幼稚園に入園したんだが?
カーテンから朝の日が差し込んできた。俺はううん……と声を出しながら起きた。最悪な日を迎えてしまった。幼稚園……。また集団生活だ。体を伸ばしていたらいずもさんがコンコンコンとノックして入って来た。
「ヤナト様、おはようございます。今日は入園式の日です。」
「おはよう、いずもさん。そうだね。」
「お召し替えを持ってきたので、こちらへどうぞ。」
と言われたのでベットを降りて鏡の前に立った。幼稚園に行く羽目になったという現実を受け入れられない。完璧な脱走大作戦は全ていずもさんに阻まれた。窓から脱走しようとしたし、使用人の馬車に紛れ込もうとした。全敗とは。この家は監獄だ。
そう思っていたらもう着替えが完了していた。
「ヤナト様、大変お似合いでございます。」
眠たい目を開けて鏡に写っている自分を見たら、かなり似合っていた。似合っているのがかなり悔しい。でもほんとに似合っているな。色々ポーズをしてみた。右足を上げてダブルピース、寝っ転がって手をぐうにしてあごを乗せたやつとか。うん、似合いすぎている。横を見たらいずもさんがほほ笑んでいた。
「ヤナト様、奥様と旦那様のためのお写真をよろしいでしょうか。」
「いいよ。かっこよく撮ってな!」
かっこよくってかこれだったら可愛いだな。色々なポーズをまたした。うん、悪くないな!
いきなりバン!と音がなり何事だと思ったらドアを破壊して兄さんが入ってきた。
「今日ヤナト入園式の日だったのか!」
「ま、まぁそうだけど。で、どうしたの?ドア壊して入ってきて。弁償しろよ」
「いや、お前が自分が首領の息子で次男だってことをちゃんと理解できてるんかなってな。」
「分かってるよ。それくらい。」
「分かってなさそうだから一応言っとくが、お前が幼稚園で過ごしている時は少なからず襲われたりするかもだから死なないように気をつけろ。」
「そんなことは分かって……、はい?」
なんだ?どういうことだ。襲われる?死ぬ?は?まじで?外の世界ってこんなに危険だったか?
「じゃあな、友達百億人作れよ!」
と言って爆速で家を出て小学校へいきやがった。まだ疑問が解決できてないのに。それと、兄さんと俺は7歳差だ。だから今は俺は3歳、兄さんは7歳。さーて、このドアはどうしてくれるのか。
「ヤナト〜、幼稚園の制服は着れたかな?あれ、なんで壊れてるの?ヤナト壊した?」
母さんが機嫌良さそうに来たのにドア壊れてるの見ただけで頭から角が生えたような気がした。覇気がすごい。
「い、いや、俺じゃなくて!兄さんがいきなりドア壊して入ってきたの!」
「そう、いずも、本当?レアンが壊したの?」
「はい。レアン様が入室の際にドアを蹴り破り入ってきました。まぎれもな事実です。」
「そう、ありがとう。小学校から帰ってきたはみっちりお仕置きしないとね。」
お仕置き……。触れないでおこう。触れないことこそが正解だ。母さんのことだ、絶対やばいこと。
「そういえば、ヤナト!可愛いじゃない!可愛いわ、可愛いわ!幼稚園でこれじゃあモテモテね!」
「ふふん!そうでしょう!俺より制服似合ってる子なんてこの世に存在しないよ!!」
「その通りだわ。ほんとに似合いすぎてるわ!あ、ちょっと待ってね、カメラ、カメラ……。」
「奥様、ここにございます。」
そして俺の写真大会が行われた。母さんにこっち向いてー!!こんなポーズしてみて!とか色々言われ続け30分。長すぎる。いつ終わるんだこれ。
「奥様、そろそろ朝食のお時間です。食堂へ参りましょう。」
「あら、もうそんな時間かしら。じゃあいきましょうか、ヤナト。」
俺は抱っこされて食堂へ向かった。まだ階段なんて降りられないからな。階段でかすぎる。食堂に着き、食事を終え、すぐに馬車を用意していた所へ向かった。家のドアを開けると
「おはようございます、ヤナト様!奥様!!」
うん、黒スーツの男性が30人くらいのいかつい人がいて並んでいて一斉に言った。完璧だな、教育が良いのだろう。
「おはよう、皆さん。」
「お、おはようございます。」
「おはようございます!!!!!!!ヤナト様!!!!!!奥様!!!!!」
うるさいうるさい。ほんとここの人はうるさくしないとだめなんか。並んでいる真ん中を通って馬車に乗り込んだ。ほんとにふわふわだな。馬車が出発すると並んでいた男性達も走り、護衛を始めた。怖え。
外は俺と同じ制服を着た幼稚園児がいた。ふふっ俺のほうがまだ似合ってるな。こいつらと過ごすんだな。そんなこと思っているうちに幼稚園へ着いた。御者の人に頭を下げられながら
「いってらっしゃいませ、ヤナト様、奥様。」
と言われた。ほんといい人たちなんだよな。
幼稚園の中に着いたら案内されて体育館へ入った。適当な椅子に座り、俺は母さんの膝の上に座った。周りを見たら泣いてる奴もいれば静かにしてる奴もいる。子供らしい光景が広がっていた。暇だから知らない子とそのお母さんの会話を盗み聞きしていた。
「かーえーりーたーい!!!帰る帰る帰るの!!」
同志がいた。そうだよな、ずっと家でだらだらごろごろしていたいよな。急にな、知らんやつと友達なれとか無理だろ!
