-師事-
「ん…」
俺は真っ暗の棺桶の中でいつものように目を覚ました。
だが起きてわかったことだが、吸血鬼に睡眠自体は必要ないらしい。
簡単な省エネモードみたいなもので体力の回復は出来るが、人間の寝るっていうのとは感覚が違った感じだった。
それに昨日は気にせず外にいたが日光も別に平気の様だ、普通はヴァンパイアなどの生き物は十字架、ニンニク、銀、日光などが弱点で知られているがそれも別に当てはまらないようだ。
まだ銀とニンニクと十字架はわからないけど、それも後で父さんに聞いてみようかな?
さて、こうしては居られない。早速にでも稽古を付けてもらわなければ!
俺は急いで棺桶を突き破りかねない勢いで開けて立ち上がった。
「あれ?視点が、昨日より高くなった?」
明らかに違和感に感じるほど昨日より視点が高くなっている、急いで鏡で全体像を確認した。
そこには昨日より数センチも大きくなった姿が映し出されていた。
「もうこんなでかくなったのか!まさか寝る子は育つてきな?」
だがそのことも両親に知らせるべくまず母さんの部屋に行き身長の伸び具合を見せ、更に今日は庭で父さんたちに早速訓練をしてもらう事を伝えて、必ず見に来てくれるよう頼んだ。
母さんははしゃぐ子供をみるような感じで返事をしていた、事実はしゃいでいる子供なのだが。
そして次は父さんの部屋に突撃し、背が伸びたことを見せびらかし。
この後カインズも呼びに行くからもうすぐにでも外に行って待っててほしいと伝えて部屋を後にする。
そしてカインズを見つけだし手を引き庭まで連行していった。
そして庭に付き、先に待っていた両親の前に行き。
俺は一際と大きな声で。
「今日はご教授お願いします!!!」
頭を下げた、肉親や従者と言えど教えてもらうに当たっては此方が圧倒的に下の身分だ。
そこは社会人をやっていたので十分しみついている。
だが俺がそんな風にふるまうと三人とも思っていなかったのだろう。
全員が吹き出し、笑い始めたのである。
「ちょ、何がそんなおかしいのさ!!」
つい聞いてしまうがその問いに父さんが答えた。
「いや~すまんすまん、くっ、お前があんまりにも、まっすぐ素直すぎてな…くくっ!」
笑いをこらえながらそう言われてしまいなんか急に恥かしくなってきた…確かに家族に言う言動にしては固すぎたのかもしれない。
「も、もう!貴方達!そんなに笑ったら真剣なソーマがかわいそうよ!!」
ありがとう母さん、でも一番最初に吹き出し笑ったのはあなたなのです。俺は見てましたよお母様!!!
「あぁー確かにな、面白かったのはさて置き始めるか」
父さんが急に真剣な顔つきになって付いていけない、だがやる気になってくれたのならそれでいい。
「まずソーマ、カインズと立ち会ってみろ」
なんでだ?先に父さんの訓練じゃまずいことでもあるんだろうか?
「どうして先にカインズとなの?」
「それはだな、俺の訓練は精神を削る、肉体的には全く疲れないといってもいいだろう。だがカインズとは精神面も落ち着いた状態じゃないと今のお前じゃ尚のこと手も足も出なくなるぞ?だから先に万全な状態でカインズと手合せした後に俺の授業に移るとしよう、わかったな?」
なるほどな、確かに冷静なままでもカインズに勝てる見込みは正直薄いだろう、たしかにそのほうが効率的だな。
「じゃあカインズ頼めるか?」
「畏まりました、旦那様。それでは坊ちゃんこの老骨めがお相手仕りましょう」
カインズが優雅に会釈をしてきた。
「えっと、普通に殴り掛かればいいの?」
流石に何も言われず立ち会うとなるとどうしていいかわからない。
「えぇ、いつでもいらっしゃってください。技術は盗むものですからね」
あー、そういった感じですか。まじっすか。
「じゃあカインズの胸を借りる気でいかせてもらうかんな!!後悔すんなよ!?」
俺の精一杯の強がりを涼しげな笑顔で返された、あの余裕をいつか引っぺがしてやる…
軽くウォーミングアップをして体を解し、自分の持てる最高速でカインズに詰め寄る。
だがこんな馬鹿正直な直線攻撃は余裕で躱されるか、反撃されて潰されるだろう。だが盗むからにはあらゆる攻撃をしてそれの迎撃をさせて技を引き出して受けなければ始まらない。
痛みは技の等価交換と思えば我慢できる、だから今はまず徒手による組手みたいなものから初めてゆくゆくは武器への返しも学ばなければ。
だが今は集中しなきゃな…どうにか一撃だけでも入れてやりたい!!!
