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その手に幸いを掴んだら  作者: 桐花・改
3章 王子様がやってきた
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7話 至天の試練

「ナニ、コイツ!?ツヨイ!」


「ミンナヤラレチャウ!」


「そうかそうか。光栄だな。だが、別に褒めるほどのものでもないぞ。」


 男は微笑みを浮かべながら、苦もなく地獄の獄卒をその手に持つ漆黒の剣で薙ぎ倒していく。タルパでは全く歯が立たなかった相手が、いとも簡単に散っていく。


「すげえ………なんだよこれ……………!」


「馬鹿な………!相手は神の使徒だぞ!それが何故、こうも簡単に斬られていくのだ!?」


「………私の名はデューク。デューク=アグレシオン。かつて神の世界を壊滅させた者だ。」


 獄卒達が薙ぎ払われていくあまりにも圧倒的な光景を前にして、余裕を失った『神』が男に問う。男は対照的に、至極冷静に答えた。



「待てよ………終世剣だと!?あんた、どうしてそれを持ってるんだよ!?」


 タルパには聞き覚えがあった。セネカルトが説明していたから分かる。終世剣とは終世に認められたものだけが持てる一振りのはず。セネカルトがいるはずなのに何故、あの男が終世剣を持っているのだ?


「………タルパ、といったか。そんなこと少し考えれば分かるだろう?」


 裂帛の気合を以ってデュークが剣を振るう。振るわれる風圧と共に放たれた剣気と魔力が地獄の獄卒達を瞬く間に薙ぎ払う。この一撃で、地獄より送られてきた獄卒は全滅した。


「私が、終世の王だからさ。」


「馬鹿な!終世の王というなら奴らと貴様とは互角のはずだ!?なのに何故、これ程まで一方的にやられるのだ!?」


「………はぁ。神を名乗る癖にそんなことも考えられんのか。そのご立派な頭はただの飾りか?」


「………」


 タルパにはデュークが勝てる理由はわかっていた。しかし、この圧倒的な光景、自分には成し得なかった事態を前に、ただただ息を呑むばかりだった。


「さて、君にならわかるんじゃないか?えぇと………タルパ君、だったか。」


「ぼ、僕かい!?」


 息を呑むばかりだったのに、その沈黙はすぐに破らされた。


「………そんなの、決まってるじゃないか。同じステージに立ってるのに力の差があるのは、そこに立つまでにしてきた努力に差があるからだ。最初からそこにいた奴と、そこに這い上がってきた奴ではふんできたばかずがちがう………。つまり、お前らとこのおじさんの差、それは()()()()だ。」


 一応、言いたいことはしっかりと言えた。まだデュークは正解かどうかは言っていないが、『神』は納得したのか「ぐぬぬぬ………!」と悔しそうにしていた。


「正解だな。歩んできた道のりの差。それが本来同格のはずの我等に存在する差だ。それも、決して埋まる事がない大きな差だ。」


「ふざけるな………天上の存在たる我等を貴様らのような下等なクズが超えるだと!?そんな事、あってはならんのだ!!」


 仲間を全滅させられ、丁寧に説明までされて存分にあの『神』のプライドはズタズタにされた。もはや僕達を殺す為なら世界すら道連れするくらいには激怒しているだろう。

 放たれる威圧に身がすくむ。本能が奴を直視することを避けようとする。分かっているのに。奴を引き剥がして滅ぼさなければ響華ちゃんは救えないって分かってるのに。それでも、震えが止まらない。



「大丈夫だ。自分の手で彼女を助けたいんだろう?なら、恐怖の一つや二つ、克服せねばな。大丈夫、君ではダメだった時の為に私がいるんだ。私はアレごときには負けん。安心して挑みなさい。」


「お、おじさん………」


 おじさんは僕の震える手を握り、黒い靄を出して僕にかけた。攻撃かと一瞬思ったけど、違った。なんだか、安心する。この黒い靄と激励のおかげで少しだけ恐怖心は和らいだ。これなら、僕もまだ戦える。

 剣を構え、毅然とした態度で叫ぶ。思いを、身の丈を全て、あの憎きクソ野郎に叫ぶんだ。


「テメェをぶっ殺してあの子の体は返してもらう!覚悟しろよ、クソ野郎!」


「はっ!あの終世の王ではなく貴様が相手か、小娘!あの男ならともかく、お前はさっき手も足も出ずに私にやられていただろうが!何度やろうと結果は変わらん!」


 そうだ。恐怖は和らいだとはいえ、別に僕が強くなったわけじゃない。このままでは結局さっきの二の舞を演じることになってしまう。


「なら一つ、お前に問いかけてやろう。正解を出せたなら、お前は私やセネカルト様と同質の存在になれる。それならアレにも勝てるだろう?」


「いや、なんだよその問題って………!?」


 デュークは問う。



()()()()()()()()()()()


「……………?」


 僕が、何者かだって?そんなの僕は僕に決まってるじゃないか。いったいなんの意味が………


「別れは済んだか!?ならば、死ね!」


「うおわぁ!?あ、あっぶなぁ!」


 不意打ちの一撃をなんとか避ける。くらってれば確実に死んでた、本当に危なかった。

 さて、ここで負けるわけにはいかない。僕はせめて、『神』をあの体から引き剥がすぐらいはできないといけない。魂具にさっきより多めに力を込める。二の舞にならないように、十二分を引き出すんだ。


「魔弾剣『桜傷十字衝(ブルーム・レイ)』!」


 今の僕の最高を、ぶつけるんだ。『神』の結界によって攻撃を受けないように響華ちゃんの体は守られている。それをぶっ壊して、内部の魂に干渉できるようにしてやるんだ!


「なんだ、大口を叩いておきながらその程度の技しか出せんのかぁ貴様は!なら刮目しろ!本当の魔弾とはこういうものを言うのだ!」


 決死の一撃はいとも簡単に防がれた。いや、結界に阻まれたのだから防ぐまでもなく掻き消えた。そしてくるカウンター。名前すら付けられていない本当にただの魔弾。僕のそれとは全く桁違いな一撃で、僕は吹き飛んだ。


「さて、あのガキはもうダメだろうな。これから敵討ちでもしてみるか?終世の王よ。」


「………タルパはまだ生きている。」


「何?」


「生きているうちはチャンスは続く。なら、まだ私の出る幕ではない。彼女自身、死んでも折れなさそうだったしな。」


「まだ信じるか、そんな馬鹿馬鹿しいものを!」





 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 多数の民家を突き抜け廃屋に変えて、魔弾と僕はようやく勢いを失い止まることができた。

 けど、傷はかなり深い。また、立つこともままならなくなる程だ。しかし、そんな必死に動く体をよそに、頭は一つのことだけを考えていた。



『君はいったい、何者だ?』



 デュークの言ったその言葉。それだけが頭の中を駆け巡っていた。


「なにものかって………そんなの、僕、は……………………………………………………あ、ああ………なるほど、ね。」


 意味は理解した。言葉通りな訳がないし、そもそもアレじゃ言葉足らずだ。

『何者か』とは、『何を成す者か』と言う意味だったんだ。分かるか、こんなもん。けど、意味がわかった今なら自信を持って言える。僕が何者かは。



「僕はーーーーーーーーー





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