↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転移したら賢者、転生して魔王の息子になりました。  作者: 雪国竜
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
130/144

閑話 記録

 青園視点。


 異世界での帰還を果たした私達が着いたのは、転移した時に居た教室だった。

 その教室は、無人で使われている様子が無かった。

 それでも、生徒達は皆、久しぶりに見る教室を見て懐かしそうに顔を綻ばせていた。

 徐々に帰って来た事を実感しだし、涙を流して喜びを分かち合った。

 泣き声が聞こえたのか、廊下に歩いてくる音が聞こえてきた。

 扉の前に来ると、何か探る音をした後、ガチャリと音を立てた。

 直ぐに扉が開かれた。

 そうして見えたのは、教頭先生だった。

「・・・・・・え、貴方は青園先生?」

「教頭。お久しぶりです」

 前々から頭頂部が寂しかったが、久しぶりに見ると余計に寂しくなったように見えた。

 余程苦労されたのだろうなと直ぐに分かった。

 その後、わたしが教頭に自分達に何が遭ったのかを話した。

 そして、何人の生徒も犠牲になった事を。

 話を聞いた教頭はすぐに、生徒達の父兄に伝えた。


 その後の事は、生徒達の父兄が学校に駆け込んできた。

 自分達の子の無事を確認し、抱き合い喜んでいた。

 中には、自分の子が居ない事を知り、涙にくれる親も居た。

 その親達には、西園寺君が遺髪を渡していく。

 遺髪を受け取った母親は、その場で崩れ落ちた。

「そんな・・・・・・そんな・・・・・・」

 震える指先で、差し出された髪を胸に抱く。

「うちの子が、死んだなんて・・・・・・」

 周囲からも嗚咽が漏れる。

 私も異世界では何度も死を見てきた。

 けれど。

 こうして親が泣く姿を見る方が、ずっと辛かった。

 異世界では生き残る事に必死だった。

 誰もが前を向くしかなかった。

 だが日本では違う。

 失ったものと向き合わなければならない。

 私達は帰って来てしまったのだから。

 その時だった。

 慌ただしい足音が廊下から聞こえた。

「失礼します!」

 スーツ姿の男達が教室へ入ってくる。

 警察だった。

 保護者達がざわつく。

 男性の一人が私へ手帳を見せた。

「警視庁の者です。青園先生で間違いありませんね?」

「はい」

「少しお話を聞かせて頂けますか」

 予想していた。

 生徒と教師が集団で失踪し、突然帰って来た。

 しかも行方不明者まで出ている。

 警察が来ないはずがない。

 私は小さく頷いた。


 数時間後。


 事情聴取は難航していた。

「異世界に召喚された、と?」

「はい」

「魔法が存在する世界ですか?」

「そうなります」

 聴取してくれている刑事が困った顔をする。

 無理もない。

 逆の立場なら私も信じない。

 だが問題は別にあった。

「生徒達も全員同じ証言をしていますよね」

「はい。しかも細部まで一致しています」

 刑事が頭を抱える。

 生徒達は口裏合わせをしていない。

 していたとしても不可能なくらい証言が一致している。

 そして、異世界で習得した能力は帰還後も消えていなかった。

 それが決定打だった。


 生徒達は保護者と共に帰宅していった。

 だが私は帰れなかった。

 職員室で一人、書類を書いていた。

 失踪期間。

 死亡生徒名簿。

 経緯報告。

 書く物はいくらでもある。

 まず、書くのは死亡した生徒の名簿だった。

 

 北畠智和(きたばたけともかず)。

 長坂勝介(ながさかかつすけ)。

 跡部信茂(あとべのぶしげ)。

 大桃将也(おおももしょうや)。

 柳楽利明(なぎらとしあき)。

 青山達也(あおやまたつや)。

 水島静香(みずしましずか)。

 日野義道(ひのよしみち)。

 猪田信康(いのたのぶやす)。

 天城信成(あまぎのぶなり)。

 

 其処まで名前を書いていて、目から涙が流れてきた。

「・・・・・・すまない。すまない。皆・・・・・・」

 生徒を守る事が出来ず、生き残っている自分が恥ずかしかった。

 先生の立場であるのに守る事が出来なかった

 特に猪田については、完全に見落としだ。

 前々から、天城が椎名に好意を持っていた事は気付いていた。

 その椎名が猪田の事が好きだという事も。

 学生の恋愛なので、私が口だす事ではないと思い、相談されたら乗りはするが、見守るだけにした。

 結果、天城の嫉妬により猪田は殺害した。

 天城も処刑される事になった。

「生徒を守る事も出来ず、まして生徒を自主性を重んじた事で、殺人まで犯すなんて。私はもう、先生を続けられない・・・・・・」

 その後、諸々の後始末を終えると、私は辞表を出して学校を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。