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Dr.Kの鼓動  作者: パワプロ58号
2.秋大会決勝トーナメント
46/402

第46話「魔球VS剛球」

 1回を投げる鷹戸。先頭打者をサードのエラーで出塁されてしまうと、二番、三番バッターを打ち取るも、四番レイモンドにタイムリースリーベースを放たれ、失点した。

「……」

鷹戸は不機嫌そうにするまでもなく、にやりと笑うのだった。


 5番打者、白里一哉。ファーストを守備するキャプテンだ。くせものぞろいの初巾高校をまとめている男だ。

(あの球威モンスター、ストレート一本しか投げないと見せかけて、スプリットも投げやがる。なにげジャイロボール投げるのもうぜえよなあ……)

ジャイロボール――それをまともに投げる投手は非常に少ない。肩に負担がかかるのだ。

(あいつの真価は、球速でも球威でもない……その鋼のような肩の強靭さにあると見た)

一哉はしっかりと初球を見逃す。2球目、高めに外れたストレートも見逃す。そして3球目、ノビるジャイロボールを投げた鷹戸。一哉はしっかりとボールを見て打ち返した。

「よしっ!!」

一哉は打球を見上げて走り出す。しかし、直後に違和感を覚えた。

(打球が――伸びてない?)

レフト佐々木がしっかりと捕球するのを見る一哉とレイモンド。悔しそうに下がっていった。


 「カズヤ、あの球はどうよ?」

ベンチに戻った白里一哉に話しかけたのは、先ほど三振に倒れた男、大槻吉秀。

「そうだな……ジャイロボールの投げ分けは正直見分けられない。ノビか沈みか……ジャイロボール自体捨てるべきだろう。普通のフォーシームかツーシームのみに絞るべきだろう」

「そうだな……」

白里一哉の見解に、大槻も頷く。


 2回表、クロ高の攻撃は4番大滝から始まる。思い出すのは、柏木の言葉。

――うちにはホームラン打てなきゃ勝てないよ。

(だったら打つまでだろ……絶対に打ってやる)

大滝がバットをしっかり構える。実況の声にも熱が入る。

「さあ、今年優勝候補の初巾高校VS黒光高校!! 2回の先頭打者、大滝は二回戦の鶴戦、三回戦の秋江工業戦でそれぞれ本塁打を放っております。一年生にしては珍しいパワーヒッターです」

(実況力入りすぎ……もっと俺に注目してェ!)

柏木がナックルを投げた。初球から降っていく大滝。ボールは掠ってファウルとなる。

(当てるねえ。でも前に飛ばなきゃ意味ないよ……!)

2球目、またナックル。次は見逃してボール。

(ゆ、揺れる……)

3球目は外に外れてボール。4球目は大きく空振りしてしまう。2ボール2ストライクと追い詰められた大滝。柏木はにやりと笑ってすぐに5球目を投げた――徐々にふわふわと近づいてくる魔球。大滝はしっかり見た。

(これはボール!)

キャッチャーミットに収まるナックル。しかし主審が右手拳を大きく上げた。

「ストライク! バッターアウト!!」

「ああっと! ナックルは外角低めにギリギリ入っているっ!!」

実況が大きな声で叫んだ。大滝真司、見逃しでアウトとなる。

「っしゃ、いいところ投げるじゃんクニヤ」

「るせーよ。お前は黙って捕ってろコジロー」

笑いながらやり取りする二人。


 続くバッター、伊奈聖也。

「続く5番バッター、伊奈くんですが、彼はなかなか安定したバッティングを見せてくれますが……この試合、ナックルボール相手にどう戦うのでしょうか」

初球から積極的にバットを振っていくが、結局空振り三振に倒れる。悔しそうに歯を食いしばる。

(新田さんのナックルは確かに練習になったはずだ。なのに……こいつのナックルはそれ以上だ……!)

