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私の平穏はどこにある!?   作者: 崎坂 ヤヒト
三章
30/45

天使降臨(勘違いですからね)

二話目です。

久しぶりにブックマーク見たら120! Σ(・□・;)

いつの間にか三桁に…。

嬉しいです。本当にありがとうございます。

※とある角の生えた幼女視点


メリル達が町を出てからしばらく経った頃。

森の中で、とある攻防が起きていた。


(なんじゃっ! なんなんじゃこいつは!)


「待つでござる~!」


それは小さな全身鎧だった。

全長一メートルちょっとしかないそいつは、その倍の長さはありそうな大剣を両手に持ち、ナイフでも振っているかのように空気抵抗を無視した斬激をを放っていた。

それによって群れで襲い掛かったウルフ達が斬られて吹っ飛ばされる。

幸い、ウルフ達は真っ二つになってはいないが、皆一撃で意識を失ってしまっていた。


(ぬあー。せっかく強度を高めても意味を為さぬ! それにこのままでは皆殺されてしまうのじゃ!)


「そこの幼子! こら、逃げるでないでござるよ!」

「にぎゃー! 追ってくるでないわ、馬鹿者ぉ!」


全く、今日は最悪な日じゃ。

ウルフ達と気持ち良くお昼寝してたらいきなりよく解らない風に頭掠められるわ、逃げ出したら頭の横に生えてた角が一本切り落とされてるわでもう最悪じゃ!

おまけによく解らないちっちゃな鎧に追っかけ回されて、大切な『卵』を落としてしまったのじゃ。

とにかくこの変な奴を撒いて、卵を探さねばならん。

あの子はもうすぐ孵る予定じゃし、最悪生まれた瞬間一人ぼっちじゃ! そんな寂しい思いはダメなのじゃ!

………仕方ないのじゃ。


「クロロおおおおお!!」


ガィアアアア!!


