二話 間引かれスライム
遅くなってすいません
……悲報がある。
スライム海グループ。改名してスライムマリン隊が全滅した。
器用に体を魚の形状にして泳ぐスライムたち。それを餌だと見たのだろう。巨大なクジラが大口を上げて海水ごとスライムを吸い込んだのだ。
レベルが一のスライムたちには到底太刀打ちできるはずもなく、食べられて体力全欠損。お亡くなりになった。
……南無。
「まあ、気を取り直して、まずどれだけレベルが上がったのか見てみようか」
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レベル 3→45
体力 140→980
魔力 140→980
攻撃 7→123
防御 9→89
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体力と魔力の上昇は規則的だが、攻撃と防御の上がり方は変則的で予測できない。
「あ、次のスライムマリン隊を補給しないと……」
スライムの設定場面に移る。
「そういえば、どんなスキルが手に入っているのかな」
いつも通りスライムのレベルを一に設定し、スキル設定の画面を表示する。すると、大量のスキルが現れたので、検索機能を利用することにした。
欄に『水中』と打ち込んで検索を実行する。
『水泳 cost1 墨吹き cost1 水切り cost2』
この3つが表示された。意外に少ないと思ったが、スライムたちが捕食していたのは虫や魚という小生物のみだったから納得だった。
水切りは攻撃スキルで、水中の敵に遠距離で斬撃を飛ばせるらしい。しかし、これは別に必要ない。スライムには相手を捕食してもらいたいから。
そういえば、あれからいろいろ確かめたところ、スライムには吸収タイプの捕食、採集タイプの捕食があることに気が付いた。吸収タイプで捕食すると経験値やスキルを手に入れることができるが、代わりに素材は消えてしまう。採集タイプの捕食では、経験値やスキルは得られないが素材を手に入れることができる。
しかし、死んだ相手を捕食してもスキルが得られない。だから、できるだけ五体満足の状態で捕食したい。
だから、水切りは付加せず、最初と同じスペックで召還することにする。百体。
できるだけ海に近寄って召還した。せっかく作った砂の城をまた壊されちゃたまらないからな。
……なんだか寒くなってきた。
ふと海の向こうに視線をやると、太陽が赤くなって水平線に差し掛かっていた。これから暗くなるというのに、服も、住居もないことに気が付く。
「弱ったな。何かいいスキルは無いかな」
三十ほどのスキルの羅列に目を通す。すると、『発光 cost5』を発見した。提灯アンコウを捕食して手に入ったスキルみたいだ。
一匹召還する。召還したときはほかのスライムと変わりなかったが、光れと念じると光りだした。便利だ。
これで日が暮れてからも行動できるようになったが、まだ服も住処もない。何一つ問題は解決していない。
そこで、僕はある三十匹のスライムを召還する。
「ええと、そこに列を作って、四角に囲ってね。よし、じゃ、『石化』」
シーラカンスからとれた石化スキルを付与したスライムたちだ。シーラカンスは石化じゃなくて化石な気がするがまあいい。
多少無骨だが、スライムで家を作ることにする。指示を頭の中で出すと、思い通りに家が出来上がっていく。面白い。
出来上がった家を眺める。小さな小屋ほどの大きさだが、一晩なら何の支障もない。今日は正直眠いから中で裸のまま寝てしまうことにする。
スライムを布団にして暖を取り、天井に発光スライムを張り付けた室内は思ったより快適で、疲れていた僕はすぐに眠ることができた。