↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

62/152

62.不良品のマリア様

こんばんわ。これで本日最後の投稿になります。次回は、5月18日(月)午後7時の投稿予定です。

とおるという名前と、極悪な黒真珠ブラックパールのイメージから、リーダーは男性、それもかなり気合の入った格好をしていると思っていた。

 

 でも、目の前の女性は、地味な黒のワンピースに、カラスの濡れた羽のような黒い髪を揺らしている。


 そして、真っ白な肌には入れ墨やピアスは一切見当たらなかった。


「ここまで来る奴が、私以外にいたとはね…」


 亨は私をまっすぐに見つめた。

 

「でも、それを待っていたんだ。麒麟を倒せる可能性のある奴が来るのを」


「それなら、亨さんご自身でいってはどうでしょうか。お仲間もたくさんいらっしゃるようですし。みなで突撃すれば、もしかして、倒せるかもしれませんよ」


 一応、亨とは初対面なので、敬語で応対した。


「もう、行ったさ。でも、軽くあしらわれてしまった。私は麒麟の真の姿さえ見ることなく、やられてしまった」


「なら、どうして生きているんですか?」


「それは、麒麟特有のきまぐれか、それとも地下の管理に役立つと思ったのか。いずれにせよ、私はまた地下に戻されて、労働をすることになった。それは、人間処分場で、最後の100人目をすることだった」


 地下では最強の亨に100人目を任せることで、麒麟は自分を脅かす者が地上に這い上がってくるのを防ごうと考えたのか。


 私はそう考えて、身構える。だとしたら、亨の仕事は、這い上がってきた私みたいなものを処分することなのだから。


 私はソウルセーバーを取り出して、発動させた。

 

「おや…、人の話は最後まで聞くものだって、ご両親に教わらなかったかい?」


 そんなこと言われても、話を聞く前に殺されてしまっては困る。


「私の願いは今でもただひとつなんだ。こんな腐った塔を作り上げた麒麟を倒し、人々を解放することだ」


「なら、私と一緒に行きましょう。こう見えても、結構強いんです」


 私はそっとソウルセーバーをおろした。でも、


「残念だか、そうはならない。まず、どちらかが奈落に落ちないと、出口は開かない。それに…」


 亨の体をかがめて、床に転がっていた大剣をとり、両手に持った。


「ここで私に倒されるような奴は、どのみち行っても無駄だってことさ!」


 地面を蹴って、飛ぶように接近しながら、亨は両手で、私に向かって大剣を振り下ろす。

 その軌道は一撃で私の首をはねようと動いているのがわかった。

 でも、町長との特訓の成果のおかげで、私には亨の剣は見えていた。


 すかさずソウルセーバーでガードした。

 しかし、亨はガードされた大剣から両手を放す。


 えっ、と思って亨を見ると、懐から小刀を取り出し、私の首を、ためらうことなく一突きした。


 ガチィンと金属音がして、首に激痛が走る。


──いきなり、殺す気だ。私がアンドロイドじゃなきゃ、今ので死んでた。


 予想外の攻撃に私は、亨から距離をとった。

 あてが外れたのは亨も同じだったようだ。


 亨は、折れてしまった小刀を不思議そうに眺めていた。


「おや? おかしいな、普通の人間なら、今ので殺せたはずなんだが」


「武器を隠しているなんて…、ずるい」


 わざとらしく床に落ちている大剣を拾ったのも、私に他に武器はもっていないと油断させるためだったんだ。

 なんて狡猾なんだろう。


 私が亨をにらみつけると、亨は笑い出した。


「武器の持ち込みが行けないだなんて、ルールはないよ。お前だって、そのソウルセーバーは私物だろう」


 言われてみればそうだ。これは命の取り合いなんだ。

 卑怯だの、ずるいのだの言っている場合ではないんだ。


「それにしても、お前、人間じゃないな…」


 亨の目はすべてを見通しているかのようだった。その目は私の首を見ていた。


 そっと触れてみたが、傷一つないようだった。だから、かえっておかしいのだ。


「だったら、どうなの?」


「アンドロイドは、再生の1年で、すべて鉄騎士団に破壊されたと聞いていたが、まさか、生き残りがいたとはな。そうか、お前が…、マリア様か」


 亨はそうつぶやくや否や、地面を蹴って、こちらに飛んできた。

 そして、亨は背中に手を回して、背負っていた剣を抜いた。

 そして、両手でそれを振り下ろす。

 その軌道は一撃で私の首をはねようと動いているのがわかった。


 すかさずソウルセーバーでガードしようとした。

 しかし、亨の剣は私の間近で二つに割れた。まるで割りばしのように。

 私は、片方を受け止めるのが精一杯で、反対側からの剣を横っ腹に食らってしまう。

 

 ステージの中央から、端まで飛ばされて、でも、なんとか踏みとどまる。


 見ると、最高の防御力を誇るはずの、いつもの制服が裂けて、脇腹から赤い液体がしみだしていた。

 この服と体に傷をつけることができるなんて、いったいあの剣はなんだろう。


「おやぁ…、まだ生きてたんだねえ…、さすがマリア様だ」


 よろめきながらも立ち上がる私をみて、亨は歓声を上げて、拍手した。


 今ので、大分エネルギーが削られてしまった。

 目の前のソウルセーバーの光も、だんだん頼りなくなっている。


「でも、このマリア様は、弱い。弱すぎる。不良品のようだ。なら処分しなくちゃな」


 時空転移ドライブが取り除かれた今は、たしかに不良品かもしれない。


 亨はなおも攻撃の手を緩める気配はない。

 両手に細身の剣を構えて、それをゆっくりと、鳥が羽を広げるように持ち上げた。

 それは、さながら悪魔が羽根を広げているみたいだった。


 亨の両手から繰り出される剣を私は必死で受け止め続けていた。

 

「ほう…、なかなかやるな。2度目の不意打ちで殺せなかったのが惜しまれる」


 実力を測るとかではなく、亨は私を殺したいのであった。やっぱり黒真珠のリーダー。甘くはない。

 でも、待っている知美のためにも、私だって負けるわけにはいかない。


「私だって、訓練を受けてきましたから」


「話す余裕があるんだな」


 亨は最後の仕上げであるかのように、両手の剣を同時に、私に振り下ろした。

 私はソウルセーバーを両手で持って、やっとのことでそれを受け止める。でも、手が痛い。


 私を地面に押し付けようとしている、魔女のような亨の顔が目の前に来た。

 ふと、私はひらめいて、亨の瞳を見つめた。

 現実でかなわないなら、さっきみたいに心を斬ろう。


 私の考えに気が付いたのか、亨はにやりとした。


「やってみな。無駄だからな」


そして私に向かって、目をそらすどころか、その瞳を見せつけるようにカッと見開いた。


──やってやる。後悔しないでよ。


(つづく)

ここまで読んでくれてありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。