正体不明2
正体不明機はまだ戦う、まだ戦い続ける、騎士の剣を持ち、逃げることなく敵のど真ん中で。だがそれでも。
『損傷増大』
『まだ着かないんですか』
『まだっすよ、後5分っす』
傷付き、剣をつき、立ち止まる。
『はははははっ、女王の騎士もこれまでだな』
『っ』
『はははははっとどめを刺せ』
だがそれでも、彼は戦う、戦い続ける。まるで、いやまるでではなく文字通り守護の盾として、最高の騎士として。
『何をやっている』
『彼は我々の旗印です兵が』
『だが今は敵だ』
『わかっております、わかっておりますが』
『ならば討て、そいつを討つのは簡単だろ』
剣を持つ腕は。
『右腕損失』
機を支える足は。
『左脚損失、戦闘続行不可』
『後4分』
盾を持つ腕も。
『左腕も損失』
『なぶらずさっさとやれ』
『ですが』
『ならば』
『はっ下がってください隊長』
『何を』
『隊長が彼に、いえかの騎士に絶対的な忠誠を抱いているのは知っておりますなので私が』
『きさま』
『私だって辛いのです』
『後3分っす』
『さっさとやらんか』
『面白い話を聞かせるのじゃ』
『こんな場面になってなにかな』
『のうその後ろの写真、本当にナカイ騎士の写真じゃと思ってるのじゃ』
『これ以外写真は』
『それは偽物じゃ、偽物を崇拝しておるじゃおかしいのじゃ』
『それがどうした』
『本物はもっとしょうもなく、もっと偉大でもなく、もっと騎士らしくなかったのじゃ』
『後2分っす』
『残った映像も、もとは他のエースのためじゃったらしいし、元々ただの兵士じゃったのじゃ』
『隊長を取り押さえてください』
『何を』
『何を言いたいのだ』
『じゃから彼は泥臭く、まるで騎士の名を捨てるかのように汚い手を使うのじゃ』
『覚悟してください、ナカイ名誉騎士の機体を使ったパイロットさん』
『そしてどんな状況でも諦めないのじゃ』
『後1分っす』
『観測データを命令来ました』
『こちらも確認』
『あいつお姉ちゃんに』
輸送機の中が慌ただしくなる。
『その無念を抱いて』
『死ぬのはお前だ、やれトワ』
『了解、ナカイ隊長』
そして弾丸が放たれた。




