↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/11

第2話:初陣! 焼きそばパンとビーム砲

緊急警報のサイレンが鳴り響く校舎の裏手。カイトとシーナは、一般生徒の退避ルートから外れた静かな林の中に佇む「管理用資材倉庫」へと滑り込んだ。

カイトが壁のダミーパネルを外し、軍の認識IDカードをスキャナーにかざす。

『認証――カイト・充・ガードナー少尉。アクセス権限を確認。地下高速リニアシュートへ案内します』

重々しい駆動音とともに床がスライドし、二人を乗せたエレベーターが激しいGとともに地下深くへと急速降下を開始した。

「カイト! 焼きそばパン、まだ全部食べてないでしょ! ポケットの中で潰れたらどうすんのよ!」

「問題ありません、シーナ少尉。購入直後に耐圧ポリエチレン袋の空気を抜き、ポケット内で圧迫されない位置へ格納固定済みです」

「そういう無駄な手際だけは本当に完璧ね……!」

エレベーターが最深部に到達し、ドアが開く。

そこに広がっていたのは、照明が赤く明滅する巨大な軍事基地のメインハンガーだった。

整備兵たちが慌ただしく走り回り、高圧パイプから冷却蒸気が噴き出している。そしてハンガーの中央に鎮座していたのは、圧倒的な存在感を放つ漆黒の巨躯――ブラックナイトであった。

「カイト少尉! シーナ少尉! 待っていたよ!」

メインモニタ前でインカムを装着したメガネの知性派少年――作戦参謀のルカ・アシュフォードが二人を出迎えた。

「状況は、ルカ参謀」

カイトは迷いなくパイロットスーツへと着替えながら尋ねた。

「敵の構成は『自律型中型脚陸機』8機、および後方からの支援砲撃を担う『重砲撃型要塞歩行機』2機だ。第4外郭防壁の第2防衛ラインが突破され、このままだとあと12分で居住区および君たちの通う高等部が砲撃射程内に入る」

「到着まで12分……。防衛隊の足止め能力を超えていますね」

「ああ。だから君たちの出撃が必要なんだ。ブラックナイトの重装甲フル装備形態で出撃し、敵の砲撃ラインを即座に大火量で叩いてほしい」

カイトはパイロットスーツのジッパーを締め上げ、ヘルメットを抱えた。

「了解しました。ミッション『防衛ラインの奪還および敵砲撃戦力の排除』。……これより出撃します」

「ちょっと待ちなさいカイト!」

シーナが自身の愛機である近接格闘型メカ「レッドライナー」のコクピットへ向かいながら、カイトを振り返って叫んだ。

「さっきの学校での続き、忘れてないわよね!? 帰ったら絶対にあの焼きそばパンの続き、最後まで食べきるのよ! 撃破されて残すなんて許さないからね!」

カイトは一瞬だけ足を止め、シーナを見つめた。

「……了解です、シーナ少尉。物資の浪費は兵士の恥です。必ず完食します」

カイトはブラックナイトのシートへ飛び乗り、操縦桿を握り締めた。

『システムオールグリーン。メインジェネレーター、ドライブイン。射出シークエンスへ移行します』

「カイト・充・ガードナー、ブラックナイト――出撃する!」

ドゴォォォォンッ!!

リニアカタパルトが爆発的な磁力を発生させ、漆黒の巨躯が大空へと解き放たれた。


要塞都市アークフォースの外郭防壁付近。

かつて緑豊かだった丘陵地帯は、いまや凄まじい砲撃の煙と火柱に包まれていた。

「――防衛隊第3小隊、全滅! 敵の重砲撃機の盾が厚すぎる! 貫通できません!」

「くそっ、このままじゃ防壁が……!」

防衛隊の量産機たちが押し込まれ、悲鳴のような通信が飛び交う戦場。

そこへ、雲を突き破って一筋の黒い流星が降下してきた。

ドォォォォンッ!!!

地面を激しく揺らす着地音とともに、土煙の中から漆黒の重装甲メカが姿を現す。

背部に装備された巨大ブーストユニットと多重ミサイルポッドが異様な威圧感を放っていた。

『カイト! 敵中型機が右翼から接近! 距離800!』

ルカの警告がコクピット内に響く。

「問題ありません。面制圧を実施します」

カイトは冷静に操縦桿のトリガーを引き抜いた。

背部の多重ミサイルポッドのハッチが一斉に開放され、数十発の小型誘導ミサイルが白い煙の尾を引いて大空へ拡散・飛翔する。

ズババババババババッ!!!!

