第26話 ツインテールVSモヒカン
「どうしたの?」
周りを見渡す限りではミランとエルナはまだ帰ってきていないようだ。眠ってからそれほど時間は経っていないみたいだな。
「外が騒がしい。ちょっと見てみる」
ノーファは木製のドアを少し開き、膝をつき、外に顔を覗かせた。
僕もノーファに倣い、彼女の頭上に陣取り、外を覗く。
茜色に満ちている表の通りには、芦毛のユニコーン。その背にはフードがある茶系のマントを頭から被っている者。
ユニコーンの対面には『ジムニ』というバイクのような乗り物が3台。ジムニはタイヤがなく、マシンに散りばめられている魔石結晶に魔力を込めることで宙に浮かび、走る乗り物だ。
ジムニから降り立つ3人は見たことのある黒ずくめの衣服を纏っている。
あれは……!?
「ようやく観念しやがったか。しかし、ジムニと張るスピードとはなかなか有能なユニコーンだな。お前を殺して、そのユニコーンを戦利品としていただくか! 俺の部下を何人もやってくれやがって!」
金髪のモヒカンに刈り上げている、黒ずくめの男が怒りをぶちまけた。
「あんたらがあんなとこで不穏な動きしてたからやん」
「なんだその声、お前女か? 」
「こんな世にも美しい声聞いといて、女か? ってナンセンスな質問やわ~。いや~、モヒカンからして下っ端感丸出しやん」
「くっ! このクソアマがー! お前も戦利品にして、死ぬより酷い屈辱をあわしてやる! もう逃がさんぞ!」
「別に逃げたわけちゃうで。あんたらに逃げられたら困るさかいに、ここまでおびき出したってんやん。なあカザマツ」
女はユニコーンに同意を求めるようにタテガミを撫でた。
「へらず口を! さっきは不意をつかれたが、今度はそうはいかん。やれ! お前ら!」
モヒカンの指示のもと、残り二人の黒ずくめが馬上の女に襲いかかる。黒ずくめ二人はレベルブルーだ。
僕は危ないと思い、咄嗟に出ようとしたが、ノーファが制止する。
何故と思い、ノーファに目をやった瞬間に雌雄は決していた。襲ったはずの黒ずくめ二人が地に伏していたのだ。
女は馬上から微動だにしていない。
「な……何者なんだ!? お前は!?」
「あっちゃあ!」
女はしかめ面をして、自分の額に手を当てた。
「完全にやられキャラが発する言葉やんそれ」
「くそ!」
そう吐き捨てて、モヒカンは慌ててジムニに乗ろうとする。力量差を悟ったようだ。
「逃がすわけないやろ」
背筋が凍りつくような冷たい呟き方。
女はフードマントを脱ぎ捨て、馬上から飛び降りた。
姿を現したのは淡い青い髪をツインテールに縛り、パチクリとした大きな猫目が印象的で、良い言い方をすれば活発そうな、悪い言い方をすれば、やんちゃそうな顔立ちの少女だった。僕らと同じように、旅の出で立ちをしている。そして、緑色した尻尾が露わになる。
「氷の芸術」
瞬く間にジムニごとモヒカンを氷漬けにした。
あれだけのものを瞬時に凍らせるには、かなりの魔力を要するだろう。それをいとも簡単にやってのけるとは……。
たとえモヒカンがビビりすぎて魔装をするのを忘れていたとしてもだ。
あの魔力、ノーファに匹敵するんじゃないか!?
「凍っても目障りやな。消えてや」
青髪の少女は氷モヒカンに向かって、拳を放つ。まさに容赦ない一撃! 粉々になる氷モヒカン。彼の息の根は完全に止まった。




