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転移したら賢者、転生して魔王の息子になりました。  作者: 雪国竜
第2章

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第1話 目覚めると、そこは⁉

 暗い闇の中で、僕という意識がゆっくりと形作られていく。

 そして、自分が何者だったのかを思い出した。

(そうだ。あの時、僕は……。でも、体は動くのか?)

 まだ目は開けていないが、腕や指を動かした感触はある。どうやら体は存在しているようだ。

(僕が死んだ後、死者蘇生の魔法でも開発されたのかな?)

 だが、妙な違和感があった。

 それを確かめるため、僕はゆっくりと目を開けた。

 視界に映ったのは、見覚えのない天井だった。

 首を動かして周囲を見回すと、自分が小さな揺り籠の中にいることが分かった。

(どうしてこんな所にいるんだ?)

 状況が理解できず立ち上がろうとしたが、思うように体が動かない。

 不思議に思って自分の体へ視線を落とし、僕は固まった。

 そこにあったのは、赤ん坊の体だった。

(えっ……?)

 何度見ても見間違いではない。

 小さな手も足も、どう見ても赤ん坊のものだった。

(も、もしかして……僕、赤ん坊になってるのか!?)


 驚いていると、部屋のドアが開く音がした。

 誰かが入ってきたらしい。

 身構えながらそちらを見ると、一人の女性が姿を現した。

 その女性は人間ではなかった。

 雪のように白い肌。白銀の髪。その髪の間からは赤い角が覗いている。

 真紅の瞳はわずかに垂れ気味で、どこか優しげな印象を与えていた。

(魔人族!?)

 つい先ほどまで魔王軍と戦っていた身だ。魔人族の姿を見た瞬間、思わず体に力が入る。

 だが、女性はそんな僕を警戒する様子もなく覗き込んできた。

 そして、おもむろに指を伸ばし、僕の頬をつつく。

 ぷに、と頬が押される。

 それが面白いのか、彼女は笑顔を浮かべながら何度も僕の頬をつついた。

「ふふっ、可愛い」

 初めて女性が口を開いた。

 その後、彼女は僕をそっと抱き上げる。

「はぁい、いい子でちゅね〜。ウーちゃん、お姉ちゃんが高い高いしてあげまちゅね〜」

 そう言いながら、僕を頭上へゆっくり持ち上げた。

 赤ん坊を喜ばせようとしているのだろう。

 高い高いをされながら、僕は自分の状況について考える。

(今の体を見る限り、僕は小さくなっている。考えられるのは、某少年探偵みたいに体だけ縮んだか、それとも転生して赤ん坊になったかだな)

 もっとも、どう考えても後者だろう。

 生前、僕は魔人族に知り合いなど一人もいなかった。

 その点を考えれば、僕は魔人族として転生した可能性が高い。

(転生したというなら、僕が死んでからかなり時間が経っているはずだ。まずは今の状況を把握しないとな)

 そう考えていると、女性が高い高いを止め、僕の顔をじっと覗き込んだ。

 そして次の瞬間、ぎゅっと抱き締められる。

「う〜ん、可愛い〜! もうっ、赤ん坊の頃からこんなに可愛かったら、大きくなったら女の子をみんな虜にしちゃうわ〜」

 女性は上機嫌に頬ずりしてくる。

 それって女たらしというより、魅了魔法でも使っているんじゃないだろうか。

 というか、僕はまだ赤ん坊なんだけど。

 そんなことを考えていると、再びドアが開いた。

「フェル! いつまでそんなことをしている!」

 そう言って入ってきたのも女性だった。

 白い肌に金色の瞳。腰まで届く紫色の髪。

 鋭い眼差しと、額と耳の上から伸びる四本の角が印象的だった。

「訓練の時間だというのに、どこへ行ったのかと思えば、こんな所にいたのね」

「ああ、イザドラ姉さん」

 フェルと呼ばれた女性は、僕を抱いたまま振り返る。

「いい加減、リウイを下ろしなさい」

「ええ〜。いいじゃない。こんなに可愛いんだから」

 いや、本当にそろそろ下ろしてください。

 力は強くないけれど、胸が押し付けられて息苦しい。

 というか、このイザドラさんもなかなか大きいな。

「いいから早くしなさい」

 そう言うと、イザドラはフェルから僕を半ば強引に取り上げた。

 そして慣れた手つきであやしながら、揺り籠へ戻してくれる。

「むぅ。イザドラ姉さんのケチ」

「文句はあとで聞いてあげます。ほら、行くわよ」

 二人が部屋を出ていくと、室内は再び静寂に包まれた。

 どうやら僕は、魔人族として生まれ変わったらしい。

 どんな家族なのかは、そのうち分かるだろう。

 そんなことを考えながら、僕は再び眠りへと落ちていった。

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