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自重しない元勇者の強くて楽しいニューゲーム  作者: 新木伸
22.オリオンガールズ
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嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい 「なにそれわけわかんない! ヘンタイ!」

 いつもの昼すぎ。いつものリビング。


 ソファーに深々と座って、くつろいでいた俺に、ふと天啓のようにインスピレーションが降ってきた。


「嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい」

「はい?」


 俺が思わず洩らしたつぶやきに、アレイダが変な顔を返す。


「いまなにか、へんな言葉が聞こえてきたんだけど」


 顔をしかめているアレイダに、俺は、言った。


「おいアレイダ。おパンツ見せろ」

「はぁ?」


 呆れたような顔をしつつも、アレイダは立ちあがった。


「もうっ……。こんな昼間っから……、やめてよね……」


 スカートの裾を、ぴら、とめくって、前側からパンツを見せてくる。

 はにかみながらも、求められることが嬉しいのか、わずかな微笑みとともに、白い布で覆われた股間を露わにする。


「ほら……、これでいいでしょ。満足?」

「満足……するわけあるかあぁぁぁ――っ!」


 俺は声を張りあげた。


「なっ! なに? なんなのっ? だってパンツ見せろっていうから――」

「――そんなのただのパンツだ! 俺が見せろと言ったのは〝おパンツ〟だ!」

「なにそれ意味わっかんない! 〝お〟がついてるのとついてないのと、どう違うのよ?」

「あと顔が違う! ぜんぜん違う! まったくもってなってない! 嬉しそうな顔で見せるな! 萎えるわ! 嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたいと、俺はゆった!」

「う――嬉しそうなんてしてないもん! 見間違いよ! 目ぇ腐ってるんじゃないの! 誰がパンツ見せて嬉しそうにしますか! きちんと嫌そうな顔になっていたに決まっているでしょうが!」

「あれが嫌な顔というなら、おまえにはまったく才能がない! だめだめだ!」

「才能の問題!?」


 俺とアレイダが唾を飛ばしながら言い合っていると――。


「なんですか? なんですかー?」

「師匠? どうされました?」


 ミーティアとエイティがバルコニーから入ってくる。外で稽古でもしていたのか。二人ともひらひらとしたスカートの軽装で、肌にはうっすらと汗などをかいている。健康的な色気がある。


「嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい」

「はい?」

「はぁい」


 疑問符を浮かべるエイティをよそに、ミーティアのほうは、すぱっとためらいなく、スカートの裾をぴろりとめくった。


 だがしかし――。


「違うんだなー」


 気のいいミーティアは満面の笑顔。やはり顔が違う。コレジャナイ。


「残念。それじゃ0点だ」


「ちょっと! あたしのときとぜんぜん対応が違うじゃないの!」

「なんだよ? ミーティアにも、きちんとダメ出しをしたろ?」

「あたしのときは大声で怒られたのに、ミーティアのときは優しく言ってあげてる! ずるい! 不公平!」


 駄犬うるさい。


「私……、だめでした?」


 ミーティアがしゅんとなって、肩を落とした。


「ああ。それね。なんかね……? カオ? ――が違うんだってさ」

「顔? ……ですか?」


 ミーティアが自分のほっぺを手で挟んでむにむにとやっている。


「ミーティアは善人すぎるからな。嫌な顔は無理かもしれないな」


 俺は言った。


「そうねー」


 アレイダもうなずく。


「なにせミーティアって、婚約者を寝取られたのに、その相手から馬にされる呪いを掛けられていたのに、相手を恨んでもいないんだもんねー」


「はい? あちらの方も私も、好きな方と一緒になれて、みんな幸せになれてよかった……と思うんですけど? なにか……ちがってました?」

「ほら」


 隣に立つエイティは、ミーティアの生い立ちをはじめて聞いたのか、驚いたリアクションを体全体でやっている。


「ミーティアって、たぶん、生まれてこのかた、どんな相手に対しても、嫌な顔なんて向けたことないんじゃない?」

「そこまで……、ですかー」


 エイティが感心している。こちらも善人ぶりと天然ぶりはなかなかのものであるが、ミーティアには遠く及ばない。


「だからこそ! 見たくなる! その誰にも見せたことのないスペシャルな顔を! 俺だけに見せる顔を! 俺が独占したい! わかるか!?」

「わっかんない」

「こ……、こうですか?」


 ミーティアが再挑戦する。だがしかし――。


「うむ残念。それでは単なる引きつった顔だ」

「むずかしいですー」

「嫌な顔くらい、カンタンでしょ。――こうよね?」


 ぴらっとスカートをめくってパンツを見せつつ、アレイダが顔を作る。

 だがしかし――。


「だからおまえは才能ねーんだよ! なんで嬉しそうにするんだよ!」

「してない! してないからぁ! ――嬉しそうなんて!?」


あるじ。――今日はなんの遊戯ですか?」

「すけ。なに。する?」

「我はなにをすればいいのじゃー」


 外で遊んでいた三人が入ってくる。ちなみにスケルティアとリムルが遊んでいたほうで、クザクは二人を遊ばせていた側。


「嫌な顔しながらパンツ見せるんだってさ」


 アレイダが言う。

 だがしかし――。


「だーらおめーはわかってねえってのー! パンツじゃなくて、〝おパンツ〟だと言ったろう!」

「だからなにがちがうのよー!」


「しまた。ぱんつ。はいてない。」

「我もー。はいてくるのじゃー」


 二人は前提条件からして、落伍していた。


 一人、残ったクザクは――。


「……ええと。よくわかりませんが……。こうですか?」


 虫でも見るような冷たい目をする。

 そのうえで自らの手でスカートをめくって、パンツを――いいや、〝おパンツ〟を俺の目に拝ませてくる。


「おおぅ――、い、いいぞっ――、なかなかだっ」


 敵にでも向けるような冷たい目を浴びて、俺は足元をふらつかせた。


「なによそれ。ますます、わけがわかんない」

「はははは。おまえには無理だ。わかろうとしなくていい。豚に空を飛べとは言わん。飛ばない豚で、ただの豚でいろ」

「豚とか言われた! それ駄犬より上なの下なのどっちなの! 上がってるの下がってるの!?」


 駄犬改め駄豚が、なにか騒いでる。

 それよりクザクには、だいぶ素質がありそうだ。


「ええと、あの……。もうよろしいですか? あるじにこんな目を向けているのは、心が痛いのですが……」

「いやまだもうすこし」

「あとその……。恥ずかしいです」


 嫌な顔が崩れてしまった。頬を赤く染めて、単なる恥じらい顔になってしまう。


「ああ残念っ。顔はよかったが、タイムリミットが短すぎるな」

「し、精進します……」


「あ。ボク、なにかわかった気がします。綺麗な女の人に冷たい目を向けられたときに、なんか、ゾクゾクとするときがありますよね」

「おお! わかるか!」


 エイティは、さすが。

 元・男の経験があるから、俺の高尚な趣味を理解してくれた。