続く金条に言葉をかける伊奈。

「金条、やべえぞ」

「ああ。新田さんのと同じイメージだとダメなんだろ?」

「ああ。全く別物と思っても良いくらいだぜ」

「サンキュー」

金条が打席に立つ。初球のナックルを見逃す。柏木はにやりと笑っている。

(このメガネ、無駄に見そうだよなあ。ちょっと遊んでやろう)

2球目、ナックルをもう一度投げる柏木。打てると思ったところにきたボールだったが、揺れる魔球はバットをうまく避けていく。

(う、うわっ……)

そして、間髪入れずに投げた3球目――次もしっかり見てから振ることを思い至っていた金条。しかし……柏木が投げたのは、ストレートだった。

「あっ……」

タイミングが合わず、凡打となってしまう。ピッチャー柏木が打球を拾ってファーストへ送球。アウトとなる。

「あぁーっと! 柏木突然のストレートに、金条タイミングを合わせられないっ!! この2回もランナーを出すことができません!!」

「お、惜しいな金条!」

「わりぃなコドー。おれがもうちょっと上手く打てれば」

「……」

鷹戸は無言でマウンドに向かう。金条もその様子を見て、ため息を一つ吐き、無言でプロテクターを用意した。


 二回裏、鷹戸遥斗の投球。6番ライトの二年生、瀬田成彦はバットに一度も掠らずにアウトになる。続く一年生スタメン、7番錨と8番権田を凡打に抑え抜いた鷹戸。初回の得点でついた勢いを完全に断ち切る。

「ふぅー」

大きく息を吐いた鷹戸。何事もなかったかのようにベンチに戻る。

(た、鷹戸すげえや……)

古堂は黙って鷹戸を見ていた。他の二年生たちも、その投球にざわついている。

「鷹戸すごくね? まともに打たれたのレイモンドだけだぞ?」

「……頼りになるぜこいつは……」

「何とか1点返さないとな」


 打席に立つのは7番小林。強肩のライトだ。柏木のナックルを相手にバットを上手く当てることはできず、三振に倒れる。

(あ……あれ)

全く目が追いつかなかった。

(い、一年でこんな球を投げやがるなんて……)

続く8番バッター、佐々木も柏木のナックルを相手に全くボールをバットに当てられず、三振となる。

(見えない球じゃない……江戸川さんとか福富の高月さんに比べればワンチャン……?)


 二人が三振に倒れるところを見ていた今宮と山口は渋い表情をしていた。

「あいつは球速が早くない。それも打ちづらい原因だろう」

「直球でも長打を狙うとつまらせそうだね。ナックルなんか余計に打てないよ。球の勢いが元々無い分、揺れ幅が大きいんだ」

山口のこの言葉に今宮が頷く。一年の大滝と伊奈は絶句していた。

(な、何でこんなに早く研究しているんだよこの二人は……)

(白銀世代、本格的にバケモンだよな)

柏木に煽られたことが悔しい大滝も、前の試合で全く打てなかったことも起因して活躍することに飢えている伊奈も、その唇を噛み締めるのだった。

(相手は……同じ一年生なのに)



 9番鷹戸が打席に立つ。柏木はニヤニヤと笑っている。

(あれ、こいつバッティングに積極的な奴? んじゃあ遠慮なくやっちゃうよ!!)

初球のナックルボールを、鷹戸は平然と打ち返した――鈍く打ち上がった打球が二遊間を抜け、センター、レイモンドの前に落ちる。シングルヒットで出塁した鷹戸。

「……あんにゃろう」

柏木が一塁ベースの方を、歯を見せながら睨む。鷹戸はそれを静寂を伴いながら睨みつけていた。

(ナックル一本だけで調子のんなよゴミ)

鷹戸の視線に夢中になっている柏木。睨みが余計に鋭くなる。そこを制したのはキャッチャー白里虎次郎。

「クニヤ! どうせマグレだ!! シングルヒット程度なら次抑えれば問題ない」

(マグレじゃねえぞデブ)

鷹戸は睨む先を虎次郎に変えた。打席には田中が立つ。2ボール1ストライクの状況で投げられた4球目のナックルを打ち返した田中。鋭く打球が外野へと飛んでいく。

「レイモンドさぁーん!!」

柏木が叫ぶ。グラウンドの奥から、緑の芝を駆け抜けるセンターレイモンド。手前で落ちそうな打球をスライディングして拾い上げた。

「アウト!!」

田中は、レイモンドの好守備の前に、センターフライに倒れた。


 「おおっと! 白銀世代田中の打球を、同じ白銀世代のレイモンドが完璧に仕留めたっ!!」

実況の声と共に盛り上がる観客。3回表の攻撃が終わった時点、完全にムードは初巾高校

に流れていた。ムードに流され、萎縮してしまうクロ高ベンチ。しかし、彼だけは全く変わらない。

(うるせー……今すぐ黙らせてやる)

マウンドに立つ、鷹戸遥斗に他ならない。

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