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転移したら賢者、転生して魔王の息子になりました。  作者: 雪国竜
第1章

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西園寺から見た戦場

 王都を出発し、竜騎兵団と共に南へ向かう。

 乗馬訓練は受けていたが、竜に乗る訓練はまだだ。

 だから俺達は馬で進軍している。

 軍馬とはいえ、竜騎兵団の亜竜と比べれば速度は雲泥の差だ。

 彼らはわざわざ俺達に歩調を合わせてくれているが、内心では不満が溜まっているのが見て取れた。

 戦場へ急ぎたい彼らにとって、足の遅い異世界人の同行は足枷でしかないのだろう。

 俺はその気持ちが分かるから何も言わない。

 が、クラスメートの約一名は違った。

 もちろん、天城だ。

「まったく! 馬に乗ったことすらなかった俺達に、『遅いので後続部隊に回れ』だと? 召喚しておいて、肝心な場面では不要ってことかよ!」

 手綱を器用に操りながら、口だけは絶好調で文句を垂れ流している。

 実際、俺達が遅いのは事実だ。後続部隊には補給部隊もいる。守りを固めるためにも、俺達がそこに回されるのは妥当な判断だ。

 それにしても竜騎兵団は名に違わず強力だ。

 戦闘部隊は竜に騎乗し、補給部隊ですら四足の亜竜(ロングネックドラコ)を使役している。

 ブラキオサウルスのような姿で全長五メートル。大人しく力持ちで、荷運びや陣地構築に重宝されているらしい。

 その巨大な首元に鞍が取り付けられ、騎士が手綱で操っている。

(いつか乗せてもらえないだろうか……)

 そんなことを考えていた時だ。

 ブオォォォッ。

 突然、低く響く音が戦場に広がった。

「何だ、この音は?」

「敵襲を知らせる角笛です!」

 近くの兵士が叫び、俺達も即座に武器を構える。

「敵が来たぞ! 全員、備えろ!」

 俺の声に皆が驚きながらも訓練通り武器を構えた。中には落とす奴もいたが、すぐに持ち直した。

「いよいよだな。大丈夫だ、皆は俺を援護すればいい。後は任せろ!」

 天城が剣を抜いた瞬間、刀身が陽光を浴びて白く輝き、まるで太陽そのもののように光を放つ。

 彼の剣はこの国の聖剣『聖輝光《ブリリアント・シャイニング》の剣(・ブレード)』。

 鎧は『法(ローウ)の鎧(メイル)』、盾は『正義(ジャスティス)の盾(シールド)』。

 三つ合わせて三神聖具《トリニティ・マテリアル》。

 白く光り輝くその装備は、天城にこれ以上なく似合っていた。

 ……目立ちすぎて敵の標的になっているのは笑えないが。

 土煙の向こうから、鬼人族が突進してくる。

 上半身裸に獣皮の腰巻き。まるで昔話の鬼そのものだ。

 ただし、手にしているのは金棒ではなく斧や剣だ。

「グウウウッ!」

 鬼人族が斧を振りかぶり、俺に迫る。

 剣で受け止め、返す刀で斬り返すが、軽く身をひねってかわされた。

 筋肉の塊のような体に似合わず、動きが速い。

 戦闘に集中し、周囲を見る余裕がなくなる。

 ようやく敵を斬り倒し、息をついた頃には戦況が落ち着き始めていた。

(……人型の敵を斬るのは、やっぱり気が重いな)

 そんな考えを振り払い、周囲を確認する。

 兵士達は踏ん張り、クラスメート達も必死に戦っている。

 危なくなると。

「セイッ!」

「グボッ!」

 天城が白銀の光を引きながら敵を斬り伏せ、クラスメートを救っていた。

「大丈夫か?」

「あ、ああ……助かった」

「無理はするな。危なくなったら下がれ」

 そう言ってまた別の敵へ突っ込んでいく。

 本当に特撮ヒーローみたいな奴だ。

 敵は数が少なく、このまま押し切れる――そう思った矢先。

 ピイイイイイイィィィッ!

 甲高い音が響き、鬼人族が一斉に撤退を始めた。

 撤退の合図だろう。俺達は追わず、被害状況の確認に移る。

 のはずだったのだが。

「敵が退いた! 追撃するぞ!」

 天城が馬を走らせ、数名のクラスメートが続いた。

「馬鹿野郎! 追うな! 戻れ!」

 俺の声は届かない。

(だから、あいつと同じ部隊は嫌なんだ……!)

 歯ぎしりしながら、俺は部隊長へ報告に向かった。

 部隊長は状況を理解し、百騎の護衛部隊を付けてくれると言う。

 ありがたい申し出に礼を言い、俺は亜竜に乗って追撃組の捜索へ向かった。

 数十キロ進んでも、天城達の姿はない。

「あいつら、どこまで行った……」

「まだ遠くへは行っていないはずです。周囲を探しましょう」

 分隊長――男装の麗人の騎士――が指示を飛ばす。

 真面目で礼儀正しい、頼れる人だ。

 やがて分隊の一人が駆け寄ってきた。

「分隊長! この先の森で火災が発生! 異世界人達が取り残されています! さらに敵部隊が包囲中!」

「まずい……! 付近の分隊を集めろ! 救援に向かう!」

「はっ!」

 撤退は偽装だったのか。

 俺も見抜けなかった。

 だが反省は後だ。今は救援が先。

(……こんな時、猪田がいたらどうしていただろうな)

 そんなことを思いながら、集結した分隊と共に森へ向かう。

「ここまで来たんだ。生きて帰って、俺に殴られろよ――天城」

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