第50章(3人、それぞれの人生)
由紀奈も、もうじき剛と結婚するらしい。仕事が忙しくて、関西にも帰っていない。
利絵はボランティアで貧しい国へと旅立って行った。お嬢様育ちの利絵にとって、
ショッキングなことばかりのようだ。ポストカードの言葉にも、その心境が綴られていた。
ポジティブで活動的だった利絵らしくない言葉ばかりで、それも気がかりだった。
山野との恋愛は波乱万丈。山野の兄弟に対してのコンプレックスのせいか、
国境なき医師団へと彼の注目は移っているようだ。医師のいない田舎町に志願したり、
優秀な兄たちとは同じ土俵で闘いたくないとの思いが見え隠れする。
由紀奈の電話での情報なので、それが事実なのかは疑わしいが、見かけと違い、
他人の心の動きに敏感な由紀奈の見解には、かなりの信憑性があると思う。
自分のしたいこと、使命を探して、まだ見つけることのできない由紀奈も、
少しイラだっているのがわかる。剛との結婚間近で、マリッジブルーになっているだけかも知れない。
人生なんて、思うようにはならないことばかりだ。
芸能界でも、主役になりたくて必死に頑張っている人ではなく、
好きでやっているわけでもない自分に大きな役が回って来たりするのだから。
嫉妬され、いじわるをされても、どこか自分と関係のない世界の出来事のようにしか思えないのも、
困ったものだと思う。
大学も休学したままだが、日本の大学は入学する時だけ重視されていて、文学部などは中退でも、
就職時には問題にされないようだ。それでも、将来のために資格はできるだけ取っておきたい。
いざとなった時、働ける枠が広がるし、お給料だって違うはずだからだ。
最近は少なくなったと言えど、女はやっぱり就職よりも結婚が大事だと思われている。
他人の力添えがなければ、確かに成功などはできない。パートナー選びは重要だと思う。
でも、所詮、他人の力に頼り過ぎると、自分で立つ力を失って、
共倒れになってはしまわないのだろうか。




