Prologue:ネバーエンディング・レイン
青き空を拝めない人たちは、何を見上げて生きるのだろう。
灰色の空は、何を思って僕らを見下ろすのだろう。
神様がいるとしたら、こんな彼らを哀れに思うのだろうか。
故に。
この空の支配者は神でも、鳥でもなく、雲であり、雨だ。
決して止むことのない雨と決して流れることのない雲。
人々はそんな空は悲しいだけだと言う。だが本当にそうだろうか。
これが彼らの飛ぶ空であり、唯一絶対の空間だ。
そうだ。ここは、止まない空。
ネバーエンディング・レイン。
一筋のジェット音がこだまする。
雲をまとい、されど雨を置き去りにして。
真っ直ぐ突き進む音には影が宿る。熱い雲から躍り出る戦闘機。
アフターバーナーの炎を引いて、一筋のジェット音を奏で行く。そこから見える空は青空か。いや、これはノズルの青い炎が作り出す幻影なのだ。音速で生まれては消える青空。
「あの空を飛びたくないか」
その声は、悪魔の囁きか。天使の誘いか。ワルキューレもここにはいない。
ゆっくりと空に手を伸ばす。
これが自分たちの空ならば、それだけで十分だ。だが空を飛ぶには翼がいる。戦う為の。何の為かは重要じゃない。ここを飛びたい。ただそれだけの願いから。正義や大義は、それから考えよう。
「飛ぶよ」
答えを返す。誘いの主は、そこにはいない。
ジェット音が目の前で響く。黒い翼が現れた。
その名は、ドラケン。




