5.ウサギのおめめ
びしょ濡れになった身体をなめてキレイにして、ぽかぽかお日様で乾かすと、なっぱとしっぽくの字のくーたろうは、また進み始めました。
なっぱは相変わらずぴょんとしては休み、ぴょんとしては休みしました。
しっぽくの字のくーたろうはその後を、とことことことこ着いて歩きました。
なっぱは疲れてきたので、元気を出すために歌を歌いました。
「ぼくはなっぱ。ウサギのなっぱ。仲間のウサギに会いに行く~」
これを聞いたしっぽくの字のくーたろうは、やっぱりおかしくてたまりません。
なっぱは、まだ自分がウサギだと思い込んでいます。
しっぽくの字のくーたろうは、心の中でにゃひにゃひ笑いました。
そのときです。
また、お空を飛んでいる三羽のちゅんちゅくスズメが歌いました。
「ちゅんちゅくちゅん。そんなウサギはいやしない。ウサギのおめめは真っ赤っか」
なっぱとしっぽくの字のくーたろうは、顔を見合わせました。
「しっぽくの字のくーたろうさん、ちゅんちゅくすずめが歌ってるのは本当ですか?」
なっぱが聞きました。
「そう言えば、聞いたことがあるぞ。ウサギは目が真っ赤なんだって」
「それじゃぁウサギは、野菜が大好きで、野原や山に穴をほって住んでいて、ぴょんぴょん跳んで、おめめが真っ赤なねこなんですね」
なっぱが、もう一度聞きました。
本当はウサギはねこじゃないけれど、まだ本当のことなど言うつもりはありません。しっぽくの字のくーたろうは、うんとうなずきました。
「しっぽくの字のくーたろうさん。ぼくのおめめは何色ですか?」
なっぱは大きく目を開いて、しっぽくの字のくーたろうに見せました。しっぽくの字のくーたろうは、なっぱの目をじっと見ました。
それはそれはキレイな空色です。
「なっぱの目は、赤くないよ」
それを聞いて、なっぱは悲しくなりました。やっと自分がウサギという種類のねこだとわかったのに、自分が他のウサギと違うなんて、悲しくてなりません。
なっぱの目から、大きな粒の涙がぽろぽろこぼれました。
「あれあれ?」
しっぽくの字のくーたろうが、なっぱの顔をのぞき込んで声を上げました。でも、なっぱは悲しくて悲しくて、ぽろぽろ涙を流して泣いていました。
「なっぱの目が、赤くなったぞ」
これには、なっぱもビックリです。
「本当ですか? しっぽくの字のくーたろうさん」
「本当だとも」
しっぽくの字のくーたろうは言いました。
なっぱの目が赤くなったのは、悲しくて涙をぽろぽろ流して泣いたせいでした。なっぱもしっぽくの字のくーたろうも、それに気がつきました。
でも、いつまでも悲しい気持ちで、泣いてばかりなんかいられません。
だって考えても見てください。おいしいごちそうを食べているときも、友達と追いかけっこして遊んでいるときも、ずっとずっと悲しい気持ちで泣いているなんて、そんなのできっこありません。
ふたりはずっと目が赤いままでいるにはどうしたらいいのか、一生懸命に考えました。
すると、しっぽくの字のくーたろうはいいことを思いつきました。
「おい、なっぱ。いい方法を思いついたぞ」
「どんな方法ですか?」
なっぱは言いました。
「いいか、なっぱ。オイラのしっぽを、よーく見てるんだぞ」
そう言うと、しっぽくの字のくーたろうは、なっぱにお尻を向けて、『く』の字に曲がったしっぽを見せました。
「おい、なっぱ。オイラのしっぽをちゃんと見てるか?」
「はい、見てますよ」
なっぱは返事をしました。
「いいか、なっぱ。よーく見て、絶対目をつぶっちゃダメだぞ」
「はい、わかりました」
もう一度なっぱは返事をしました。
なっぱは、ゆーらゆらゆれる『く』の字に曲がったしっぽをじーっと見ました。
すると突然、しっぽくの字のくーたろうが、後ろ足でザシュッザシュッと砂をけりました。
なっぱは大きく目を開けて、しっぽを見ていたのでたまりません。しっぽくの字のくーたろうがけった砂が、いっぱい目に入りました。
「痛い、痛い! 目が痛いよー」
なっぱは、転げまわって泣きました。
その様子が、あんまりおかしかったので、しっぽくの字のくーたろうは、にゃひにゃひ笑いたいのをガマンするのが大変でした。
「おい、なっぱ。お前の目は真っ赤っかだぞ」
しっぽくの字のくーたろうが言いました。
「本当ですか?」
「本当だとも」
なっぱの目は、悲しくて泣いたときよりも、真っ赤っかでした。
なっぱは、目が痛くて痛くてしかたがありませんでしたが、これで自分も他のウサギと同じになったと思って喜びました。
「しっぽくの字のくーたろうさん、ありがとう」
なっぱはお礼を言いました。
「なーに、こんなことぐらいお安いご用さ」
そう言うとしっぽくの字のくーたろうは、心の中でにゃひにゃひ笑いました。




