いつもそばにいました
飲みやすい温度のお茶入りポットは、温度が変わらない様に魔法がかけられているとアリスに教えてもらった。
「今日は妖精についての本を読みました」
「……」
頷きお茶を飲む魔王様に、今日あった事を話す。
「妖精って向こうの大陸にも少しだけいるんですね、ほとんどはこちらの大陸に棲家を移しているけれど森や泉に少しだけいるって書かれていました。私の住んでいた村の近くにもいたんですかね?」
「……あの辺りにはもういない」
「そうなんですね、アリスの様な魔石の妖精はすごく珍しいのですか?」
「うむ」
初日の夜から毎晩、学んだ事や美味しかったご飯のことを眠くなるまで魔王様と話している。
なぜ報告会になったのかは覚えていないけど、たぶんアリスからたくさん話してみるといいと言われたのがきっかけだったと思う。
「__……あちらにいた殆どの人間以外の種族は少しずつこちらに移ってきたのですね」
「……」
「そしてここより更に向こうの大陸や、島々へ旅立っていくのですよね」
「あぁ」
「……魔王様は守護者なのですね」
「……」
キース様の授業で最初に習ったのは、魔人や多くの魔族は人を好んで食べないという事だった。たぶんこれは初日の私の発言のせいだ。
それから次に教えてもらったのは、人間の考えるこの世界の地図と、実際の地図の違いだった。
人間が住む大陸と、魔王の治める大陸の二つしか描かれていない人間の地図に対して、正しい地図はもっとずっと広かった。
魔族領と呼ばれるこの大陸の半分ほどの大きさの人間の大陸、そしてその人間の大陸の反対側に無数にある島々と大陸が描かれている。
魔王様の治めるこの大陸は沢山の種族が行き来する場所で、大小の国がありそれらを更に纏めて治めているのが魔王様。
『魔王様は魔とつく部族の王ですが、正確にはこの大陸の皇帝ということですね。大小の他の種族の国の王達を取り纏める事も仕事の一つです。魔王はどの部族の者でもなれますが、当代で1番優れた者が選ばれます』
大きな地図のある円卓の地図を指しながらキース様が教えてくれたことを思い出す。
『勇者は当代の魔王に対して唯一の特攻、特化型の才を持った人族のことをいいます。人族は魔力を持つ個体が生まれづらいため魔王に至る事は今まで一度もありませんでした。寿命が短い事も理由の一つですね。ただ稀に勇者と呼ばれる個体が生まれる事で、人間という種族の強さのバランスを取っていると言われています』
勇者の昔話が人に語り継がれているけれど、そんな事情があったなんて知らなかった。
「魔王様は勇者にあったことがありますか?」
「……ない」
「よかった、その時は私がどうにかしますね!交渉するとかそういう感じで!」
「そうだな」
人間のことは人間が対処した方がきっと丸く収まるはず。
まぁ勇者がここにくることなんて万が一にもないだろうけども。海広いし。
それから、魔王様と少しだけ話して寝た。
1番ことワンさんの事を聞き忘れたなぁ。って気づいたのは翌朝のことだ。