「えっ? わかるの? わかっちゃうの? エイティ? うそ? なんで? なにがいいの、そんなの? どこがいいの? ぜんぜんわけわかんないんですけどー!?」


 駄犬。うるさい。


「でもボク綺麗じゃないですし。……こ、こうかな?」


 しかしエイティは、理解はできても、実践のほうとなると、からっきしだった。

 単なる引きつった顔だ。


「ぱんつ。はいたよ。」

「はいたのじゃー」


 年少組が二人で戻ってくる。

 こんどはきちんと穿いてきたようだ。


 俺の前に立つと、大胆にスカートをめくって見せる。

 だがしかし――。


「スケさん、スケさん、嫌な顔をするんだって。そこが大事なんだってさ。わけわかんないけど」

「……いやな。かお?」


 スケルティアは、しばし考えたあと――。


「……こう?」


 おそらく努力はしているのであろう。

 頑張っているスケルティアには悪いと思う。だがしかし、どこも変わったように見えない。

 つまりいつもの無表情だ。


「スケは、ぜんぜんだめじゃ。嫌うというのは、こうじゃーっ! シャーッ!」


 リムルのやつは、牙を剥き出し、それどころか、顔の形が骨格から変わっていた。

 顔だけ竜人変。


「キモい。コワい。失格。大失格」


 嬉しそうにパンツ見せられても萎えてしまうが、これだと別の意味で萎えてしまう。


「オリオンさん? なにやら楽しそうなコト、してますねー?」

「オリオン殿。私も参加すべきだろうか」


 バニー師匠とクリスがやってきた。

 アイラは残念ながらお留守番だ。あれもけっこう素質がありそうな気がする。「兄達を見る目で頼む」と言えば、かなりの正解が引き出せそうな気がする。


「今日のお題はだな。〝嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい〟――だっ!」

「ああ。なるほど、なるほどー」

「は? 嫌な……かお?」


 さすが、バニー師匠は理解が早い。男のどんな性癖も理解してくれる懐の深さを感じる。


「わかります、わかりますー。……でもパスで」


 あらら?


「いつもニコニコ楽しそうにしているのが、ウサギさんなんですよー。オリオンさんの求めていること、わかりますし、できますけどー。だからこそパスでー」


 俺はうなずいた。そしてもう一人に顔を向ける。


「じゃあ、クリス」

「ひ――ひゃい」


 堅物な武人であるクリスは、俺が呼ぶと、噛んでいた。なにこのカワイイ生き物。


「無能な部下を見るときの目で」

「こうか?」


 すうっと目が冷めてゆく。その目を俺に向ける。


「おおうっ!」


 よしこれはかなり効く。

 あとは――。


「そしてパンツを見せる。いやおパンツを見せる」

「ほら自分でも〝お〟って忘れてる」

「き、きょうはその……、そんなに可愛いものではなく……」


 ぴろっ。

 なんの飾り気もない純白のパンツが、一瞬、垣間見える。

 だが惜しいかな。それは〝パンツ〟であって、〝おパンツ〟ではなかった。


 クールな鉄の上司の蔑み顔は、パンツを見せるときにはすでに崩れ去っていた。

 嬉しさと恥ずかしさの入り交じった顔で見せてくるパンツは、それは拝むべき価値のあるものではなく――。よって〝おパンツ〟では有り得ない。ただの〝パンツ〟だ。


「マスター。なにをされているのでしょうか?」

「だんなさま。なんですか?」


 最後の二人が連れ立ってやってくる。おなじ顔で、おなじデザインのメイド服を着ている。ただし大きさが違う。大と小だ。


 俺は二人に期待を繋いだ。

 この二人ならば、やってくれるに違いない。何億年を生きる大賢者である、この二人ならば――。


「……ていうわけで。オリオンが変なのよ」

「なるほど。了解しました」


 アレイダから説明を聞かされて、モーリンは頷いた。


「マスターが変なのは昔からです」

「だんなさまは、いつもおかしいです」


 ん? なんかいま素でさらっとディスられなかったか?


「マスター。そんなに下着が見たいのですか?」


 モーリンが言う。その顔に浮かぶ微笑みは、いつもの笑みと若干違っていて……。具体的には、温度が低い。

 モーリンはメイド服のロングスカートを膝まで持ちあげるものの、そこで一旦、止めてしまう。


「期待が顔に出ていますよ。マスター」


 えっ? そうか? 俺は顔に手をあてた。


「だんなさまは、こういうのがお好きなんですか?」


 こんどは小さなコモーリンのほうだ。

 メイド服のロングスカートを、すすす、と膝頭まであげてゆく。


「パンツなんて、いつも見ているのに、そんなに見たいものなんですか?」


 いや。いつもは見ていないぞ。パンツを剥いだ中身のほうならいつも見ているが。

 あとコモーリンのほうには手を出していないので、パンツは……あれ? ひょっとすると一度も見ていない?


