第53話 戦場へ移動中
王都を魔法師団と共に出発した僕達は東に向かう。
このまま進軍ペースだと、あと二日ほどでリュミエル城に着くそうだ。
僕は幌馬車に揺られながら、その説明をカドモスさんから聞いている。
「敵も我らとそれほど変わらない進軍速度だと思いますので、このリュミエル城近辺で戦争が始まると思われます」
「敵の編成は分かりますか?」
「まだ情報が入って来ないので、どのような編成かは分かりません」
「そうですか」
まぁ、今回はちょっとした物を大量に準備したので、勝つ確率はかなりあると思う。
戦争に絶対はない。だから、少しでも勝つ確率を上げる為には情報が欲しい。
「敵の情報を得ると同時に、城近くの土地を調べてくれませんか」
「土地をですか?」
「土地の勾配とか、どこに森があるか、その森がどれだけ深いのか、川があるのか、それらを調べてくれると助かります」
「地勢を使って戦争をするという事ですね。分かりました。手配しておきます」
「お願いします」
僕は伝える事を全て言ったら、幌にもたれる。
「お疲れ様、猪田君。お水だよ」
椎名さんが水の入った皮袋を差し出してきた。
それ、さっき椎名さんが飲んでいたのでは?
「ノブ、こっちは柑橘類の汁で味付けた水だ。ただの水よりも、こっちの方が喉の渇きが潤うぞ」
ユエも皮袋を差し出す。
腰にもう一つあるのを見ると、自分用と予備と二つあるようだ。
「張さん、わたしが先に渡したのだから、わたしのを飲むべきよ?」
「そっちはただの水だろう? わたしのは味が付いているのだ。美味しい方を飲ませた方が良いだろう」
二人は僕を挟んで睨み合う。
王都を出てから、こうして睨み合うのは何度目かな?
僕が宥めるとすぐに止めるのだが、少ししたらまた始めるので、正直疲れる。
これでマイちゃんが居たら、もっと酷くなっていただろう。
馬車に乗る際、何人かに分かれて乗って下さいと言われたので、皆とじゃんけんをして別れた。
で、僕はユエと椎名さんと一緒に乗る事になった。
マイちゃんは村松さんと一緒に別の馬車に乗っている。エリザさんもそちらに乗っている。
なんで、こうなるのか分からないな。
そんな思いを抱きながら、僕はどうしたものかと悩むのであった。
休憩時間になると、マイちゃんが僕の所に来て移動中に何があったのか聞いてきたので、話した。
すると、マイちゃんが「あたしもそっちに乗るっ」と言い出した。
我儘言わないでほしいと思いつつ、宥めても聞き入れてもらえなかった。
仕方がなく僕達の馬車に乗る人たちを変わってもらった。




