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私の平穏はどこにある!?   作者: 崎坂 ヤヒト
三章
29/45

旅立ちと決闘(傍観します)

今回執筆が遅れてしまい申し訳ありませんでした。

今回、うまく話がまとまらず何度も書き直していたため遅れてしまいました。

御愛読なさっている皆様。本当に申し訳ありません。

ようやく納得いく感じにまとまったので、お楽しみください。

今回は二話連続で更新します。

そこでは馬車が並んでいる。


「多いですねぇ~」

「荷物も多いからな。商隊ともなると最低これくらいはないとやっていけないぞ?」


私とヘンレさんはその馬車を見ながら言葉を交わしていた。

今は穏やかに見えるが、さっきまでは大変だったんだよ?

どうにかして私に残ってほしいと言う町の人達に宿の前で待伏せられて、カーダを盾に強行突破したり、しがみ付こうとしてきたマスターに「この変態っ」と叫びながらフルボッコにしたりとか。ていうかマスター、そっち側なんだね!?

逃げてる間にマーサさんとギルドマスターさんが待伏せていて、まさかっ! と思えばここまでの裏ルートを教えてくれるという一幕もあった。

そこで先導してくれた人が、なんと。


「久しぶりだな。って、まだ一週間くらいか?」


クレス。と、その仲間達だった。

どうやらクレス達も同じ依頼を受けてたみたいで、迷宮都市に向かうらしい。

何やら鍛え直したい、とか。

そしてそんな逃走劇をした私に、カーダが。


「お前は逃避行するどっかの姫かっ」


という鋭いツッコミを入れてくれました。

うん。私も思った。

私すげぇー。


で、現在。

今回のヘンレさん達の護衛依頼を受けた冒険者で一先ず顔見せをすることになった……んだけど。


「おい。なんでガキだけのパーティーなんかがありやがるっ」


いきなり絡まれました。ニコニコ。

絡んできたのはクレスさん達より少し年輩のらしき冒険者達。

昨日まで宿に押しかけてきたミーハーとは明らかに雰囲気が違う。Cランクらしい、強い意志の感じる瞳だ。

いや、酒場のおじさんと比べちゃダメだよね。

今回、一番ランクが高いのはクレスさん達のBランクパーティーだ。

そのためリーダーもクレスさんが勤めることになったのだけど。


「お前みたいな青二才に勤まる訳ねえだろ!」


はい、この通り。

クレスさん若いもんねぇ。

ちなみにさっきから当たり散らしてるのは頬に傷のあるのが特徴のジャンクさん。

かなり厳つい顔で、ギルドマスターさんとは違い、見た目通りの性格の人です。

パーティーのリーダーを勤めているが、こんな風に当たり散らすだけで人がついて来るのかねぇ。


「そうだっ、てめえらはすっこんでろよ!」

「大人しくジャンクに従ってればいいんだ!」

「ガキも生意気に護衛とか受けてんじゃねえ!」


(うっわー。ひどいなぁ、これ)


まさかのメンバー全員がこれである。

類は友を呼ぶとはこのことか……。

でも、ここで私が出ていったら面倒そうだなぁ。と思って視線はクレスさんに。

その目は。


(俺にどうにかしろと?)

(イエス♪)


自分の顔を指差し苦笑いするクレスに、私はコクコクと頷く。

もちろん顔はニコニコだ。

『早くどうにかしろ、こいつらうるさい』という念を込めてある。

それにクレスさんは、はぁ~、とため息を着いた。

そしてクレスさんが出した提案は、模擬戦だった。

冒険者らしく実力でリーダーを決めようというものだ。

大人しくするだけならカーダにやらせても良かったけど、やっぱり相手を納得させるならクレスだろう。

ついでにパーティー内の実力も把握できるしね。


「馬車には危害出すなよー」


ヘンレさんは結構慣れてるみたいで軽い感じに言う。

よくあることなのかな?


ジャンクさんとクレスさんが町を少し出たところの野原で対峙する。

一方はギラギラ、もう片方はため息だ。

なんかもう、それだけで実力差がわかる気がする。

私は二人をじっと見ていると。


「メリルちゃん」

「きゃわっ」


突然後ろから抱き着かれてびっくりした。


「あら可愛い声」

「……メリーさん。お久しぶりです」


私は目の前にかかってきた赤い髪でそれが誰なのかを特定した。

クレスさんのパーティーで後衛をしている、回復役のメリーさんだ。

出会った時は片腕がなかったけど、今では細くはあるものの、布を巻いて保護し、自由に動かせている。

リハビリは順調なようだ。

一週間程度じゃ物もろくに持てないだろうけど、こうしてただ動かすだけなら出来るみたいだ。


「メリルちゃんのお陰よ。ありがとね」

「いえ。いいですけど……なんで抱き着くんですか?」

「うーん。メリルちゃんが可愛いから?」

「理由になってないですよ」

「まあいいじゃない」

「はあ……」


私は仕方なくそのまま見学をすることにした。

後で、クレスさんのパーティーでもう一人の女性であるレビィさんに話を聞くと、どうやら私はこないだの一件でメリーさんに気に入られたらしい。

レビィさんは「気に障ったらごめんねぇ」と謝ってきたが、最後に「私達のこと、お姉さんだと思っていいからね?」と言ってきたことで私はメリーさんの反応に納得してしまった。

