そうだわ、貴女は歌を習っていると鈴音から聞いたわ。」

といっても習いたてでまだ人様に聞かせるほどではありません。

 わたくしは普段お教室で習ってる簡単なドイツ語の歌曲を披露しました。

歌い終わると喝采を浴びていました。

「素晴らしい歌声だわ。」

艶姫様はわたくしを膝の上に乗せます。

大正何年かは明記してませんが宝塚で浦島太郎が上演されたのは宝塚発足1年目です。

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