結婚式 後編
「...これは一体」
「え?」
「嘘...」
アルクと半年振りの再会を果たしたローゼス、フレア、アスタの3人。
4人は深夜遅くまで語り明かし、其々の寝室に戻った。
翌朝促されるまま3人が外に出ると大勢の人が集まり賑やかな雰囲気にアルク商会の店先は包まれていた。
3人が驚くのも無理は無い。
沢山のご馳走、そして皆正装で笑顔を浮かべ主役達を待ち構えていたのだから。
「お母様!」
「お母さん!」
「母さん!」
一際大きな声と共に飛び出した3人の子供達、ローゼス達は更に言葉を失う。
「アルフィーネ」
「はい!似合いますか?」
ローゼスの言葉にチョコンと赤いドレスのスカートの裾をつまみ上げ笑顔で笑い掛けるアルフィーネ、ローゼスの顔も綻ぶ。
「アルマ」
「...どうかな?」
フレアの前で恥ずかしそうに俯くアルマ、水色のドレスが赤い髪の彼女を引き立てていた。
「ラルク」
「...母さん」
最後にアスタがラルクに声を掛ける。
タキシードに身を包んだラルクは恥ずかしそうな、でも少し誇らしげにアスタを見た。
「似合うわね」
「本当」
何故か自分の子供達より先にラルクへの感想を漏らすローゼスとフレア。
「お待たせ」
「「「あなた」」」
後ろから聞こえた愛しい人の声に振り返るとラルクと同じデザインのタキシードを着たアルクが微笑んでいた。
「ビックリしたよ、僕もいきなり着替えさせられてさ」
アルクは、はにかんだ笑顔でローゼス達を見た。
「さあ貴女達も着替えて来て」
呆然とする3人にアルクの母が微笑んだ。
子供達はいつの間にか手にドレスを持っている。
「「お義母様...」」
ローゼスとフレアは感激で声にならない。
しかしアスタは微妙な顔で固まっていた。
「アスタ」
その様子を見たアスタの母が娘に近づく。
「お母さん」
「大丈夫よ、アスタは普通のドレスだから」
「...はい」
少しホッとしたような、でも寂しそうなアスタ。
アルクとフレアは複雑な顔でアスタを見た。
「アスタ」
沈黙を破ったのはローゼスだった。
「貴女はいつまで過去を引き摺るつもり?
お義母様はアスタが歩み寄って来るのを待ってるのよ?」
「ええ?」
ローゼスの言葉にアスタはアルクの母を見た。
「アスタ、貴女がしてしまった事は決して消せません」
アルクの母が強い言葉でアスタに話す。
「はい...」
「でもね、楽しかった過去も消せないの。
あれが本当のアスタでしょ?だから、ね?」
アルクの母は優しく微笑えんだ。
「お義母さん....」
「姉さん」
「母さん」
涙を流し俯くアスタ、フレアはそっと姉の肩を抱いた。
ラルクもアスタの手を握る。
「お義母様」
「何かしらローゼス?」
「私のウェディングドレスをアスタに宜しいでしょうか?」
「え?」
「ローゼス様?」
「ローゼス?」
ローゼスの言葉に今度は集まった人達が固まる。
「アルクのお嫁さんになるのが貴女の夢だったのでしょ?」
「...ローゼス様」
「良いわよローゼスちゃ...ローゼス」
アルクの母はゆっくり頷き、ローゼスはアルフィーネが手にしていたウェディングドレスをアスタに手渡した。
震える手でローゼスからウェディングドレスを受けとるアスタ、体型が変わらない2人だから問題は無い。
「ありがとうございます」
アスタは受け取ったウェディングドレスを胸に抱きしめ、ローゼスは満足そうに頷いた。
「それでは着替えて参ります」
ローゼスはラルクからアスタのドレスを受け取ろうと手を差し出した。
「アルフィーネ」
「はい、おばあ様」
アルクの母がアルフィーネを呼ぶと、もう1つの包みをアルクの母に手渡した。
「ローゼス」
「はい、お義母様」
「これを着て貰えないかしら?」
「これは...」
ローゼスがアルクの母から手渡された包みの中に有ったのもウェディングドレス、そのドレスを見たローゼスの目が大きく見開いた。
「見た事あるわよね、貴女も私の大切な娘だもの...」
「...はい」
ドレスを見つめるローゼスの目に涙が浮かぶ。
それはアルクの母が自らの結婚式で着たウェディングドレス。
以前アルクの母がローゼスに見せた事があった。
『娘が産まれたら着せたかったんだけどね』
そう呟きながら。
綺麗に仕立て直されたウェディングドレス、アスタやフレアのドレスと遜色の無い見事な仕上がり。
「あ、ありがとうございます...私は本当に素晴らしい家族に囲まれ幸せです...」
ローゼスは泣いた。
アルク以外の人前で泣いたのは初めてだった。
アスタとフレアも涙を流し、結婚式は大勢の人達の嬉し涙で溢れた。
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アスタ
元聖女、アルクの妻。
息子のラルクと共に生涯を治安維持に捧げた。
今も[救世の女神]と世界中で慕われている。
フレア
元賢者、アルクの妻。
生涯を娘のアルマと共に神託のスキル研究に捧げる。
その一方神託による差別撤廃にも尽力した。
『神託が人の人生を左右してはならない』
彼女の言葉が教会を変えたと言われている。
ローゼス
アルクの妻。
アルク商会を夫と作り上げた。
その生涯は謎に包まれている。
『今の私達があるのはローゼス様のお陰』
アスタとフレアは事ある毎にそう言ったとされる。
娘のアルフィーネはアルク商会を世界最大の商会に押し上げたが、
『お母様には敵わない』
が口癖だった。
お読みいただき、ありがとうございました。




