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Dr.Kの鼓動  作者: パワプロ58号
4.春の全国高校野球選抜大会
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第94話「合同合宿」

 一か月間の冬練習を経たところで、始まる合同合宿。集まったのは、黒光高校、鉄日高校、初巾高校、福富商業高校、三浜高校、秋江工業高校の6校だ。開催地は鉄日高校近くの合宿場。鉄日高校の野球部監督、乾が企画、実行したものだ。

「よお今宮」

「おっ、久々だな白里兄」

今宮に気さくに話しかけるのは、白里一哉。初巾高校のキャプテンである。隣にはレイモンドも立っていた。

「どうして6校も集めたんだか。しかもどこも甲子園を目指すような強豪校」

レイモンドが愚痴るのを、白里がなだめる。

「……何にせよ、全国レベルの選手と対抗できる力を身に着けるために、県内のレベルの底上げを図るんだとか? まあ俺らにとってもメリットはでかいよ」

今宮も白里に同意だった。


 一方、こちらは軽い修羅場となっていた。

「やあ静ちゃん、北信越大会二回戦負けの感想は?」

相変わらずの無神経さで新田を煽るのは黒鉄だった。

「そちらこそ、デッドボールと強襲ヒットを同じ日に受けた気分は?」

煽り返す新田。間に立つ鷹戸は黙って目を閉じていた。

「投手も合同練習するんだろ。まあガンバローゼ」

黒鉄が出した右腕を、新田は左腕で返した。

「あ、わりぃ……俺左利きなもんで」

そのまま彼の右手をはじいて去っていく新田。その歩いた先では、古堂と宮城が話していた。

「合宿の日以来じゃねえか」

「だね。レイは最近どう?」

「……そうだな。冬練頑張って体重増やしたんだよ」

「へえ、凄いじゃん」

中学時代、少しの間だけ同級生であったにも関わらず仲良くはなしている2人を見て、新田はため息をはいた。

(やっぱ性格なんだろうな……)



 そして始まる合同練習。投手は全員が初巾高校の根古屋監督のもとに集められた。

「初巾の根古屋栄だ。お前らには、フォームを乱さないコツってのを教えていこうと思う。そのあとは、絹田の指導で体幹&下半身の筋力トレーニングだ」

「はい!!」

投手は全員が大声で返事をする。クロ高の新田、伊東、鷹戸、古堂、小豆の5人はもちろんのこと、秋江工業の江戸川や奥田、福富の高月や寺田、初巾の柏木や阿佐間、三浜の柴川、鉄日の黒鉄や宮城、その他多くのピッチャーも同様に練習に参加していた。

「阿佐間さん……せっかく俺らだけしか知らなかったことなのに、ライバル校に易々と教えていいんすかねえ」

「……いいんじゃないのか。相手のレベルも高い方が、より面白い試合ができるだろう」

文句たれる柏木をなだめる阿佐間。

「それに、俺らは白銀世代じゃないから……周りの白銀世代から学べることがあるってのはでかいだろ?」

「はあ……(正直、ナックルボーラーの俺からしたら関係ないんですけどねえ)」


 野手もトレーニングに勤しんでいた。

「スイングスピードなんかいいんだよ。タイミングが合えばよ」

こう説明するのは、福富商業の荒牧鉄平。

「……バカかよ。タイミングを合わせやすくするためにスイングスピード上げるんだろうが。振り遅れがなくなるぞ」

クロ高の今宮は引き下がらない。

「HAHAHA、結局はパワーだよパワー!!」

三浜の4番坂東は高笑いしながら素振りを続ける。

「坂東の意見は参考にならねーぞ」

こういうのは秋江工業の大坂。その隣で黙々と、動画を見ながらバットを振る地村。大滝は、その光景を見て軽く感動していた。

(す、すげえ、白銀世代の先輩たちが、こんな形で練習してるだなんて)

特に気になったのは、動画を見ながら素振りをする地村の姿。動画は、『プロ野球選手が投げるボールを、打席に立って見てみた』という題のものだった。

「なるほど、実際に……とまでは行かなくても、活きたボールを見ながらスイングをする――これがあの鉄日の4番を担う地村さんの練習法か」

大滝は早速、自分のカバンから同じように携帯電話を取り出した。

(これを続ければ、俺も地村さんみたいに……)