わしがその名を叫ぶとその子は文字通り飛んできてくれた。

その大きな翼を広げて、突風を起こしながらわしの元へと降り立つその姿はトカゲのような顔と全身鎧のような鱗に覆われた力強いたいく。

長い尻尾を振って早速変な鎧に攻撃をしてくれる。


「ぬおっ。こんな奴がいたでござるか!?」


変な鎧は剣で受け止め吹っ飛ばされながら、叫び上がった。

どうじゃっ! これこそわしの取っておき。


「ダークワイバーンのクロロじゃ! さっさと潰れてしまえ!」

「ぬぬっ!? おぬし、魔物に襲われていたではないでござるか!」


変な鎧は吹っ飛ばされてもピンピンしていた。

それにわしは余計に不機嫌になる。


「何を訳のわからんことを言っておる。わしの家族を痛め付けた報いっ。身を持って受けるがいいのじゃ!」

「家族とは!? 身に覚えがないでござるよ。ただし相手は魔物、向かってくるというのなら斬るのみでござる!!」


そこから小さき者同士の、激しい闘いが始まった。




※メリル視点


「まずは玉ねぎを切ります。切るときは息を止めると辛くないですよ」

「「はい」」


私は約束通り商隊の調理係の人に料理を教えていた。

商隊の人達は私の噂を知っているため、指示だしやアドバイスには素直だ。

今日のお昼はシチュー。失敗の可能性も低いし、何より沢山作れるので練習になるからだ。

包丁の正しい持ち方から野菜の剥き方まで。丁寧に教えている。

二人とも真面目に聞いてくれるので上達も早いし、いい感じだ。

まあ、元がアレだったっていうのはおおいにある訳だけど。

ああ。ちなみに調理係の二人は男女で、ミーファさんとソーヤさん。二人とも髪が水色で双子らしい。ちなみに年齢は十八。

調理修業がしたくて、ヘンレさんに雇ってもらったのだとか。

それにしてはレベル低すぎませんか? と思ったが、識字率の低さと一緒で調理の方法も全然広まってないこの世界じゃそんなものなのかも知れない。

今回、私に教われると聞いた二人は飛ぶように喜んだらしい。

もうね。会った瞬間、興奮冷めやらぬって感じで握手をせがまれたよ。「あのサンドイッチを作ったのは君か!」と間近で叫ばれて本当にびびった。

そして調理が始まると食い入るように集中するんだもん。教えててこっちも気分がいいよ。

後、携帯キッチン……というか台と魔動式コンロを【アイテムボックス】から出すと心底驚かれた。

【アイテムボックス】は伸縮するので大きな物でも入れられるから便利だ。まさに四○元ポケットみたいな感じ。

魔動式コンロはネアからの選別だ。旅に出るのにいちいち釜戸作ってられないしね。

魔力を一定量込めれば、その後は地球の物と一緒で火力調節もできて使い勝手がいい。

ヘンレさんに売ってくれとせがまれたが、これは代えが効かないのでダメだと断った。

金貨百枚と言われた時は驚いたけど、それでもダメだ。

これはネアが私のためを思ってくれた物で、売り物にする気は全くない。

まあ呼び方は『お姉ちゃん』で統一しているけどね。

そう言うとヘンレさんも「……そうか」と引き下がったし。

何となく今の私の周りの人達の共通認識(カーダとリックを除く)としては私の『お姉ちゃん』は既に亡くなっており、私は姉から色んなことを学んで、強く生きようと頑張っている。とかそういう感じに思われてるみたいだ。

で、私はその『お姉ちゃん』のことを大切に思っている。と。

うーん。死んでるって部分以外は間違ってないんだけど、なんだかなぁ。

しかし、その説明をするには天使についても話さなければならない訳で。流石にそれを話すのはまずいでしょ。

うーん。これについてはちょっと解決するのは難しいかな。


と。そんな風に思考しているうちにお昼が完成。

三人で味見した。


(うん。もう一声。でも初めてにしては上出来だね)


私は心の中でそんな評価を下すと二人を見た。すると。


「う、うぅ」


泣いてる!?

え、なんで?


「う、うめえ。うめえよ。こんな上手いもの初めてだ。それを俺が、自分で」

「そ、ソーヤ。ずび、うん。美味しいね」

「………そんなに?」


いくらなんでも感動しすぎだった。

でも二人にとってはこれはとても大きなものなのだろう。

私はそっと二人から離れることにした。

何となく居心地悪い。


「みなさーん。ご飯出来ましたよー」


私は馬車の方に移動して皆を呼ぶ。

すると皆一斉に走ってきた。


「「「「「うおおおおおおお!」」」」」


怖っ!

皆目が血走ってた。


「あ、カーダとリック以外の護衛の方は有料ですよ。ちゃんと払ってくださいね」

「ああ。そうだったな」


これは商隊との間での取り決めだ。

護衛は商隊を敵から守ってお金をもらうが、そこに食事の提供は入っていない。だから基本は持参だ。

どうしても食料が欲しかったら商隊から買うしかない。

今回は出来た料理を買う。という訳だ。

それでもクレス達は嬉々としてお金を払う。

一食50ペリ。食材費を考えるとそんなものだろう。

そうして並ぶ皆にシチューをよそっていくと。


「おいっ。なんで護衛がサボってこんなとこにいる!?」


絡んでくるなぁ、この人。

それはジャンクさんだった。


「何でもなにも、そういう契約なんですよ。旅の間は私が食事当番なんです」

「はぁ!? 何ふざけたこと言ってやがるんだてめえは! こっちが必死に警戒してるってのに呑気にしやがって! ガキは大人しく俺らの指示に従え! こんなとこさっさと離れて外の監視しろや!!」