「ふふふ。だんなさま。お顔がちょっと情けないですよ」


 コモーリンはスカートをさらにたくし上げてゆく。ガーターストッキングの上端を越えると、細い太腿の素肌が現れた。

 スカートが持ちあげられる。

 だが股下ぎりぎりのところで、また止められてしまう。


「そんなに見たければ、床に這いつくばればいいと、コモーリンは思います」


 たしかに、そうすれば見えるだろう。

 だがそれは……。ちょっとさすがに……。


 俺はおパンツを拝みたい気持ちとプライドとを、心の天秤にかけてみた。

 天秤はガタンと片方向に傾いた。


 うむ! 天秤にかけるまでもなかったな!


 俺は床に這いつくばった。スーパーローアングルから、おパンツを鑑賞にかかった。


 コモーリンの小さなそこを包みこむ、小さな白い布地のデルタゾーンが目に映る。

 その上に、冷たい目線の顔がある。

 コモーリンは嫌そうに不快そうに、蔑む目で俺を見下ろしていた。


 嫌な顔されながら(、、、、、、、、、、)おパンツ見せて(、、、、、、、)もらっている!(、、、、、、、)


 ぞくぞくとした愉悦が、俺の体を駆け巡った。

 まさしく上級者向けのプレイであった。


「幼女のパンツを見て喜ぶなんて、だんなさまは、だめな大人なのですね」


 罵る言葉も最高だ。

 コモーリン、おそろしい子!


「あらあら、マスター? コモーリンだけで満足してしまったのですか?」


 モーリンがずいと横に並ぶ。


「無駄に強い精力だけがマスターの取り柄ですのに。これっぽっちで満足してしまうなんて不甲斐ない」

「いやいや。まだいけるぞ」


 俺は床に這いつくばったまま、アングルを変えた。

 こんどはモーリンに対してロックオンする。


「はわわわ……。モーリンさん、別人みたい……」

「もーりん。こわいよ。」

「さ、参考になります……」

「ぼ、ボクには無理ですぅ……」


 アレイダたちが豹変した二人を見て、なにやらコメントしている。


 俺がスーパーローアングルに位置取ると、モーリンは蔑むような笑みを浮かべて、スカートを持ちあげた。

 最後の数センチを越えて、大人メイドの純白のパンツが――いいや〝おパンツ〟が現れた。


 おパンツ! おパンツ! おパンツ!


「はふぅ」


 満足のため息が、俺の口から洩れ出した。


「満足ですか? マスター?」

「ああ。もう充分だ」

「そうですか。プレイとはいえ、失礼なことを口にしました。お許しください」


 すっかり素に返って、モーリンはそう言った。


「あっ。あれ演技だったんだ」


 駄犬ならぬ駄豚がなにか言っている。演技に決まっているだろう。……そうに決まっている。……そのはず。


「だけどちょっと、これは癖になりそうですね」


 モーリンは妖艶に微笑んだ。

 あれー? どっちなのかなー?


 まあ気を取り直して――。


「よーし! 全員! 寝室に集合だーっ!」


 俺は腕を振りあげると、そう叫んだ。

 おパンツは愉しんだ。おパンツは完了だ。だが別の方面は、ここからだ。


「あっ。もう終わりなのね」


 ぞろぞろとついてくる一同の最後尾に、俺は、びしっと指を向けた。


「コモーリンは見学なっ」

「だんなさま。ひどいです。へたれ」


 コモーリンはまだ抜けきっていないらしい。


「パンツ見て悦んでるんだから、もういっそ加えちゃえばいいのに」

「それはそれ。これはこれ」


 アレイダに言って、俺は先に立ってずんずんと寝室に向かった。


 このあと滅茶苦茶セックスした。

作者のリハビリもかねましてー。全員登場して、ちょっとずつリアクションのある話が、2回つづけてみましたー。つぎあたりは、個々のヒロインとしっぽり二人きりとかいうのをやってみたいでーす。

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― 新着の感想 ―
[良い点] どう考えてもセルフクロスオーバーやないかい。
[一言] モーリンの挿絵をあるやさんにお願いしてください!何でも島風!コラボ最高でした!
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