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失墜の吸血鬼-転生黎明譚-  作者: 久慈
―転生黎明編―
7/27

-家族-

「ん~…」

 俺は目を覚ますと母さんが頭を撫でながら一緒に添い寝をしてくれていた。


「あら、お目覚めかしら?おはよう、お寝坊さん?」

 天使のような温もりのある笑顔で迎えてくれた。


「お、おはようございます」

 ついどう返せばいいかわからなくてやはり固くなってしまう。


「そういえばさっき、お父さんが顔が見たいと探してたわ。寝てるから後でねって言ったら柄にもなくションボリしてたのよ?」

 父さんがションボリしていたのがそんなに珍しかったのか悪戯な笑みを浮かべている。


 まぁ確かに吸血鬼の王様が自分の子供に会えなくてションボリしてるとか想像もつかないよな。


「そうなの?なら父さんの所にもいってくるよ」

「たぶんお父様はいま、自室にいらっしゃるわ。あ、でもソーマちゃんと場所はわかる?」


 自室ってことは俺が最初に父さんと会った部屋か?

「たぶん…わかるから大丈夫です!」


 大よその場所はわかるから何とかなるだろう。


「なら走らないで行くのよ?転ばないようにね?」


「はーい!また後でね!」


 俺はそう言い部屋を出た。

 さて、とりあえず大よそしかわからないけどどうしたもんかな。

 訓練がてら周囲探知つかってみるかな?


「こんな感じかな?」

 集中すると少しずつ頭の中に周囲の風景が浮かび上がる、そしてまず先に後ろの部屋の母さんの存在がわかる。


 《熟練度により周囲探知がLv:2になりました》


 すると急に頭に描いたマップが広がり、家具の大まかな外観や今の母さんがどこを向いているかなど

 レベル1ではぼんやりした影みたいな物だったが。

 レベルが上がった効果が思いの外大きくさっきより断然はっきりとどこに何があるかなどわかる。


 それに消費マナも全くと言っていいほど消費しない、これは常時発動しててもいいかもしれない。


 するといま居る場所から少し離れた部屋に父さんらしき面影を見つけたので向かう。


「これくっそ便利だな…何かあったらこれですぐ探せるし」


 定期的に使って熟練度あげちゃうかな。

 ちなみに最大まで上げるとどれくらいの範囲認識できるんだ?


 《まだわかりかねます》


 そっか、まだそれに達しってないから今現状しかわからないのか…

 ならレベル1と2の差は?


 《距離が2mから10mまで拡大しました》


 一気に五倍!?!?これまさか行く行くは街ひとつとかわかるようになるんかな?

 さすがにそれはないか!


