勝負は正々堂々です!
曇り空の切れ間から、細く太陽が覗いた。
――まるで、私たちの勝負をこっそり見に来たみたいだ。
「最初は体力テストだ。このフィールドを周回してもらう。男子は5周、女子は3周が目標だ。では最初はグーデリアンとドレイン。」
呼ばれた2人が列に並ぶ。
「スカーレット!頑張れ!」
「オーディン!負けたらデコピンだからな!」
なんだろう……ダークとオーディン、意外と仲がいい。
「位置について――はじめ!」
オーディンはスタートの合図と同時に全力疾走。
一方スカーレットは、淡々としたペースで走っている。……戦略型だ、これ。
先に倒れ込んだのはオーディンだった。
「グーデリアン、6周。」
発表の直後、スカーレットもすっと足を止めた。
「ドレイン、6周。目標の2倍だ。よくやった。」
2人は肩で息をしつつ、こちらへ戻ってくる。
「はぁ……はぁ……。わたくしの勝ち、ですわね……。」
「ちが……う!同じ6周……だろ……。それに……まだ……アキナたちが残って……る……。」
「2人ともすごーい!スカーレットの温存作戦、効いたね!」
「えぇ……本当によかったですわ……。」
「次。アキナ、コンフィグ。」
う……運動……苦手なんですけど……。
「アキナ、ハンデいる?」
「ひどっ!正々堂々勝負するの!」
「後で泣いてもしらねーぞ?」
「体力勝負なら自信あるもん!」
嘘だ。男子に勝てるほどの体力はない。
でも――剣術部の地獄メニューを一週間耐えた私なら……たぶん……なんとかなる。
「位置について――はじめ!」
合図と同時にダークが飛び出す。
「アキナさん!頑張ってですわ!ダーク様に勝てますわよ!」
「ダーク!お前にかかってるぞ!行けーー!」
走る、走る、走る。もう何周目か分からない。
でも、絶対にダークより先に倒れたくない……!その意地だけで脚を動かした。
「コンフィグ、8周。」
その瞬間、張り詰めていた気が緩んだのか、私はその場に倒れ込んだ。
「アキナ、9周。よくやった。賞賛に値する。」
「あり……がとう……ございます……勝った……。」
「アキナさん!やりましたわ!流石です!」
「くそぉ……でも、ダークもお疲れ。」
「う……うん……アキナ……凄いね……。」
息が整わないまま、他の生徒のテストが続いた。
「全員目標値クリア。次は魔力テストだ。来週からはグループ編成をするから覚悟しておけ。」
グループ分け……どんな組み合わせになるんだろう。
「魔力テストは魔力出量を計測する。使い方が分からない者は挙手。……あ、アキナは特別だから挙げなくていい。」
「はい。」
すると――ひそひそ声がまた広がった。
いや、そりゃ測れないけどさ?
そんな「珍獣観察」みたいな目で見られても困るんですけど……?
「分からない者はいないな。では、ドレイン、グーデリアン、コンフィグ。」
三人が測定器の前に立ち、スカーレットが悪戯っぽくウィンクして見せる。
「放出、始め!」
三人の魔力が一斉に広がった。……綺麗。まるで光が舞ってるみたい。
「止め!」
三人が誇らしげな顔をしている。あれ……めっちゃ自信満々じゃん……?
「……あ?故障か?……まぁいい。ドレイン300Em、グーデリアン420Em、コンフィグ500Em。」
午前中、クリスティー先生が言っていた。
魔術に特化した高校生でも平均は20〜40。
……え、これ軍とかエリート騎士団の領域なんじゃ……?
「わたくしが一番だと思っていましたのに」
「俺もだよ……。ダークってバケモンだな」
「んー、君に言われたくはないかな。420だよ?」
「みんな……すごい……ね」
「アキナさん、あなたが言わないでくださいまし。クラス全員の魔法を消せる方が何を」
「いやいや、この出力量はさすがに消せないでしょ……?」
「午前中、全員の下位魔術消した女が何言ってんだよ!」
……え。もしかして本当に……私、すごかったりするの……?
いやいやいや。ないない。たぶん。
「これで全員だ。解散。アキナは俺と教官室へ来い」
先生のあとをついて教官室へ入る。
雑多に物が積まれ、紙が散らばった空間――あぁ、体育系の先生の部屋ってどこもこんな感じ。
「えーっと……あった。これはエモール吸収係数を計る機械だ。1Emを吸収できる能力が1βだ。初代無色魔法の使い手は300だったそうだ」
へぇー。すごいのかどうか、ピンとこない。
「手を置け。数値が出たら離せ」
言われた通り手を置く。
……私、みんなより低かったらどうしよ。
「離していいぞ。……ん?……嘘だろ?故障……いや、いいや。お前、600だ」
「……………………は?」
二倍……?
初代の?二倍!?
え?私が?
「……今日は規格外ばっかりでほんと困る。まぁ、お前らが悪いわけじゃないがな」
困らせてすみません……。でも……本当に私が600なの……?




