元令嬢の娘 アルフィーネ
「来ましたわ、お母様」
「ええ」
素っ気ない返事をするお母様、でも笑顔が隠しきれてないよ。
普段は氷の支配者と呼ばれているお母様だけど本当は感情の起伏が激しい人、意外と可愛い所もあるしね。
「アルフィーネ、私の笑顔は意外ですか?」
おっと心を読まれたかな?
「そんな事しません。貴女の表情から予想しただけです」
「ごめんなさい」
お母様は[洞察]のスキルで人の心が読める。
しかし信用する人の心は決して読まない『それは不誠実な振る舞い』だと。
でも娘の私には容赦がない、『貴女の為』だって。
「ローゼスおばさん!!」
ラルクが手を振りながら駆けて来る。
なんて可愛いんだろう。
「こらラルクまた!」
ラルクの後ろでアスタさんが焦っている、まあ分かるけど。
「構いません」
お母様は両手を広げラルクを抱き締めた。
背が伸びたね、お母様の胸に顔が埋ってるよ。
「でもローゼス様...」
アスタさんはまだ何か言おうとしてるけど止めた方がいいよ。
「アスタ、私は『構わない』と言いました」
「......はい」
お母様はラルクに気づかれない様にアスタさんを見つめる。
世界最強と噂されるアスタさんをこれ程怖れさせるお母様は一体何者だろう?
「後程両親も参ります」
「分かりました」
フレアさんは固まるアスタさんを気にする事なくお母様に話し掛ける。
お母様に対する苦手意識をフレアさんは持ってない。
むしろお母様はフレアさんに一目置いている。
『凄い精神力を持っている』って。
「アルフィーネ姉様、おじいちゃん達は?」
アルマが尋ねた。
少し大きな体、赤い髪に鋭い目、アルマはお母さんのフレアさんにそっくり。
でも見た目に反して優しい性格、私より1つ下、可愛い妹のアルマ。
「お祖父様達は応接間に居られます、皆様の到着を今や遅しとお待ちかねですわ」
舌を噛みそうになる、でも砕けて話すとお母様の雷が後で落ちるから油断できない。
「さあ行きましょう」
「うん、じいちゃん達元気かな?」
「ええ、ラルクに逢えるのを楽しみにしてますよ」
笑顔でラルクを連れ、先に中へと入るお母様。
娘を少し忘れてやしませんか?
「大変ね」
「お姉ちゃん、ご苦労様」
「お互い頑張りましょ」
何故か同情されてしまった。
商会の応接間はとても豪華で特別な時しか入れない。
(国王陛下様や隣国の王族との謁見等)
こうして私達家族が揃う時は貴重な時間だから良いそうだ。
私が最後に部屋へ入ると一番の上座を空けて、おじいちゃん...お祖父様夫婦が座っていた、先に入ったラルクを挟んで。
お祖父様夫婦の隣にお母様、フレアさん、そしてアスタさんと座る。
テーブルを挟んでお母様の向かいに私とアルマが座る。
「お待たせしたかな?」
「失礼します」
「いえ、こちらも今からです、どうぞお席に」
私達が席に着いた時、応接間の扉が再び開いて中に入ってきたのはアスタさんとフレアさんのご両親、伯爵様なのに平民のお母様は気負う事なく席に案内する。
案内したのはお祖父様夫婦の向かいの席、この場では貴族とか爵位とかは関係ない。
お父さ...お父様が中心なんだ。
だから一番の上座はお父さ...お父様の席、今はまだ空席だ。
この場にお母様の両親は居ない。
お母様も貴族の出らしいが、今は滅んだ家らしい。
お母様の両親の行方も分からない。
でも私は全く寂しくない。
それはお母様も同じ。
だってお祖父様とおばあ様がいるから。
お祖父様夫婦はお母様を本当の娘の様に思って大切にしてくれている。
アスタさん達の両親もお母様を認めているし。
「それでは始めます」
お母様の言葉で家族会が始まる。
「明日、私とフレア、そしてアスタでアルク様...主人を起こします。
今回も残念ながら半年の期間ですが」
「...すみません」
消え入りそうなアスタさん、まだ宝箱が見つからないのを気にしてるみたい。
「アスタ、謝罪は要りません」
「はい...」
アスタさんは益々小さくなるが皆の目は優しい。
だってアスタさんが一生懸命なのは知ってるもん。
「今回はアスタ、貴女から主人と過ごす事を許可します」
「え?」
お母様の言葉に目を見開くアスタさん、意外な言葉だった様だ。
「良かったね、姉さん」
「ありがとうローゼス」
「しっかり甘えなさい」
フレアさんと両親からの言葉、何よりお父様のおばあ様からの言葉で涙ぐむアスタさん、良かったね。
「...良いんですか?」
「嫌なのですか?」
「とんでもない!」
お母様とアスタさんの掛け合いに笑い声が溢れる。
本当、アスタさんはお母様が苦手なんだね。
(理由は知らないけど)
おばあ様から以前教えて貰った。
アスタさんはお父様の子供を身籠る際、最初は固辞したそうだ。
『私にそんな資格は無い』って
でもお母様が説得した。
『過去がどうあれ、不幸を抱えた女は子供を、幸せを持てないのですか?
それなら私も、いいえ、意にそぐわぬ運命に翻弄された人間全て不幸のままで生きるのですか』って。
アスタさんはその言葉に救われて、ラルクを授かったそうだ。
本当はお母様もアスタさんを好きなのだろう。
「ありがとうございます」
笑顔のアスタさん、家族会は和やかに終わった。