空中で急旋回したミサイル群が、迫りくる中型脚陸機8機へ正確に降り注いだ。

凄まじい爆炎と連鎖爆発。たった一撃で、敵の前衛部隊が火の海へと変えられた。

「……前衛の排除を完了。これより本命ターゲット、重砲撃型要塞歩行機2機の撃破へ移行します」

『凄まじい火力ね……! でもカイト、正面の敵砲撃機を見て!』

追いついてきたシーナの近接機が、ビームブレードを構えながらカイトの側面に滑り込む。

遠方に鎮座する全高30mを超える2機の重砲撃機。その前面には、重厚な実体物理装甲と電磁シールドが二重に展開されていた。

「防衛隊の火力が通らなかった原因は、あの多重物理装甲ですね。通常弾頭では表面を削るのが限界です」

カイトの思考は至って冷徹だった。戦場におけるすべての要素を、コンマ数秒で数値化していく。

『どうするの? パージして高機動で裏へ回り込む?』

「いいえ。敵の主砲がすでにアークフォースの防壁へ照準を固定しています。回り込む時間的余裕はありません。正面から……最大火力で穿ちます」

カイトは機体の両腕ハードポイントにマウントされた主兵装――ハイパーツインメガビームマグナムのアームを展開した。

カコン、カコンッ!

重厚なビーム砲身が前方にスライドし、ブラックナイトの機体各部から過熱防止用の冷却ガスが吹き出す。

『警告:ツインメガビームマグナムの同時最大出力射は、機体ジェネレーターに過負荷を与えます。推奨されません』

メインAIの合成音声が警告を鳴らす。

「出力を120%へオーバーライド。冷却シリンダーの安全弁を開放しろ」

『了解。オーバーライド承認』

メインモニターに、遠方の敵砲撃機2機のコアが二重の照準マークで固定された。

「シーナ少尉、射撃の衝撃波で周囲の空間が微振動します。後方へ退避を」

「カイト、無茶しすぎよ! 戻ったら反省会なんだからね!」

カイトは深く息を吐き出し、胸のポケットに入っている「焼きそばパン」の感触を、スーツ越しにわずかに意識した。

(……この街の平穏が破られれば、この『焼きそばパン』も、学校という空間も破壊される。……それは、看過できない)

「――目標固定。これより射撃を開始する!」

ズガァァァァァァァァンッ!!!!!!!!

二条のあまりにも巨大な青白いビーム光線が、大気を激しく加熱・歪ませながら一直線に解き放たれた!

射撃の反動だけで、重量数十トンのブラックナイトの脚部が大地を数メートル押し下げる。

光線は敵の電磁シールドを一瞬で蒸発させ、分厚い多重物理装甲をまるで紙のように焼き切って貫通!

2機の重砲撃機は内部の弾薬庫に誘爆を起こし、真紅の巨大な火柱となって大空へと吹き飛んだ。

防衛隊の通信回線が、静まり返る。

たった一機の圧倒的な火力によって、都市を脅かした脅威が完全に粉砕されたのだ。

戦闘終了から2時間後。

すっかり夕闇に包まれたアークフォース高等部の屋上。

激しい戦闘を終え、機体のメンテナンスを整備班に預けたカイトは、静かな風が吹くフェンス際でぽつんと座り込んでいた。

その手には、ポケットから取り出されたビニール袋入りの焼きそばパンがあった。

「ふぅ……間一髪、潰れてなかったわね」

隣に腰掛けたシーナが、ジュースの缶をカイトに差し出した。

「感謝します、シーナ少尉」

「だから少尉って呼ばないの。……それにしても、あんな大火力ぶっ放すなんて相変わらず無茶苦茶ね。ルカが『ジェネレーターの過熱限界ギリギリだった』って蒼い顔してたわよ」

「計算の範囲内です。防壁への着弾を阻止するには、あの手段が最も成功率が高かった」

カイトは少し冷めてしまった焼きそばパンを、再び一口口にした。

「……冷えても、美味しいですね」

「当たり前でしょ。冷めても美味しいように作られてるんだから」

シーナは嬉しそうにジュースを飲んだ。

「ねえ、カイト。今日はじめて学校に通ってみて……どうだった?」

カイトは空を見上げた。1番星が、薄紫色の空にぽつんと光り始めていた。

「……理解不能な事象が多すぎます。数値化できない感情や、戦術的に無意味な行動が多すぎる。私は、この任務を正しく遂行できているのか、確信が持てません」

「ふふっ、それでいいのよ」

シーナは柔らかく微笑んだ。

「最初から完璧にできたら、訓練にならないじゃない。少しずつでいいの。カイトが『戦うこと』以外を覚えていけば」

「……了解しました。努力します」

大真面目に答えるカイト。

戦場しか知らなかった少年兵の胸に、新しい「日常」の味が静かに染み込んでいくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。