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第14話

 文化祭は今週の金曜から始まる。


 皆、納期に追われるように、必死になって夜まで文化祭準備をしていた。俺は自分の作った完成した模擬店の看板を、苦虫を嚙み潰したような顔で見ていた。


 間違いもなく、この模擬店のデザインを勘案したクラスメートのアイデア通りの看板を作成した。そうして、発注通り作った看板を見たクラスメートの反応を見ると、特に問題ないようだ。


 しかし皆の看板に対する本音は聞けず、上っ面のお世辞だけを残して、皆去っていった。

 俺や橘のグループもカーストでは上の方におり、俺はその中でも気性が荒いと未だ思われているようだ。

 そのため、俺の中にモヤモヤとした感情だけが漂っていた。


 誤発注でした、納期に間に合いませんということもなく、俺は俺の仕事を終わらせたわけである。


 そうして、待ち人が来るのを、他の生徒の仕事を見ながら待っていた。

 皆、一生懸命に準備作業を行っている。猫の手も借りたい状況だろうが俺に対して、手伝えと強要してくる猛者も現れず、待つこと30分で彼女は来た。


「劇に出る子もみんな、最終チェック終わったみたい」


 と彼女は文化祭実行委員に報告していた。


 この間まで、全く準備を手伝っていなかった奴が急にどうしたと思うが、紐解けば、それはただ単に馨と話したかった彼女が体育館に行くついで言伝を承っただけのようであった。


「おい。本田。遅かったな」


 俺の声に反応して彼女がこちらに振り返る。


「別に………普通でしょ?そんな待たせた?」


 彼女は怪訝そうにこちらを見る。彼女には一緒に映画を見ようと誘っただけであり、今日どういう話をするかなどは別に言っていない。


 しかし、誘った時も微妙な反応を返されたことから、彼女は薄ら勘付いているのかもしれない。


 時刻は6時を回ったところだ。俺と彼女は教室を出て映画館へと向かった。


 


 


 


 橘がどういった思考回路で、こんなハゲで、ケツのでかい太った中年が銃をぶっ放す映画を選んだのかは甚だ疑問であるが、俺はすごく楽しめた。


 しかし、本田はどうなのだろうと映画終わりに向かった喫茶店で聞いてみると、まぁまぁ面白かったらしいので、イケメンチョイスはすごいなぁと浅慮し、いや、これは映画の力だなと思い直した。


 その後、彼女の、坂口が親の言いつけを守る人形だの、佐竹の彼氏は金髪で滅茶苦茶ガラが悪いだのといった話を聞きながら、相槌を打っていた。


 いつも通りの彼女と俺の会話である。学校の話や流行りの音楽の話、新しく出来た店の話など。橘たちと一緒にいるときに話す内容とほとんど一緒である。


 しかし話している間、彼女は何かを気にしているのか、俺の顔色をよく伺っていた。そうして俺は鼻毛でも出ているのかと、トイレに向かう。


 トイレから帰ってくると、彼女は電池が切れたロボットのように、静止していた。

 現代の子の特徴で、空いた時間は携帯でも弄っているだろうと考えていたが、彼女はどこか虚空を見つめているようで、ボーッと動かずにいた。


 俺が帰ってきたことに気が付くと、彼女はまたいつも通り表情を崩して、珈琲カップに口を付けた。


 そうして、ひとしきり話し終えたところで、俺が帰ろうとかと声をかけると、彼女は


「そう………ね」と小さく呟いた。


 店を出ると、秋の風に体を包まれる。


 足元からせり上がってくるような寒さに身を震わせて、彼女を伺うと、彼女は何も気にしていないように俺の隣を歩いていた。


 いや、寒さも気にならぬほど、何か考え事をしていたのかもしれない。


「どうした?」


 俺が声をかけると、彼女は「え?」と驚いたのか、いつもより高い声で返事をした。


「いや。心ここにあらずって感じだったから」


「なにそれ?………ていうか、上原、やっぱり変わったね。前はそんな言葉遣いじゃなかったし」


 彼女が少し気を抜いたように笑ったので、俺は安心して話しかける。


「そうか?前はもっと抜けた奴だと思ってたのか?」


「うん。なんか尖ってたっていうか………いつも面白くなさそうにしてたでしょ?」


「そうだったかな………忘れた」


 会話はブツブツと切れては、また再開し、切れては、どちらかが静寂を嫌ってまた声を出した。


 それの意味するところは、二人ともいわずとも分かっていたし、今はまだ夜の風に身を乗せて、本題を先延ばしにしていたかったのかもしれない。


 


 


 

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