8話 至天
ここからかなり離れた場所で、大きな爆音が鳴った。あそこはタルパがやられて吹き飛ばされた地点だ。
「ふん。どうやら、自分なりの正解をしっかり導き出せたようだ。残念だったな、神よ。」
デュークはタルパが自分が出した設問にしっかりと答えることができたことに安堵した。これで、厳密に言えば少し違うが………彼女は自分やセネカルトと同じ、天上の存在となったのだと。デュークはつぶやいた。
「神なる人、か。」
「こんなことが認められるものか………!認めてたまるものか!!!!!人間如きが、終世の助けも神世の助けも無しに我らと同列になるだと!?そんなことが認められてたまるか!!!」
神は激怒する。全く、生まれながらに絶対者であったことがここまで認知を歪ませるとは。デュークははぁ、と大きくため息をついた。
「貴様だけでも殺してやるぞ、終世の王!貴様もたかだか人間の分際で神には向かった罪、噛み締めて死ね!!!」
全く、本当に歪んでいる。それに、さっき私が言ったことをもう忘れたのか?コイツは。間抜けもここまでくるともはやその残念な頭に同情すら浮かんでくるぞ………。
「本当にその頭は飾りのようだな。言ったはずだぞ?お前の相手は彼女だと。」
「何だと?」
そう問いかける『神』。しかし、その問いに答えるものはいない。答えがわりに帰ってきたのは風魔法に長けるデュークですら感嘆する速度の蹴りだった。
靴の裏が『神』の顔面を的確に捉え、今までやられてきたお返しとばかりに気合の入った一撃を送る。「ぷゅうぇ!」と間抜けな悲鳴を上げ、神は吹き飛んでいった。………素体となっている少女の体は大丈夫なのだろうか?
まぁ、それはそれだ。少女のことをとても大切に思っているようだし、何か少女を保護する対策ぐらい取っているのだろう。だから、デュークが言うべきことはこれだけだ。
「おかえり。随分と見違えたじゃないか。」
天に至る者となったタルパへの労い。これだけだ。
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おじさんが僕に質問した。『お前は何者だ?』だってさ。この質問に答えてどうなるのかは僕には分からない。けど、答えは一つ、もう決まっている。
「僕は、山下巽の転成体、タルパ=パーツド。葛城響華を愛し、彼女の為に、その転成体フィオナの為に、愛に生きて、戦う者だ!」
宣言する。すると、先程重圧を和らげてくれたデュークの黒い『何か』が自分の体から大量に現れ、再び体内に吸収されていった。
完全に吸収され切った後、自身の体が灰色の光を放つ。光はどんどん光量を上げ、それと同時に自身の中に力が湧き上がってくる。感じる。これが、デュークやセネカルトと同列の、神なる者の力なのだと。
「…………よっしゃ、いくか!」
光が引っ込んで湧き上がる力が書いて完全に自身に馴染んだ。今は誰にも負ける気がしない。粉々になった建物を蹴って思いっきり跳躍する。今までとは全く違う力強さ、想定外のスピード。自分が進化したことを実感する。
速度は衰えることなくドンドン前進していき、すぐにさっきまでいた場所が見えてきた。目の前に見えた怨敵をめがけて蹴りの体制をとる。フィオナの体に傷をつけるわけにはいかないので魂を選別して『神』の魂だけを攻撃する。このやり方なら傷つくのは中身だけなのでフィオナ自身には一切傷はつかない。蹴りは顔面にクリーンヒットした。いくらダメージが無いとはいえ、流石に罪悪感が湧き上がってくる。あの吹っ飛びようを見る限り普通に蹴っていたら首がもげていただろう。
「さて、これでお前も年貢の納め時だ。辞世の句の用意をしな!」
「ふざけるな!貴様が………!きさまごときがぁ!」
まだ何かをほざいている途中のようだが、そんなことは気にしない。フィオナはそんな乱暴な言葉は使わないのだ。彼女の声で他人が好き勝手喋るのは本当に許しがたい。自身とともに進化した魂具で『神』の魂を斬り裂く。巨大な白い魂が魂具に両断され、半分が消失する。
「ぎゅお………!?」
「白い魂、純粋さを表す色だ。ほんと、お前は純粋な、不純物なしのクソ野郎だよ!ピッタリだ!」
二度目。残った半分をもう一度斬る。またしても両断された半分が消失する。これで四分の三が消失した。
「ばかなぁ………!私が、私がこんなところでやられるだと………!?この神が、人間ごときに、またしても………?」
「そうだな。馬鹿は死んでも治らんというが、それは本人次第だ。悔い改めて、次は真面目に生きると良い。終世では歓迎してやるぞ?」
一切の余裕を失い、情けない声を上げる『神』。それをデュークは慰めてやった。まぁ、デュークなりの慰めであって、『神』そう受け取らなかっただろうが。
そして、この戦いはもう、終わる。打ちひしがれ地面に四つん這いになって倒れている『神』の前にタルパは満天の殺意を以って現れた。そして、笑顔でこう語る。
「やだなぁ、おじさん。僕がコイツの復活なんて許すわけないじゃん。さて、死ね、クソやろう。今度は魂の残滓一つ残さず、完全に消し去ってやるよ!」
「やめろ………!やめてくれぇ!!!」
「聞く耳持たん。なぁ、随分と長く戦ったよなぁ。最初は昼だったのに、もうお月様が昇ってるよ。おっきくて綺麗な満月だと思わないか?」
「こんな夜なら、最高の魔弾が打てそうだなぁ。」
「やめてくれ!死にたくない!しにたくないんだぁ!お願いだから、いのちだけはーーーーー「『魔弾剣』」
命乞いを聞く耳なんてない。タルパは集中し、己の全力を放つ。
「『神滅と斬魄の剣閃』」
「やめーーーーーーーーーーーー!
『神』はこの瞬間、完全に消滅した。動かしていた魂が消えたことで倒れこむ体を抱き抱える。
これでようやく、全てが終わった。タルパの望みは叶ったのだ。
「今度はずっと、一緒だよ。」




