表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三華繚乱  作者: 南優華
第四章 一年後
48/403

第四章 白華・興華伝十二 知恵と力の深化

 玄翁から突きつけられた問い――「……曹華を、殺すのか?」

その残酷な一言から、一年が経過していた。


 あの日の衝撃は今もなお、白華と興華の胸に棘のように残り続けている。だがその棘は、二人を立ち止まらせるものではなかった。むしろ、修行に身を投じるための原動力となっていた。――いつか再会した時、妹と敵として刃を交える覚悟が要る。その覚悟が、二人をさらに高みへと押し上げていた。


 白華(22歳)知恵と「女」という武器

22歳となった白華は、冷静な知性に加え、成熟した大人の女性としての気配を纏うようになっていた。玄翁のもとでの修行は、武よりも知識と洞察を重んじるものだった。白華は、地理、歴史、各国の勢力図を徹底的に学び、大陸全体を俯瞰する視野を養っていく。黒龍宗がどこに浸透し、蒼龍国の五将軍がどのように権力を握っているのか。彼女は情報を整理し、地図に書き込み、未来の戦局を思考することを日課としていた。

ある日、玄翁は白華にこう言い放った。

「白華よ。女であることを嘆くな。武に勝てぬならば、女であることそのものを武器とせよ」

それは甘言ではなかった。女としての魅力を、人心掌握や交渉、心理戦の切り札として用いる――玄翁はその現実を、容赦なく叩き込んだ。視線の使い方、声の調子、立ち居振る舞い。白華は嫌悪を覚えながらも、それを拒まなかった。妹と弟を守るためならば、必要とあらば、自らを“道具”にする覚悟を、すでに持っていたからだ。

また、彼女の得意とする認識阻害の道術も進化していた。小規模な隠蔽に留まっていた術は、今では山中や霧の中でも長時間維持できるほど洗練されている。

白華は、知恵の盾として――敵の目を欺き、興華を導く存在へと確実に歩を進めていた。


 興華(16歳)仙術と肉体の深化

16歳となった興華は、少年の面影を残しつつも、確かな成長を遂げていた。背は伸び、筋肉の輪郭も明瞭になり、白華の背後に立つ姿には、守る者としての気配が宿り始めている。仙術の修練は、さらに深化していた。かつて感情に左右されがちだった霊力は、今では呼吸を整えるだけで自然に巡らせることができる。岩を砕く膂力、断崖を駆け上がる脚力。それらを、怒りに頼ることなく引き出せるようになっていた。玄翁が密かに「千年に一度の器」と評するほどの才。だが興華自身は、それを誇ろうとはしない。

彼の胸にあるのは、ただ二つの誓いだけだった。

――曹華姉さんを取り戻す。

――白華姉さんを守り抜く。

修行を終えた夜、湖畔で一人鍛錬を続ける興華の姿を、白華は幾度も見ている。血が滲もうとも剣を振るい、疲労で倒れても、黙って立ち上がる。その背に宿る執念は、やがて大陸を揺るがす力へと変わる兆しを見せていた。


 思念の術によって曹華の姿を垣間見たことは、二人に新たな決意をもたらしていた。妹は、父の仇の傍らで生き、武を磨いている。その現実を知った今でも、迷いはない。

「必ず再会する。その時、どんな運命が待っていようとも」

白華は、知恵で道を切り拓く盾として。興華は、力で姉を護る矛として。二人は互いを支えにしながら、修行の終わりと、その先に待つ再会を見据えていた。

血塗られた運命を受け止める覚悟とともに――。

読んでいただきありがとうございます。

作品、続きに興味を持っていただけたら、☆をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