百貨店のマネキン Side E 第1話
「白鳥は美しいお姫様に変わりました。こうしてお姫様は王子様と結婚して幸せに暮らしました。」
大正7年私は少女倶楽部に載ってる白鳥の湖を読んでいました。
「可愛い。白いドレス。」
挿絵にはふわっと広がった広がった白いドレスを着たお姫様が描かれてます。
「私もこんなドレス着たいな。」
同じ級の真子ちゃんがこれはバレエって言って西洋の女の子が踊る踊りだって教えてくれました。真子ちゃんの家はお金持ちでお父さんが骨董品屋さんでよく外国のお客さんが家に来ます。真子ちゃんのお家に行った時にバレリーナのオルゴール人形を見せてくれました。
「ここをこうやって回すとほら」
真子ちゃんが後についてるネジを回すとお人形が回り出して音楽が流れます。
「凄い、本当に踊ってるみたい?」
「そうでしょ?私も今度の発表会でこんな風に回るの。」
真子ちゃんはバレエを習っていて発表会があるそうです。
「お母様も花束持って来てくれるのよ。」
翌日私は1人で中庭にいました。少女倶楽部の白鳥の湖の頁を開きながら。
「こんにちは、」
隣を見ると女の子が座ってました。背は私よりも高くお姉さんに見えます。
「どうしたの?」
お姉さんは私に声をかけてきます。
「うわーん!!」
突然涙が出て来ました。
「どうしたの?大丈夫?」
「お父さん、バレエ習いたい。」
私は昨日家族に話しました。
真子ちゃんと同じバレエの教室に通いたいと。
「これ着て踊るんです。」
私は少女雜誌の白鳥の湖の頁を見せます。
習い事なら習字に日舞、琴とやらせてもらえる。だから賛成してくれると思いました。しかし
「何だ?この格好は?!」
「チュチュって言ってこれで踊るんです。」
「こんなはしたない格好いけません。」
母は私から雜誌を取り上げる。
「そうだ、お前は女の子なんだからこんな格好は駄目だ。」
結局私は両親に反対されてしまったのです。
「よしよし」
お姉さんは私の背中を擦ってくれます。
「バレエのお洋服お姫様みたいで可愛いのに。」
「ねえ、良かったら私の家に来ない?」
お姉さんはその日私を誘ってくれました。
お姉さんは6年生で村山彩花ちゃんと言います。彩花ちゃんのお部屋は真子ちゃんみたいな洋室でレースのカーテンや天蓋付きのベッドがあります。
「これ、昔私が着てたのよ。」
彩花ちゃんはクローゼットから水色のワンピースを取り出しました。私は着替えて姿見の前に立ちます。
「ピッタリね。」
彩花ちゃんがそう言うと私は再び姿見の中の自分を見ました。
「ごきげんよう」
私はスカートをつまんでお辞儀します。
それからというもの私は彩花ちゃんとよく一緒にいるようになりました。一緒にお弁当を食べたり、少女雜誌の話をしたり、彩花ちゃんが卒業して高等女学校に上がっても変わりませんでした。
「彩花ちゃん」
その日も私はいつも通り昼休みになると彩花ちゃんが待つ中庭に行きました。しかし
「彩花ちゃん、それと」
彩花ちゃんの隣には長い黒髪の綺麗なお姉さんがいました。