……。うん。この人終わったわ。

ジャンクさんは、ポン、と肩を叩かれる。


「あぁ?」


まるで邪魔すんな、とでも言いたげなジャンクさん。

明らかに苛立ってます。

ただ、そこに立ってたのは笑顔の雇い主、ヘンレさんで。

周りもニコニコしながら額に青筋を浮かべており。

流石のジャンクさんもこれには顔を真っ青にして。


「は、はは、冗談で…」

「「「「「「「あぁ!」」」」」」」


ジャンクさんなんて比にならないレベルでお怒りです。

その後、ジャンクさんは皆にボコボコにされました。

もちろん彼は食事無し。皆でシチューをおいしくいただきました。


ちなみに後でサンドイッチ持ってこっそり《ヒール》しに行ったら。


「…天使はいたのか」


ただ今信者増植中です。

勘違いしないでほしいのは私は聖人じゃないってことで。

ジャンクさんのところに行ったのも始めは対価としてしっかりお金をもらう気だったんだよ。

だけど、ジャンクさんの顔はボロボロで会話にならなかったので先に治療してしまうことにして。

すると彼が目を開けたらそこには私とカゴに入ったサンドイッチがあり、ジャンクさんは、ぽけっとした顔で「それを俺に?」と言ってきて、それに私が「まぁ…」と答えるとこうなった。

ジャンクさんには先ほどのことを何度も謝られ、こちらの事情を話すと「そうだったのか…」と納得してもらえた。

追加で「困ったことがあったらなんでも言ってくれ」と言われ、お金を請求する雰囲気じゃなくなったけど。


「……じゃあ勿体ないのでこれ全部食べてください」

「お、おぉっ。まかせとけっ」


なんとなく対価請求する気になれなかった私はそんな要求をする。

するとジャンクさんは驚いた顔して。

その後、泣きながら心底美味しそうにサンドイッチを平らげた。

私はそれを遠い目の笑顔、これからは遠い笑顔と呼ぼう、で眺めていた。

きっとジャンクさんには私が本当の天使みたいに見えていたことだろう。

こうして私の誤解は、よく分からない方向に向かってますます深まるのだった。




「嬢ちゃんは馬車ん中で休んでていいぞ。外の警戒は俺がしといてやるからな」


ジャンクさんは屈託ない笑顔で言う。

それに私は苦笑いだ。


「は…はあ」


ジャンクさんは私に対して明らかに優しくなった。

索敵を代わりにしてくれるし、ちょっかいももちろんかけてこない。

「嬢ちゃんの事もしっかり守るからな」とか言ってくるしで。もはや誰? だよ。

あ、でもクレスさんとかカーダには悪態ついてたね。私だけみたい。

で、そうなると当然周りも気になりだす訳で。


「お前、あいつに何したんだよ」

「えーっと。治療してご飯あげた?」

「……それで懐くって、まるで犬だな」


うん。私もそう思う。

でも実際助かってるし、特に文句はないんだよね。


「何か来るっ!!」

「「え?」」


その時突然馬車がガタッと揺れた。

馬車を包むシートがバサバサいってることから、おそらく強風のせいだろう。


ガァアアアアアアアアアア!


耳をつんざくような叫び。

これはもしかして、魔物!?

私達は慌てて馬車から顔を出す。

ちなみに叫んだのはリックだ。彼は【索敵】の【スキル】を持っているのでそれに引っかかったのだろう。

ていうかリックの【索敵】って間に合ってないよね。なんで遭遇回避には使えないんだろう。意味ないじゃん。

と思いながら顔を出すと。


ガァァァァアアアアア!


「はははははは! 全然効かんでござるぅ!」


吹っ飛ばされながら笑う小さい何かと巨大な竜が森から飛び出て戦っていた。

御車台の方を見ればジャンクさんが「最悪だ」と呟いていた。

もしかしてあの竜が前にクレスさんが気をつけろって言ってたやばいやつ?


………………向こうから来るのをどう気を付けろと?

次回VSワイバーンとちびっ子全身鎧(巻き込まれ戦)です。

やー、ようやくフラグ回収できてほっとしています。

では『万能薬はありません』次回もよろしくお願いします。

………だんだんタイトル詐欺化してる気が。

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