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Dr.Kの鼓動  作者: パワプロ58号
2.秋大会決勝トーナメント
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61/408

第61話「新変化球」

 (カーブ!?)

四方は二打席目――新田のカーブを見逃す。ストライク。予想以上の変化量に絶句してしまう。

「……ふ、ふざけんなよ」

2球目のスライダー、内角ギリギリに凄まじく切り込んでくる。2ストライクと追い込む。

(ストライク先行型だな)

3球目のシュート……

(ストレートと変わらない速度できたらそいつはシュート。こいつは変化球主体だから直球はほとんどなげねえ!)

四方はシュートを打ち返す。流し打ち方向に飛んでいく打球。ファースト伊奈の頭上を超え、シングルヒットに。

「うおっし!」

四方が一塁から叫ぶ。2アウトの場面で出塁者が出た。


 2番打者、本田清行が打席に立つ。しかし、先ほどの打席と同じように、エリアの隅の投げ分けに対応できず、3球で仕留められた。

「くーっ! 強いな新田静……」

「だな……これまでと違って打たれたって全くパフォーマンスが落ちない」


 3回裏、クロ高の下位打線が打席に立つが、テッ高のエース、黒鉄の前に、小林、佐々木が三振に倒れ、三人目の新田もキャッチャーフライに倒れる。

「……ぐっ……黒鉄ェ」

新田が悔しそうに歯を食い縛るが、キャッチャー迫田は無表情のまま言い放った。

「黒鉄さんを超えることはできませんよ……ましてや……打ち崩そうだなんて考えないことですね」

「……野郎」

迫田の言葉に、新田はその切れ長の目を細くした。


 4回表、先頭打者は木口諒真。

「しゃす!」

打席に立つ彼。早速初球投げる新田。初球から外に逃げるシュートで空振りを狙う。

(うっ……)

2球目のカーブでファウルにし、3球目、内に切り込むスライダーで三振に倒した。

「うしっ!」

木口を三振に倒し、勢いに乗る新田。しかし、そんな彼の前には、先ほど二塁打を放った地村。

(敬遠気味でも良いくらいですよね)

しかし、首を振る新田。エリア中心にボールを集めたいらしい。

(ここで叩いて……俺たちに勢いをつけたいんだ)

新田の訴え――その目をみた金条は頷く。

(わかりました。それじゃあ、初球から遠慮なく行きましょう)

初球――膝下厳しいところにカーブ。打ち損じると思ったのか、地村は降ってこない。ストライクだ。

(み、見逃してくれたのはデカイぞ……)

金条は息を詰まらせる。2球目に外に外れるスライダーを要求。見逃してボール。


 「さすがに慎重になってますよね……」

「いや、むしろ初回~今までが大胆過ぎたくらいだ。でも新田の精密コントロールを活かしてエリアの隅に投げ込んでいくスタイルは有効っちゃ有効。鉄日打線に対していいアクセントになったし、何より、少ない球数で来られたのはデカイ」

古堂の言葉に、坂本が付け加えた。

「……しかしまあ……勝負を急ぎすぎるのは有効だとは言えない。伊東と鷹戸も既に準備を始めているし、もっと球数増やしても構わないと思うぞ俺は」

芝はそう言ったが、新田自身、俄然調子が良さそうなので、しばらくはこのストライク先行型で行くと思われた。


 3球目――ナックルボールを低めに外す。地村は目の色を変えた。

(追い込んでいない段階でウィニングボールを……勝負を急いでいるのか?)

そして4球目。次はエリアに入ったナックル。さすがの地村も、これには空振りする。

(!)


 「げっ……ヨーが空振りかあ……」

ベンチでバットを持ちながら斑鳩は絶句した。乾監督は険しい表情をしている。

「……柏木のナックルとは違い、回転少しあって変化も鈍い、所詮軟投派が頑張って身につけたナックル。天賦の才を持ってしてナックルを投げる柏木とは別種だ。しかし新田の強みは、球種の多さ。配球を絞らせない点にある。だが、地村にはその戦法、まるで通用しないぞ?」

険しい表情を、不敵な笑みに変えた乾監督。5球目を投げた新田。

(ナックルか)

地村はギリギリまで引きつけて――打ち返した。鋭い打球が、新田のすぐ右脇を通り抜ける。

「ぐっ!」

三遊間を抜ける打球。しかし――

「だりゃあ!」

斜め後ろから切り込むように飛び込んだショート田中。抜ける外野の芝で跳ねる前に打球をもぎ取った。


 「ショート田中よく捕ったぁ! ファインプレーのショートライナーにより、4番地村、倒れます! 2アウト!」

実況もそのワンプレイに声を荒げる。田中は身体を起こしてその喜びを体全体で表す。跳ねる。とにかく。

「っしゃあ! 2アウトだぜ2アウト! 打たせてこいや静ァ!!」

(サンキュー……田中)

涼しげな目元を細め、口角をきゅっと上げた新田。続いての5番打者、泉中。

(こいつは……エリアの隅でストライク先行でも良い!)

