出会い
⚠この作品はグロテスクな描写が記載される場合があります。
もしそのような描写が苦手な方はこの小説を閉じてください。
母親はいたって普通の人だった。
普段も他の家庭と大差ない程度の家で会話や食事をしていた。
幸夢教に入っていたこと以外は。
あの日、運ばれていく彼女の死体を見たとき、その表情は静かに笑っていた。
悲しみはなぜかわかなかったが、その代わりにこの現状に対し強い怒りと不信感を抱くようになった。
なぜ母親は殺されたのか、またなぜ母親自身も笑っていたのか全てがわからない。
たしかに昔から学校でも幸夢教の授業を徹底して叩き込まれていた。その支配による影響か現在完全に幸夢教の信者になった知り合いも数えきれないほど多くいる。教団から出る生活への必要最低限の保証を手に入れるためにすがっているものもいる。ふざけている。到底理解ができない。
だが、あれから色々あさってはみたものの、情報もほとんど手に入っていない。
クソ、自分にもっと力さえあれば、この意味不明で狂った状況を打破できるかもしれないのに。
「やばい!この時間はまずい。」
考えすぎた。今日から高校生だというのに。
「では、続いて田中先生、お願いします。」
「皆さん!初めまして!1年3組の担任を務める田中連夜です!よろしく!れんちゃんって呼んでくださいね!早速なんですが、一発ギャグやります!お金はおっかねー!ガハハハ!あれ、なんか寒いですね。僕だけかな?今日はもう布団にくるまって寝まーす!」
笑いこそほぼなかったものの、長い校長の話で疲れた空気が漂っていた体育館が少し和やかになった。
あれが俺たちの担任か。
長い始業式、クラスでの自己紹介、写真撮影もようやっと終わった。
まだ春休みならよかったが、高校生になったからにはより一層真剣にこの状況に取り組まなければならない。
早く帰らなければ。
「ちょっといいか。」
こいつは同じクラスのやつだ。
確か名前は...そうだ、川林秀輝だったか。
「何の用だ。」
「すまない、呼び止めてしまって。」
「それはいいが早く済ませてくれ。俺は早く変えってやるべきことが...」
「君には殺された母親がいないか?」
手が止まった。
「なんで...。」
「俺と一緒に校門裏に来てくれないか?」
着いた。恋愛漫画の学校での告白シーンでよく見るバカでかい木が一本立っていてそれ以外何もないあの風景をそのまま再現したような場所だ。ここが校門裏か。
「な...何で知っているんだ!俺の母親が殺されたことを!」
「おいおい落ち着けって。まぁまず一旦これを見てくれ。」
そうやって見せてきたスマホの画面には幸夢教の執行人によって殺害された人達の顔やプロフィール、家族関係、殺された時期や場所などがあらかた乗っているブログのサイトが移っていた。サイトが見たことのないURLで、おそらく深層webのどこかのものだろう。
「な...なんだこれ...。」
「最近、この辺で執行が行われたと聞いて、ちょうどこの付近だったから色々調べてたんだけど、名字が一致したからワンチャンと思って君に聞いてみたんだ。そしたら案の定ビンゴ、君は彼女の息子だね。」
次の瞬間、俺は気づいたら秀輝の首をつかんでいた。
「やめろ!それ以上べらべら喋るな!そもそもお前は何者なんだ!これ以上俺に入り込んでくるな!俺の傷口をえぐるな!もう誰も信じられないんだよ俺は!!どうして、どうして何もしていない俺の母親が!殺されなければならなかったんだ!!」
自然と目には涙がたまっていた。
「は、放してくれ...。」
言いたいことを言い切ったことからなのか、はっと俺はすぐに放した。
「ごめん、つい取り乱した...。」
しばらく沈黙した後、秀輝が口を開いた。
「俺も、幸夢教に両親を殺されたんだ。」
耳を疑った。
「幼少期から両親は俺を大切に育ててくれた。俺は一人っ子だったから、特に愛情を注いでくれたんだ。このまま末永く幸せに暮らしていくんだろうと感じていた。8歳の時だ。家にいつも通りはしゃいで帰ると、そこには血まみれで無機物となった両親が倒れていた。俺はその時から視界が真っ暗になった。運ばれていく両親の顔は笑顔だった。不気味だった。でも悲しみもわかなかった。」
確信した。この男は齢8歳にしてこの狂った社会へとたった1人で投げ出され、壮絶な人生を歩んできたのだ。
「ここで君への本題につながる。俺には今一緒に暮らしている仲間がいる。そいつは当時、同時期に同じく肉親を殺され孤児院で出会った仲間だ。そいつはプログラムの才能にたけているんだ。さっきのブログも彼のものさ。俺たちの目的は何か、それはズバリ、君と同じく幸夢とこの日本の崩壊だ。でも流石に頭脳型2人だと何もかもが心細くてね。どうだ?俺たちの仲間になってくれないか?パワー型が欲しいんだ。君、一応野球やってたでしょ?新聞に載ってるの見たよ。」
話の段階で俺はもうすでに答えは決まっていた。
「もちろんだ。」
「ビンゴ!契約成立っ。」
斯くして俺は秀輝の仲間になった。
この狂った世界をつぶすためには、俺はこいつらを信用して手を組む。
ここからが、俺達の戦いの始まりだ。
ご愛読いただきありがとうございました!作者です!
これから不定期ですが頑張って連載していきたいと思います!
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