 こうして練習を続けること2日間。合宿最終日がやってきた。

「はぁ……たくさん学べることもあったけど……やっぱクロ高の冬練しんどいな」

「鉄日もなかなかだったろ」

「まあでも……今日で最後だろ……練習試合。ドリームマッチ組むらしいじゃん」

「へえ……楽しそうだな」

合宿がもうすぐ終わるという喜びから、会話も弾む選手たち。

「……んじゃ、レギュラー組とベンチ組に分かれて、それぞれで4チーム作ってトーナメントを行う。今から呼ぶ者をキャプテンとし、その中からドラフトして決めてほしい」

絹田監督から、キャプテンに当たる人物が読み上げられる。

「Aチーム、黒鉄大哉。Bチーム、新田静。Cチーム、高月広嗣。Dチーム、江戸川凛乃介。絶対にポジションごとにドラフトを行うこと。いいな!」

「はい!」


 レギュラー組が淡々とチームを決めていく中、ベンチ組はざわついた様子だった。

「コドーがエースになるだって?」

そう、ベンチ組の4チームのうちのDチームのキャプテンが古堂に選ばれたのだ。すぐさまキャッチャーに返田を選び、ドラフトを始めていく。その上で出来上がったチームで対決をすることになるのだが、古堂らはいきなり鷹戸が投げるチームと戦うことになった。

鋭い眼光が古堂を睨みつける。

(面白いじゃん……)

古堂も鷹戸も、同学年同チームに存在するライバルを見て、胸を躍らせた。





 試合が始まった。鷹戸の球に、先頭打者の林里はピッチャーゴロで倒れる。

「くっそぉ……」

続く打者2人も三振に倒れた。

「クロ高の鷹戸、あれでリリーフかよ。投手大国だな」

「やべえって……」

古堂の球も、調子よく走り、打者2人を三振に取った後、三人目の鷹戸をセンターフライで倒し切る。

「……最後、ストレートだと思ったのに鷹戸の打球伸びなかったな」

「あれカットボールだよ」

「えっ、まじ?」

こうしてお互い無失点の中で投げ合いが続く中、9回に鷹戸が古堂からヒットを打って出塁した。

「くぅ……鷹戸の野郎……地味にバッティングうまいからなあ」

そして、代打として登場してきたのは、秋江工業の文化祭で出会った一人のヤンキー、万賀翔平だった。

「あっ、翔平じゃねえか! 何でここに!?」

「ずっといるわ……」

苦笑いする万賀。初球を投げる古堂。ストレートがインコースにしっかりと入る。

(いいストレートだな)

万賀は苦笑いから不敵な笑みに変えた。

「……ふぅ」

無言で息を吐く万賀。内野陣や古堂は息を呑む。キャッチャーの返田は低めに外したスローカーブを要求した。

「ぬん!」

古堂がスローカーブを投げる。抜け球のようにゆっくり、それでいてしっかりと変化していくスローカーブは、古堂独特の変化もあり、万賀が打ちに行くも当たらない。

(す、すげえ曲がったな。今のスローカーブ)

続いて古堂が投げたのは、シュート。外に逃げる球だったが、何とか当ててカットする万賀。

続くアウトローへのストレートや、インへのカットボールなども、すべてカットする。

(ほしい球が来るまではずっとこうやり続けるぜ?)

万賀の、鋭くて、それでいて無邪気な笑顔に古堂は凍り付いた。

(す、すげえ……翔平すげえ!)

古堂の中には、万賀に対する畏敬の念と共に、それでも勝ちたいという勝負欲があふれ出してきていた。返田もそれに応え、ど真ん中にスローカーブを要求する。

(コドーのウィニングボール、来い!)

(うおっしゃあ!!)

唯一万賀から空振りを取った球種――古堂のスローカーブが投げられた。緩く弧を描き、万賀の手元までやってきた――そこを彼はたたき上げた。


――快音と共に打球は空高く上がり、スタンドへと入った。

「や、やべえ」

古堂は呆然と背後を見て立ち尽くしていた。万賀翔平の、高校生活初のホームランであった――

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