金条の要求通りのところに、要求通りの球を投げ続ける新田。泉中は3球目のスライダーを打ち損じてセカンドゴロに倒れる。3アウトだ。

「ないぴ新田!」

今宮が叫ぶ。


 「クリーンナップ諸ともしてねえ!」「今日の新田、つええぞ!」「つうかクロ高やるじゃん。さすがだな!」

色めき立つ観客たち。しかし、その回の裏――新田の好投をあざ笑うかのように、黒鉄の速球――――及び迫田のキャッチャーミットが轟音を奏でる。

「っし!」

嬉しそうに笑う黒鉄。早くも先頭打者田中を2ストライク1ボールと追い込む。

(俺だって……静が良いピッチングしているんだ……応えなきゃ!)

田中は黒鉄のストレートをまっすぐ打ち返す。ライナー性の当たりは、センター方向に飛んでいく。

(やべっ!)

四方が前方に走る。田中は一塁ベースに到着するが、四方が打球を間一髪の所で拾い上げ、アウトとなる。

「だぁっ! 惜しい!!」

古堂がその悔しさを本人以上に叫んだ。田中は苦笑いしながら戻ってくる。

「思った以上にノビてる……そして球威もある……かっ飛ばすのは難しいぜ大滝」

「な、なんで俺なんですか……」

「打つんだろ」

苦笑いした大滝に対して、真剣な表情を見せた田中。大滝もすぐはっとして真剣な表情に変えた。

「……もちろんです」


 2番今宮は、サードゴロに倒れてしまう。

「ぐっ……思った以上に低めに打ち返すの難しいな。アホみてえに伸びやがる」

悔しそうな表情を見せる今宮。黄色い声援を浴びて嬉しそうな黒鉄。

(さあて……次の山口を倒せば、クロ高上位打線を二打席連続完封――クロ高白銀世代が味噌っカスってことが十分に伝わるだろ……)

ストレート、高速スライダーなどを巧みに使い、山口を追い込む黒鉄。しかし、ここに来て山口はファウルで粘る。とうとうフルカウント。

(さっきは……高速シュートでもいい当たりが出てました。危険ですよ黒鉄さん)

迫田は少し警戒した様子で、高めの高速スライダーを要求。しかし黒鉄は首を振る。

(新しい変化球使おうぜ。例のヤツ)

黒鉄の不敵な笑みから察した迫田は、彼の思惑通り、新しい変化球を投げさせようとサインを出す。

(わかりましたよ……黒鉄さん。その代わり、打たれないでくださいよ)

黒鉄が投げた7球目――どんな球が来ても打ち返すと意気込んでいた山口は、バットを手元まで振る。しかし、なかなか訪れないボール――

(ここに来て……新変化球か!?)

山口はバットを何とか食い止め、ボールに当てる――しかし、ボールは鈍く転がり、黒鉄のミットの中に無情にも収まっていく。走り出したがもう遅い。ピッチャーゴロに倒れた。

「黒鉄大哉っ、ここに来てサークルチェンジを投げた!」

実況の声。沸く観客。黒鉄は嬉しそうに右手を空に掲げ、親指、人差し指、中指を立てた。Kの指文字を作った彼を、会場全体がたたえた。

「ナイスキル!」

「いいんじゃないサークルチェンジ、決まってたよ」

本田と斑鳩がそれぞれ黒鉄の元にやってきて笑いかける。黒鉄は自信満々の表情で、マウンドに向かう新田に言い放った。

「やっぱり、クロ高の白銀世代って……たいしたことないよね」

新田の腸が煮えくり返るかのような気分まで一気に高潮している。ぐっと喉の奥に不満をこらえ、マウンドに向かう。


 「黒鉄さん……よく決まってましたね。サークルチェンジ」

迫田が嬉しそうな表情を見せている。

「まあよ……これでクロ高の勢いは完全に摘み取った。この状況でどんなピッチングをみせてくれるのか、静ちゃんに期待だねえ」

そして来る5回。勝負は、中盤戦に突入しようとしていた――――。

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