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転移したら賢者、転生して魔王の息子になりました。  作者: 雪国竜


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第12話 ダンスって意外に難しい

 アウラ王女様と共に広間の中央に来た。

「あの、僕はダンスというのをしたことがないので」

「大丈夫だ。わたしがリードする。そなたは、わたしに動きを合わせれば良い」

「お願いします」

 アウラ王女様が音楽に合わせて動くので、僕もその動きに合わせる。

 貴人なので、足を踏まないように下へ目を向けていたら――

「下を見るな。視線は真っ直ぐにしろ」

「は、はい」

 そう言われて、顔を上げて王女様の顔を見るようにする。

「腰は真っ直ぐに伸ばせ。そんなへっぴり腰では、変に思われる」

「次は右に動け。次も右だ。今度は左。これを繰り返せば良い」

「右手は腰のこの位置で掴む。そうだ、あまり力を入れるなよ」

 何か、一緒に踊っているというよりも、ダンスの稽古をしている気分だ。

 仮面をしているので怖い人かと思ったが、意外に優しい人なのかもしれない。

 そう思いながら王女の顔を見ていると、背筋にゾクゾクと悪寒が走る。

 踊りながら、僕は悪寒の原因を探す。

 そして、すぐに分かった。

 椎名さんとユエとマイちゃんが、すっごい怖い目で僕を見ている。

 というか、三人の背後から虎やら竜やら夜叉が見える。

(あれ⁉ 三人ともこの世界に来てから、何か守護霊でも憑いたの?)

 そう思えるくらいに、ハッキリと見える。

「ふっふふ、どうやらそなたの仲間が大層お怒りのようだ」

「ははは、はい。何であんなに怒っているのか、僕にもサッパリ分かりませんが」

「……そなた、鈍感とか言われないか?」

「いえ、別に」

 そう言えば、友人の黒川が「お前はどこぞのラノベの主人公か⁉」と言ってたな。

 意味わからないけど。

「そうか。そろそろ音楽が止むから、それで終いにしよう」

 王女様がそう言うので、僕は終わるタイミングを王女様に合わせながら踊る。

 そして音楽が止むと、王女様が踊るのを止めて右手を差し出す。

 何かのドラマで見たことがある。確か、舞踏会で踊り終わったら女性の手にキスをするはずだ。

 僕は跪いて、王女様の手を取りキスをした。

「っっ⁉」

 なぜか、キスされた王女様が驚いた空気を出す。

 顔は仮面で隠されているので分からないが、雰囲気で察した。

 王女様はすぐに気を取り直して、素早く身を翻す。

 そして、自分の取り巻きのところに戻った。

(ダンスって意外に大変なんだな・・・・・・)

 そう思っていたら、突然、腕を引っ張られた。

 誰が僕を引っ張ったのだろうと思い顔を向けると、椎名さんだった。

 椎名さんが引っ張った先には、ユエとマイちゃんがいた。

「猪田君、どういうことか説明してくれる?」

「ノブよ。浮気をするなら構わないし、愛人や現地妻などを作っても構わないが、こういう場ではまず最初にわたしと一緒に踊るのが筋だろう?」

「ていうか、あの人誰? ノッ君とどこで知り合ったの? 名前は?」

 三人が後ろに守護霊を従わせながら、僕に訊ねてくる。

「えっと、第一王女様としか、僕は知らないんだけど」

「「「第一王女⁉」」」

 三人が口を揃えて言い、親の仇を見るような目で王女様を見る。

 そんな視線をぶつけられても、王女様は平然としていた。

 だが、王女様の周りにいる取り巻き達はそうはならず、そちらもこっちをすごい目で見ている。

「け、喧嘩は止めようよ」

 僕がそう言っても、三人は聞く耳を持ってくれない。深く溜め息を吐いた。

 ここは僕が三人を宥めないといけないと思い、三人を踊らないかと誘う。

 先程、王女様に色々と注意されながら簡単なステップを見て学んだので、下手なりには踊れるはずだ。

 僕がそう言うと、三人は関節の稼働限界を超えているのではと思えるくらいに首を動かす。

 そして互いを牽制しだす。

 自分が一番だとアイコンタクトをしている。

 ここは僕が決めた方が良いと思い、最初はユエにした。

 ユエは親の仕事で、こういう舞踏会をするパーティーに参加したことがあると聞いたことがある。

 なので、まずはユエと踊ってそこで弾みをつけて、椎名さん、マイちゃんの順で踊る。

 僕がユエを選ぶと、ユエはすっごく喜んで、他の二人に鼻を高くする。

 二人は悔しそうな顔をするので「後で踊るから」と言うと、すぐに嬉しそうな顔をする。

 今度は逆にユエが不満そうな顔をしてきた。

 僕はユエを宥めながら踊る。

 ユエと踊るのが終わると、休む間もなく椎名さん、マイちゃんと踊る。

 結局のところ、三人は一度踊っただけでは足りないようで、その後も何回も踊らされた。


 **************


 やがて夜が来て、宴は無礼講の様相を見せてきた。

 クラスメート達も半分は早々に宴から抜け出し、用意された部屋に引っ込んだ。残り半分は宴の中に取り残され、貴婦人達に捕まっていた。

 僕はというと、部屋に戻っても寝るだけなので、広間の隅でアスクレイ侯爵と話をしていた。

 ちなみに椎名さん達も僕と一緒にいる。

 何でも「また女性に声を掛けられるかもしれないから」だそうだ。

 アスクレイ侯爵は博識な人で、この世界のことを色々と教えてくれた。

 その中でも、魔法のことを聞けたのは運が良いと思った。

 この世界の魔法は、精霊と契約することで使える『精霊魔法』、神を信仰することで使える『神聖魔法』、身体に特殊な顔料で刺青を入れることで使える『紋章魔法』、そして契約した精霊や魔獣を呼び出す『召喚魔法』の四つがある。

 中でも面白かったのが、神聖魔法だ。

 この魔法は暗黒神を信仰していたら『神聖暗黒魔法』という魔法を使えるそうだ。

 神聖なんだか暗黒なんだか、よく分からないな。

 僕もただ話を聞いているだけではなく、僕達の世界のことを色々と話した。

 このアスクレイ侯爵という人と話して分かったのは、この人は知識に貪欲だということだ。

 僕は夜が更けるまで、話し明かした。

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