「まだ幼稚園に入ってないでしょ?幼稚園には楽しいこといっぱいあるのよ?幼稚園から社会勉強しないと、小学校とかやっていけないわよ?」
「うう……分かった。」
幼稚園生にそれ教えるのはまだ早いんじゃねぇか。それとなんで納得すんだよ。理解力やばすぎる。
てかなんで俺は幼稚園、小学校、中学校、高校。そして大学は…中退だけど卒業したのにまた初めからやらないといけないんだよ……。人間観察をしているといつのまにかいっぱい人が集まり、前で園長先生が話始めた。
「皆様、ご入園おめでとうございます。今日入園する子供達は少し大人へ近づきました。大人へ近づいたと言いますと、私は最近髪の毛が抜けていってですね。」
長い無駄話が始まった。自分で自分のことを自虐している。初めて見たぞ、このタイプ
「ほんとに、どんどん大人になっていくのもいやだな〜、と思うこのごろですね。それと私息子がいましてですね……。」
終わりかけたのにまた始まった。次は息子の話だ。大学がどうの、成績がどうの。自分が息子に言ってやった名言も話していた。副園長先生がそれに見かねて遂に園長先生を止め、園長先生はどこかに連れて行かれた。若い先生が出てきた。
「園長先生に代わり、私がクラス替えを発表させていただきます。名前が呼ばれたら前に出てきてください。ではまず、イロナ組。ナロイド・カハサタちゃん。ミナロウ・ナライド君。………」
どんどん名前が呼ばれていった。今呼ばれている20人くらいの人は見た感じやばくはなさそう。イロナ組がいいな。
「イロナ組は以上です。続いて、ハナタ組。ナロード・サイロ君。………」
イロナ組ではないか。でも別のクラスでもきっと普通だ。そう信じよう。
「ヤガラス・ドグラス君。」
「しゃぁぁぁぁぁぁ!!!!俺はここにおるぞ!!!!」
「は、はい。元気ですねぇ、では前にどうぞ。」
よし、あいつと同じクラスにはなりたくない。と思ったら
「ヤナト・デュメイス君。」
あぁ、終わった。やばいやつと同じクラスになった。あ、でもでも人を行動で判断したらだめだよね。もっと人を見ないと!
道を通って歩いている時、大人のひそひそ話が聞こえた。なんだ?こっちみんなよ。俺の制服姿が似合いすぎて嫉妬してんのかな。ひそひそ話を耳を澄まして聞いてみたら。
「あの子、もしかしてルートイチの首領の息子か?」
「いや、たまたま同じなだけで違うかも。」
「でも、外にルートイチの紋章の馬車が止まっていたらしいぞ。結構その姿見た人いるし。」
なんだ、俺の制服姿が似合いすぎて嫉妬したんじゃないのか。そんなに有名なんか、この組織。いやだな、目立っちゃって。そう思ってるうちに列に着いていた。俺が列に着いてから10分くらいでクラス替え発表が終わり、それぞれのクラスに移動した。移動してすぐに
「では、好きな席へ着いてください。」
先生が言った瞬間に男子が走って色々な席に座っていった。座り心地を見ているやつ、先生にバレない位置を探しているやつ、椅子と机の素材を調べているやつ。最後変なやついたな。俺は……、おそこにしよう日当たりもよくて外がよく見えるし、目立たない。自分が狙った席の方へ歩いていき、椅子に手をかけると別の手がそこにはあった。




