脱出戦8 sideS
『…………………………なにこれ』
たどり着いた先は更地だった、いやさすがにそれは言い過ぎだが建物はほぼ崩れ、そこら中に穴が開き、壊された機体がそこら中に転がっていた。
「あそこ」
光学でズームして探すと特徴的な2機が戦っていた、と言うより追われていた。
「943やれる」
『むり、速すぎる』
追われていたと言っても逃走ではなく、誘うように後退している何か罠があるのかもしれない。そんなことをしていると通信が入る。
『なにやってるのよ』
「ロノさん」
ロノさんが現れるのだが機体はボロボロ、肩に付いた砲の残骸によってかなりひどく見える。
『ここは戦場さっさと下がりなさいよ』
「いえ、帰還命令を伝えに」
『やっと、お姉ちゃん聞こえた』
『帰還ですか、了解しました。ナイン騎士には、っまた』
『お姉ちゃん支援する』
『ダメです、あなたはナイン騎士の支援を』
『けど』
ロワさんの機体の方にカメラを向けると、機体はボロボロだった。それを3機の黒い機体が囲んでいる。
『後3機くらいならどうにかできます』
『むりだよそんなの』
『それにあなたの機体も戦闘は』
『お姉ちゃんの為ならむりだって』
と言ってもロノさんの機体は武装は。
『学生パイルガンを早く』
『了解』
フェザーのパイルガンを奪うと戦闘を。
『ロノっ』
『けどお姉ちゃんが死んじゃう』
『私より』
『あんな奴よりお姉ちゃんの方が』
『ロノっ』
パイルガンで狙撃する。
『学生、伝えてきて』
それは戦場に飛び込めと言うことだ、だがそれは。
『ロノっいい加減に』
「了解」
望むところだ、ナイン騎士を追撃しきれない敵機が1機こちらに。
『っめんどくさい』
それを即座にロノさんが撃つ、後目視できるのは囲んでいる3機と例の黒いの4機だ。だから切り込める。フェザーにパイルガンを渡し、ヒートスティックを装備させる。そして突っ込む。
「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉ」
走る、走る、跳ぶ、走る。ナイン騎士の機体が格納庫の残骸に飛び込み、それを追いかけていた黒いのを飛び込む前に斬りかかる。ヒートスティックがぶつかりそのまま機体がぶつかる。
『勢いはよし、だが』
パイロットの声が響く、機体同士がぶつかったために通信が混線したようだ。アラート。
「足が」
機体の足が切り落とされる、機体状況がグリーンからブラックに、要は消失した。そのまましたに落ちる。衝撃でコックピットが揺れる。視界が揺れる。ジャミングでもかけられているのか砂嵐音が響く。ヘルメットの前面に赤いものが見える。そして、動かない白い機体に近寄る黒い機体。まだ機体は動く。
黒い機体も動く。
白い機体は動かない。
意識は薄れていく。
機体は動く。だから叫ぶ、意識を保つために、せめてもの抵抗をするために、腕は動く。
黒い機体が止まる。
ターゲットはロックオン済みだ。
飛ばすものはある。まだ装備しているヒートスティックだ。腕を動かし振りかぶる。
黒いのは剣を振り上げる。
こちらに気づいていない。
だからヒートスティックを。
投擲した。
視界が霞む。手が震える。動く機体が1機に、投げつけられたヒートスティックが突き刺さっている機体が1機。その動く機体が近寄ってくる。
『おめでとう』
誉められる。後ろから機体が複数駆け寄ってくる。意識を保ってられない、前がほぼ見えない。アラートが響く。
『おめでとう』
『………………………………………………………』
機体が揺れる、視界がよみがえる。
「うっ」
『おめでとう、騎士殺しくん』
動く黒い機体に、ヒートスティックが突き刺さった白い機体。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
そう叫ぶことしかできなかった。