 周囲探知を使いながらなんやかんや父さんの部屋の前に到着しノックをすると返事が返ってきた。


「お?ソーマか!?入っておいで!!」


 父さんの待ちわびてたかのような反応にすこし気恥ずかしいが嬉しさを覚える。


「しつれいしま…」

「あーー!!!そんな堅苦しいのはいいから!!!早く俺にも抱っこさせてくれソーマ!!」


 父さんは嬉しさのあまり、俺が喋りきるのを遮るように言ってきた。


「は、はい!」

 気圧され気味に返事をし、急いで父さんのもとに行く。

 父さんテンション上がりすぎ…


「おぉ!昨日よりかなりでかくなったな!!待ってたんだぞーー!!ずっとセレスにばかり寄り添いおって!この俺を待たせるとは将来、大物になるな!?っはっはっは!!」


 なぜか将来の太鼓判を押されてしまった。

 ただやはりこの人も俺が会いに来ただけでこんなにも喜んでくれるんだな。

 種族とかは特殊だけど、愛情を注がれてる事に変わりはないもんな。


 俺、こっちで生まれてこれて本当に良かった。


「父さん、ありがとう」

 つい感謝の言葉が脈絡関係なく出てしまった。


「何がだソーマ?」


 急に礼を言われた父さんはキョトンとした。

「あの、その…なにって訳じゃないんだけど」

 適切な言葉が紡ぎだせない。

 だが父さんは静かに待っていてくれる。


「父さんと母さんの子供に生まれてこれて…何て言うか、ほんとに良かったなって思ったから…」

 俺はできる限りこの気持ちを表現したかったがこれが限界だった。


「ソーマよ」

 父さんのさっきまでの覇気が落ち着き、真剣な面持ちになって俺の眼を見る。


「はい」

 俺はそんな父さんに対し静かに返事をした。


「確かに俺とセレスが親で良かったと言ってくれるのは本当に心から俺も嬉しい、セレスも聞いたら感極まって泣くだろう…だがな」


 聞きながら黙って俺は頷いた。


「子が親に感謝するのはこっちが何かしてやれた時だと思うんだ、そしてまだ俺とセレスはほとんど何もしてやれていない。それにな?お前が無事に生まれてきてくれたことが何より俺たちが感謝してもし切れないことなんだ」


 反則だろ…こんなん、格好良すぎるだろ…

 俺はそう思いながらまたもうつむいて涙を流してしまう。


「だからソーマ、俺とセレスのもとに生まれて来てくれて。剰え俺とセレスが親で良かったとまで言ってくれるんだ、親としてこんな幸せで嬉しい事あると思うか?」


 俺は泣きながら黙って聞き続けるしかなかった。


「だから今からお礼を言われるのはお門違いだ!感謝するならお前はまず、うんっっっっっと遊べ!親に甘えて!!楽しく()()()!!!それを見守ることが俺とセレスに対するお礼だと思ってくれ、な!?だからいつまでも泣くんじゃないソーマ!!!俺の子だろう!?」


 母さんにしろ父さんにしろ急にしたことないことしてもいいんだよって言われても困るよな。

 俺の子供時代を取り戻しても良いのか?大人になるのは四年くらいってカインズが言ってたっけ?


「うん、出来る限り…頑張ってみるよ」

「俺も親ってのが初めてだからな、勝手とかはわからんが家族なんだ仲良くやっていこうじゃないか!それにほれ!この後、客がくるんだ!しゃんとしろ!!」


「えっと、誰かくるんですか?」

「あぁ~なんて説明すればいいか…俺の部下ってわけじゃないしな…」


 とりあえず父さんの部下みたいな人が来る…のか?


「ならとりあえずお客さん来る前に顔洗ってくるね!!」

「そうだな、もう間もなく来るだろうから急いで行ってきなさい」

「うん、じゃあいってくるね」

「あぁ、また後でなソーマ」


 そういい父さんは俺の頭を乱暴に撫でまわしてきた。

「もーやめてよ父さん!!」


 気恥ずかしくて手を払いドアを出てまた周囲探知で洗面所がどこか探し始めた。

 少しでも使って熟練度だかってのあげないとな。


「てかやっぱり撫でられたりするのはまだ恥ずかしいな…」

 でも少しずつ慣れていかないとな~。

 歩いていると頭の中のマップに洗面所らしき内装の部屋が映ってきたのでそこへ向かう。


「ここか、ほんと今日は母さんにも父さんにも泣かされてばっかりだな…さて」

 さすがにまだ背が低いので届くか心配だったがさすがは半分吸血鬼だ、軽い跳躍で普通に洗面台に上れた。


 てか初めて俺こっちに来てからの顔見たな。

 めっちゃイケメンやない?え?なにこれ。

 俺やっぱ生まれ変わってよかった!!いろいろな意味でも!


 まず見てくれよ、この母さん譲りのさらっさらの金髪に父さん譲りなのか種族的になのか真紅の瞳!

 そしてこの中性的だがどこか気品のある顔つき!この顔やばい気に入った!!!


 さて自分のイケメンさに酔いしれるのはさて置き顔洗っちゃおう。

 洗って顔がさっぱりしたが目の赤みがかったのは取れないな。


「さすがにこの顔で人前は恥ずかしいな…どうしよう、でもまだ時間あるだろうし少し落ち着いてたら色も引くかな?」


 でも客ってどんな人が来るんだろう?やっぱり魔族てきなあれなんだろうな…

 でもちょっと他にゲームでしか見たことがないような種族が沢山いて実物がみれるんだから楽しみだ。


 父さんのお客さんが来るまでちょっと部屋で休んでるかな。

「ちょっと嬉し泣きしすぎたしな…」


 そして俺は来客まで時間をつぶそうと部屋に戻った。

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