「喰らえぇぇぇぇ!!!!!」
残り数メートルという所で更に強く地面を蹴り推進力を爆発させてカインズに殴りかかる。
「スピードは、まぁそこそこですな。ですがまだ直線で勝負するには足りないですな」
カインズがそう言った瞬間、手を後ろに組んで静止していた筈が俺の目の前に居る。
いつどうやって移動した!?俺はよそ見なんかしてないぞ?
確かに俺はよそ見もましてや油断なんかもしていなかった、だがカインズは俺の目と鼻の先に居てにっこりとさっきと同じ笑顔で言ってきた。
「直線勝負はこれくらい出来てスタート段階ですよ?」
それが聞こえたと同時だった、視界がカインズの顔から急に真っ暗になってワンテンポ遅れて頭部に激痛と以上な平衡感覚がくるっていて上か下の区別すらつかない。
「な、にが?」
待ったく何が起こったか理解できない、俺はどうなった?
この頭の痛みも立ってるのか座ってるのかすら全くわからない。
《カインズからの攻撃により頭を地面に叩き付けられた事による軽い脳震盪です》
あぁ、なるほど理解できた。今の状況もカインズとの間にある力量の差も。
だけど諦めれない、こんな一回ぶっ倒れたくらいで。
あぁ、やってやるよ。
「やっと起き上がりましたか、坊ちゃん?」
訓練の時は本当に非情になった感じがするが、それも優しさ故なんだろう。
やっとの平衡感覚が回復してふらふらしながらも立ち上がる。
「待たせたなカインズ…あの熊にぶん殴られた時よりも遥かに効いたよ…」
正直かなり足に来ている、強がりも言う余裕も正直微妙だ。
「それはそれは、これでも手をかなり手を抜いたのですが…まだ坊ちゃんには早かったですかな?」
まじか、手を抜くのはわかるが。かなり手を抜いてこれかよ…
だが上には上がいる。一匹でかい熊に勝った位で調子に乗っていたよ…
だけどなカインズ、前世から負けず嫌いだし欲張りなんだよ!!!
「俺もじゃあ本気で行くよ、手ほどき頼むよ?カインズ」
「ふっふっふ、元気でいいですなぁ坊ちゃん。じゃあ遠慮なく手ほどきさせて頂きましょう」
どうせ今はスピードでは圧倒的に負けている、だがぼこぼこにされる気持ちで突っ込んでやる!!!
全神経を周囲探知に回して自分の目以外の物でカインズを視認する。この方が視覚外の攻撃にしろ、視野でとらえられない速度の物ももしかしたら見えるかもしれない。
あぁ、俺はいまは弱者だ。だが今の俺に出来ること全てをしてやる。
「じゃあ行くよ?」
あえて俺はゆっくり近づき相手の様子を伺うが、カインズは待ちの姿勢を取っている。
やっぱりか、なら俺から行くしかないよね?
そして俺はカインズの目の前まで来た、だがどちらも動かない。
俺は静かに構えて拳をカインズのわき腹めがけて突いた、だが意図も容易く叩き落とされる。
「くっそ!ならこれはっ!」
叩き落とされた勢いを消さずそのまま回転蹴りを繰り出すも軸足を払われ転倒しそうになる。
「坊ちゃん重心移動がまだ甘いですな」
「まだっだぁー!!」
無理矢理に体勢を整え右手で地を捉え、蹴りに転換する。
「ほぅ…発想と機転は良しですな?ただ…」
蹴りを繰り出した足を掴まれて放り投げられてしまう。
「慣れてない動き故に練度が低いですな、全てがぎこちないと言いましょうか」
空中に居る俺に大して指摘してくる、それは胸に留めておこう。
落下の衝撃を受け身でいなし、態勢を再度立て直し一旦距離をとる。
だが少しづつだが体の動かし方がわかってきた、というより身体能力で無理矢理漫画などで知っている技術を模倣しているにすぎないが。
動かせるには動かせる、だが練度不足は覆せないがどうにかカインズに一撃入れれないか…
考えろ、何かあるはずだ。




