第25話 トラウマ
「くそ! またやられちまった」
奴がゲーム機を怒り任せに叩いて言った。
「しゃーねぇなあ。次は違うキャラ使うか。ってことで、神月ちゃ〜ん、軍資金よろしく〜!」
何とも軽々しい口調。
「い、今のが最後だよ。もう用意できないよ……」
「は?」
彼は恐ろしく冷たい表情になる。
「だ、だからこれ以上は」
「なんだお前、いつからATMのくせに口がきけるようになったんだ。ATMは黙って金を吐き出せばいいんだよ! それとも、なんだ、このATMは殴らないと出ないのかな? なあ、お前ら」
彼の取り巻きの三人がにやにやする。
「がはっ」
急に下腹部に衝撃が走った。
「あれ〜出ないな〜、故障かな? もう一発いっとくか」
「ちょ、やめ……」
「あれ? また喋った。やっぱり故障だな」
今度は左頰に痛みがはじけた。平手打ちを受けたのだ。
「早く出さないと、壊れちゃうよ〜」
「でも、ほんとにもうないんだよ!」
「だったら、家からでもかっぱらって来いよ! それとも、またみんなの前で服ひん剥かれたいのかな?」
奴らは要求を拒否すれば拒否するほど、仕打ちを強化していく。まるで永遠に続く拷問のように。
「……わかったよ」
結局、僕にはこう答えるしか選択肢がないのだ。
「じゃあ、早く行けよ! 戻って来なかったらわかってるよな?」
僕は悔しさと情けなさから、泣きながら家路に向かった。
「アレル! アレル!」
「はっ!」と僕はその声で目覚めた。
ノーファが心配そうに、僕の顔を覗き込んでいる。
「すごくうなされてたが、大事ないか?」
なんだ夢だったのか。頭の中にこびりついている恐怖でしかなかった出来事が、夢として鮮明に現れた。眠る前に奴の事を少しでも思い出したからだろうか。
これがトラウマと呼ばれるものだろうか。
「アレル?」
心配そうに僕を見つめるノーファ。
汗でインナーが湿り気を帯びており、居心地が悪い。
「あ、ああ、大丈夫だよ」
速くなっていた心臓の鼓動が次第に収まっていく。
「それなら良かった。あと、それと……」
ノーファは椅子から腰を上げて、入り口の方へ向かう。




