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第25話

 文化祭最終日はあっけなく終わりを迎えた。


 俺は模擬店の店番を任されているわけでも、宮藤さんと遊ぶ予定があるわけでもない。模擬店やら出し物は昨日でほぼすべてを見てまわったので、昼過ぎまで近くのコンビニで時間を潰し、そのまま図書室に向かい寝て過ごした。


 宮藤さんがいるかと一瞬、期待していたが、彼女はいなかったので不貞腐れて寝てしまったのだ。


 そうして起きたときには夕方になっていた。


 図書室の窓越しから指す光が眩しく、目が覚めてしまったのだ。


 図書室を出ると、すぐに閉会式が始まり、文化祭は終わりを迎えた。


 周りを見渡すと、先ほどまであった模擬店や出し物が綺麗さっぱりなくなっており、俺は自分が撤収作業を寝過ごしてしまったことが分かった。


 今更、教室に帰ったところで小言を言われることは目に見えているので、今日はそのまま校門に向かうことにする。


 橘や本田たちは打ち上げに向かうと連絡が入ったがそれも無視する。特に用事もないので、行っても良かったとも思うが、寝起きの気怠い体を引きづってまで行こうとは思わなかった。


 そうして、校門を抜けた先に、小さな背中が力なく歩いているのに気が付く。


「おお。小西」


「あ。美月」


 小西は元から身長があまり高くないが、その小さい背中をさらに小さくして歩いていた。気落ちしている彼を目にするのも珍しく、俺は声をかけたのだ。


「打ち上げ行かなかったのか?」


「えっと………うん。ちょっと行きづらくて。美月も?」


「いや、俺はなんか面倒で………」


「そっか。………うん。僕もそんな感じ」


 小西は元気のない笑顔を見せる。それは何か原因があるのかもしれないが、俺はただ一緒に歩くのみで最後まで聞こうとは思わなかった。


 彼はこういった行事などは今まで全て参加しているし、打ち上げなども嬉々として参加する性格である。


 しかし、今、こうして俺と一緒に帰路に就いている。その理由が気にならないわけではない。


 それこそ、本田がらみかもしれない。


 それなら、俺から言えることは少ない。


 ただ雑談に付き合って、彼と楽しく帰ることの方がよっぽど有意義に思える。


 そうして、文化祭の最後の日は終わった。



 季節が流れて、秋は消え去った。


 葉をすべて落とし、色を無くした木々に吹き付ける冷風。冬を前にかじかむ手を握り締めて、白く濁った息を吐く。潮風は嫌に冷たく、泣きそうになる。


 涙が出そうになる。


 それは悲しみでも、切なさでもない。


 後悔の念に押しつぶされて、自分が嫌になって流す涙だと気が付くのにそう時間はかからなかった。


 


 


「美月、今日、何して遊ぶんだ?」


 放課後に橘から急に疑問を投げかけられたのは、ちょうど冬と秋の境とも呼べる季節の変わり目のことであった。


 俺の中で冬とは初雪の日のことであるが、暦の上では明確に秋と冬の境が分けられていることを知った時、俺みたいないい加減な男が季節という概念を決めなくてよかったと思えた。


 そんな時季に橘に声をかけられたのだ。


「は?いつもみたいにカラオケやらゲーセンの誘いか?」


「いや、今日は美月の家で遊ぶんだろ?」


 橘は不思議そうな顔でこちらを見ている。俺は彼と遊ぶ約束などしていない。しかし、彼の様子から察するに、俺は彼は遊ぶ約束していたようだ。


 俺は思い出そうと、浅い海馬を探るも、何も思い出されない。


 そもそも、橘を家に呼ぶこともあまりない。


 基本的に俺たちは街に出て遊ぶことが多いのだ。


「そんな約束したっけ?」


「いや、さっき誠ちゃんから聞いたんだけど?」


「誠?」


「うん。誠ちゃん」


 話を聞くと、橘は誠から、今日、俺の家で遊ぶ約束を聞いたらしい。


 勿論、そんな約束はしていない。それでは、これは誠の嘘なのだろうか。


 しかし、なぜそんな嘘をつく必要があるのか。


 いや、検討はついている。


 そのため、俺は彼女の嘘に乗ってやることにした。


「あ、そう?なら放課後、一緒に家に行こう」


「おお。美月の家も久しぶりだしな………でもなんで俺だけなんだ?」


「は?」


「いや、なんか小西さんとか本田さんはいいから、橘さんだけ来て欲しいって誠ちゃんが言ってたから」


「ん?………ん?……あ、そうなんだ」


 あいつはなんだかんだ俺の妹だなぁ。と俺は彼女の計画の甘さにため息を一つ零した。


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