↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/4

4. 召喚の儀 ー2

最初に進んだのはエリオだった。


彼が魔法陣の中央に立つと、足元に刻まれた紋様が淡く輝き始めた。

エリオは目を閉じ、静かに魔力を解放する。

その瞬間、紫色の光が空間の一角に集まり始めた。

光は次第に形を成し、細長い輪郭を描いていく。


やがて、一本の槍が姿を現した。

銀色の装飾が施された柄に、紫の宝石を埋め込んだ穂先。


槍は空中に浮かび、エリオの前で静止した。


「……これが」


エリオが手を伸ばす。

槍は彼の手に触れる直前、一度だけ強く輝いた。

そして、吸い寄せられるように彼の手へと収まる。

紫色の光が彼の身体を包み込み、すぐに消えていった。


「選定が完了した」


南の当主が告げる。


エリオは槍を見つめ、少し驚いたように目を瞬かせた。


「すごいな……」


「おめでとう、エリオ」


ロウィナが声をかける。


「ありがとう。ロウィナも頑張ってね」


「うん」


エリオは穏やかに笑い、槍を手に祭壇の脇へと下がった。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


次に進んだのはルーファスだった。


彼が魔法陣に立つと、今度は赤い光が集まり始める。

光は小さな粒となって宙を舞い、やがて一つの輪郭を形作った。


現れたのは、中央に赤い宝石をあしらった銀の腕輪。

細かな装飾が施されており、上品でありながらどこか華やかさを感じさせる。


「へえ……」


ルーファスは興味深そうに眺めた。

腕輪がゆっくりと彼の前へ移動する。

彼が手を伸ばすと、腕輪は自然に左腕へと収まった。

赤色の光が広がり、彼の魔力と共鳴する。


「これは、なかなかいいね」


「気に入った?」


エリオが尋ねる。


「もちろん。見た目も悪くないし、使い勝手もよさそうだ」


「失くすなよ」


ノアが言う。


「俺を何だと思っているの?」


「さあ」


「少しは考えてよ」


ロウィナは二人のやり取りを見て、楽しそうに笑った。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


三人目はノアだった。


彼が魔法陣の中央に立つと、今度は緑色の光が周囲に広がった。その光は細く、鋭く、空間を切り取るように集まっていく。

やがて、一本の細身の杖が姿を現した。

先端には透明な結晶があり、その内部には緑色の光が流れている。

装飾は控えめで、無駄のない洗練された形状だった。


ノアは静かに手を伸ばす。

杖は一度だけ淡く輝き、彼の手に収まった。

同時に、周囲に小さな光の粒が浮かび上がる。


「……なるほど」


ノアは杖を眺めていた。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


残るは北家の双子だった。


「エルバート」


レナードに呼ばれ、エルバートが前へ進む。

魔法陣の中央に立ち、静かに魔力を解放した。その瞬間、周囲の空気がわずかに震えた。藍色の光が集まり、彼の目の前で一つの形を成していく。


現れたのは、銀の長剣だった。


装飾は少なく、無骨でありながら気品を感じさせる。柄には青白い宝石が埋め込まれている。

剣は空中に浮かび、エルバートの前で静止した。

彼は迷うことなく柄を握る。

瞬間、剣から魔力が溢れ出した。


その魔力は荒々しく見えながらも、エルバートの魔力と共鳴することで、驚くほど整った流れへと変わっていく。銀の刀身に青白い紋様が浮かび上がった。


「選定が完了した」


レナードが告げる。

エルバートは剣を見下ろし、静かに頷いた。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


最後に、ロウィナが魔法陣の中央へ進んだ。


始祖の間にいる全員の視線が、自然と彼女へ集まる。

銀色の髪が背中で揺れる。

ロウィナは一度だけエルバートを振り返った。

彼は何も言わず、静かに頷いた。


大丈夫。

そう言ってくれているようだった。

ロウィナは微笑み、正面へ向き直る。そして、ゆっくりと魔力を解放した。


足元の魔法陣が輝き始める。最初は淡い光だった。

しかし、次第にその輝きは強くなり、藍色の光が空間全体へと広がっていく。


「……これは」


レナードがわずかに目を細めた。

光は一か所に集まり、ゆっくりと形を作っていく。

現れたのは、銀細工が施された懐中時計だった。

中央には藍色の宝石。文字盤には針がなく、星のような小さな光が浮かんでいる。

他の四人の魔導具とは異なる、不思議な雰囲気を持っていた。

懐中時計はロウィナの前で静止する。


「……綺麗」


彼女は思わず呟いた。

その瞬間だった。


――ドクン。


胸の奥で、大きく何かが脈打った。懐中時計の宝石が強く輝く。

次の瞬間、藍色の魔力が一気に溢れ出した。


「……っ!」


光は祭壇を包み込み、天井へと伸びていく。

始祖の間に刻まれた古代文字が、一斉に輝き始めた。

その場にいた全員が息を呑む。


「ロウィナ!」


エルバートが声を上げた。

ロウィナの魔力が急激に膨れ上がっていた。彼女は生まれながらにして、同年代の誰よりも大きな魔力を持っている。その量は、時に自身の制御能力を超えてしまうほどだった。

しかし、懐中時計から溢れた光は、彼女の魔力を拒むことなく受け止めていく。まるで、最初からその力を知っていたかのように。


そして、次の瞬間。

膨れ上がっていた魔力が、静かに収束した。

藍色の光がロウィナの身体を包み込み、やがて懐中時計へと吸い込まれていく。最後に一度だけ強く輝くと、すべてが静寂に包まれた。

ロウィナの手には、懐中時計が収まっていた。


「……大丈夫?」


エルバートがすぐに駆け寄る。


「うん。少し驚いただけ」


「本当に?」


「本当よ。ほら、ちゃんと立っているでしょう?」


ロウィナは少しおどけたように笑い、懐中時計を持ち上げた。エルバートは彼女の顔を確かめるように見つめたあと、ようやく息を吐く。


「……ならいい」


「心配してくれたの?」


「当たり前だろ」


 その言葉に、ロウィナは嬉しそうに笑った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。