一話 スライム大量発生
大陸というより島だな。
僕が異世界に来て初めて持ったのはそんな感想だった。
島の中央にある森、それを囲むように白砂の海岸線が続いている。しかし、あまり広くはなさそうだ。
着ているものはない、ゆえに、裸。せめて服くらいほしかったとぶつぶつ言いながら、僕は探索を開始した。
「あ、でもまず自分ができることの確認はしたいな」
呟くと、空中に青白い画面がぶぅんと現れた。
「はは、何でもありか。えっと、何々……」
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柳瀬 春
年齢 18
レベル 1
体力 100
魔力 100
攻撃 1
防御 1
ユニークスキル
スライム使役
パッシブスキル
経験値2倍(スライムに限り4倍)
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うーん。良いのか悪いのか僕にはわからない。
経験値二倍の時点で良いともいえるのか?でも、スライム使役は雑魚スキルらしいし、微妙だ。
「ん?スライムいないときはどうすれば?」
顔からさーっと血の気が引いていく。雑魚スキルだって、上手に使えば化けると信じていたのに、それを使うことすらできないとは酷じゃないか。
「スライム!」
とりあえず叫んでみた。
反応は、例の青白い画面から返ってきた。
『スライムを召還しますか?ステータスの設定をしてください』
召還することもできるらしい。スライム使役って書いてあるから焦った。だけど、さすがにタダじゃないよな。そう考えながら画面を適当に操作していくと、確認画面が現れた。
『Lv.1 スライム NoSkil cost1 』
画面下の召喚ボタンをタッチする。すると、目の前の砂浜に魔方陣が現れ、スライムが光の粒が集まって姿をなした。
見た目は、思っていたより可愛くない。理科の実験で作るような無骨な奴だ。けど、うねうねと動いているから命ある生物なのは間違いない。
そういえば、cost1 というのは魔力のことだった。さっきステータスを確認したら魔力が99になっていたから間違いはないと思う。
とにかく、量産しておいた。さっきのと合わせて100体。半数は海に、半数を森に出征させた。
その動く姿は圧巻だった。これが意外と早いのだ。50メートル走で7秒台は固い。
海に入っていったスライムはクラゲのようにぷかぷかと浮いていた。ここから右へ左へと念じると従うから面白い。
森に行く奴らに木に登るように命じるとこれにも従う。面白い。忠実な仲間ができたみたいで。
正直、僕は前世じゃ人付き合いが苦手だったからここは気楽でいい。スライムとこのまま一生というのもいいものかもしれない。
しかし、それはダメだ。僕は人と話すのは億劫だが誰かと話さなくては退屈で死ぬ。そんな面倒くさい精神の持ち主だからな。
砂浜で砂のお城を作っていると、急に画面が現れた。
『レベルが上がりました』
「え?」
ステータスを見るとレベルがアップし、さらに魔力が全回復して、さらに120まで増えていた。
よくわからないながらも、スライムをついでにまた100体ほど生み出して海と森に分けて向かわせた。
スライムがせっかく作った城を破壊しながら行軍する。涙をこらえながら画面を見ると、新たな文字が書かれていた。
『従魔AKが海虫を捕食しました。経験値3 獲得スキル 水泳 毒針』
……何の意味もなく出征させたスライムが手柄を上げてくれたらしい。ありがたいが、とまどう。
ステータスを見ても僕のスキルに水泳、毒針の追加はなかった。スライム作成画面に行くと、さっきまで空欄でスキップしていたスキル設定の枠に水泳と毒針を追加できるようだった。
海に向かわせたスライムA~AX,CW~ETに水泳を付加できるようだ。しかし、cost100必要らしく、今の魔力では足りない。
次のレベルアップを待とうと再び城を作りながら待つ。土台ができるより前にまた通知が来た。
「あ、また魔力が回復している。140か。魔力は20ずつ増えるのかな?」
独り言で軽く孤独の寂しさを紛らわせて、海グループスライムに水泳を付加した。その途端、ぷかぷか浮いているだけだったスライムが潜水を始めた。100匹のスライムが一斉に海に潜る姿は壮観だ。きれいではないが。
ここら辺の生物が逃げてしまっても困るので海岸線から離れろと念じると、海を泳いで行ってしまった。もはや見えなくなったスライムにとまれと念じる。すると、また青白い画面が出てきた。
「これは?」
怪訝に思いながらも画面中央の丸の中に三角が入ったボタンを押す。
すると、画面が切り替わって大量の粘体が魚のように泳ぐ奇妙な光景を映し出した。まぎれもなくさっき放したスライムたちだろう。自由に視点も操作できるらしく、画面をずらすと俯瞰することもできた。不思議だが、そういうものなのだと納得することにする。この世界の海はきれいだから、アクアリウムのようで落ち着く。
「すごいなぁ。これで☆一何て……」
ほかの召喚者の能力は少なくてもこれより有用なのだろう。そう思うと、怖くて仕方がない。
「まあ、自分の身は自分で守れるように強くなろうか」
改めて決意すると、僕はスライムたちにある命令を出す。多分具体的に指示を出したほうが、捕食してくれる率も上がると思うから。
捕食してくれと、海の中のスライムたちに向けて念じる。画面に映っていたスライムたちが海底にへばりつきだした。途端、
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』……
「うわ」
画面を埋め尽くさんばかりの文字が躍る。スライムたちの英姿が見えない。
捕食で得たスキルも多すぎて確認が面倒くさいレベルだ。まあ、また後で確認すればいいか。
むむ。それよりも、僕はまず衣食住をどうにかしなければ。
僕は、森に向かわせたスライムたちの様子を確認するため、画面を操作する。
文字の通知はオフにできるようなのでオフにして、海のスライムたちにはもっと遠くへ行くように命じた。ついでに捕食命令も出しておいたからレベルアップもできる。
森のスライムたちの様子は、特に命令を出さなかったからか、だらけていた。木にぶら下がっているスライム、地面で追いかけっこするスライムたち、自由だな。
あ、木の実発見。
一匹のスライムがぶら下がっている木。そこには赤い果実がいくつも実っていた。スライムの一匹に捕食するように命じてみる。もしあれを食べるにしても毒があるか確かめないといけないからな。
スライムが果実を一つ体の中で消化してしまった。すると、画面に写真とともにさっきの木の実の詳細が表示された。
『アプの実 ☆4 ▶成分表を表示する』
成分表を表示するというボタンを押すとビタミンやらなんやら大量の情報が表示されたので閉じておいた。毒はないらしいので食べられそうだ。
スライムに持ってくるよう念じようとすると、初期画面の右下でカバンのアイコンが点滅していることに気付く。
押してみる。
『NEW! アプの実×1』
……なんでもありだなぁ。
アプの実という文字をタップするとスライム召喚の時のように光が集まって赤い果実が現れた。能力のむちゃくちゃさにあきれる反面、やはりうれしい。同時に、他の召喚者に与えられただろうより有用な能力の恐ろしさに震える。
相手を倒してそのスキルを得られるなら僕を殺しに来るということも十分に考えられる。召喚者は一枚岩じゃない。僕を捕まえようと考えるやつもいるだろう。
リンゴのようなアプの実をかじりながら、強くならなくてはと再度決心する。