きっとちょこっとネアの話をしたことが原因なのだろう。

『お姉ちゃんと離れて寂しいよね?』とその顔が物語っていたからだ。

ちょっと寂しいとは思っているのであんまり否定できないけど。


と、それらはともかく。今はクレスだ。

クレスさんとジャンクさんはそれぞれ剣を構えて対峙している。

ジャンクさんの方はいつでも飛び掛かれるように腰を落として軽く腕を引いている。

明らかに突っ込む気だ。

対してクレスさんは体を横向にして体の面積を少なくして片手剣を構えている。

うん。これはジャンクさんから仕掛けるね。

構えからして。


私は審判役のカムさん(クレスのパーティーの男性)を見る。

あ、なんか呆れた顔してる。

もしかしてクレスさんて凄いの?

なんか顔が明らかに『面倒くせぇ』と言ってるのだけど。

それでも掛け声を出すときには真面目な顔になっていた。


「始めっ!」

「っ、おおおおおおおおお!」


予想通り先に仕掛けたのはジャンクさんだ。

両手で持った剣を正中に構えて突っ込んでいく。

足も早い、十メートルくらい離れていた二人の距離は一気に詰められる。

そして勢いに乗ったまま振り下ろされた斬激をクレスさんは横にステップを踏んでかわした。


「らあっ!」


だがジャンクさんはそこでは終わらない。一発目を避けられるのは想定内なのか体ごと振り回して横切りを放った。

クレスさんはそれを剣先を下にして受け止める。


「っ」

「おらおらおーらっ!」


そこからさらにジャンクさんは構えとか型とか、そういったものはかなぐり捨てたような動きでクレスさんに斬激を放ちつづける。

(うっわぁ、無理矢理……)


ジャンクさんの動きは規則性も何もない、言ってしまえば適当なものだった。

しかし、そんな力技だからこそなのか。一発一発が重く、それを受けるクレスさんの顔は少し険しい。

一見するとジャンクさんがクレスさんを追い詰めているみたいだが、実際は少し違う。

クレスさんは確かに少し辛そうではあるが、言ってしまえばそれだけなのだ。

対してジャンクさんは全力だ。

とにかく体を動かして、ひたすら剣を振っている。

でもその全てがクレスさんに受け止められてしまっているのだ。

もはやこれだけで実力差は良く分かる。

そしてその時はきた。


カァンッ


クレスさんの剣が、ジャンクさんの剣を吹っ飛ばしたのだ。


「勝負ありだな」

「ぜえ、ぜえ……くそっ」

「勝者、クレス!」


クレスさんの勝利。

ただし歓声はありません。ミーハーがその場にいないから。

代わりにジャンクさんの仲間が駆け寄って行った。

クレスさんは私を抱きしめているメリーさん以外の仲間に「お疲れ」と声をかけられていた。

今回の勝負を説明すると簡単な話。スタミナ切れである。

あれだけめちゃくちゃに剣を振っていたら当然の結果であり、クレスの実力というよりはジャンクの弱さが良く分かったという結果に終わった。

カーダは「あのおっさん力ねえなぁ」とか言っていたけど、気にするところそこ?

そういえばカーダのステータスって『力』がAだっけ? この値ってピンからキリまであってあんまり参考にならないらしいんだけど、カーダの怪力ってどのくらいなんだろ?

それとジャンクさんはおっさんと言うにはちょっと早い気がするよ。


まあ、こんな流れでリーダーはクレスさんに決定。

結局クレスさんの実力は不明だけど文句はなかった。

というか、私は正直どうでもいい。

誰がリーダーでも、しっかり仕事をしてくれるなら文句はないのだ。


で。


「ん、んぐ、ぐ。ぷはぁっ。やっぱ助かるぜ、旅ではこれがないとな」

「よかったねぇ~」


いつも通り、乗り物に乗るときには絶対に必要な【酔い治しポーション】をがぶ飲みするカーダの姿。

そしてそれを軽く遠い目をしながら微笑む私。

もはや見慣れた光景だった。

こいつ、私がいなくなったらどうなるんだろ?



この落とし方楽っ。

あ、とりあえず旅立ちはこんなんです。

クレス達復活っ。

ついでに新キャラ(明らかにモブ)登場。

次回、ここまで長かった。フラグ回収をします。


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