13話「兄の想いに手を重ねて悪をぶっ潰す!」
ここまで読んでいただきありがとうございます!!
今回は襲ってきた男の目的とその想いを告白する話です!!
是非見てください!!よろしくお願いします!
男たちが地面に倒れたあと、俺はまず、いちばん近くにいた男の腕を背中へ回した。
正義「暴れるな。大人しくしていれば、余計な怪我はしなくて済む」
男A「くそっ……放せ!」
男が肩をよじった。俺は腕を押さえ、逃げられない角度に固定する。抵抗が弱まったところで、買っておいたロープを取り出した。
手首を縛ろうとしたとき、男の顔が目に入った。
見覚えがある――というより、誰かに似ている。
眉の形も、目元も、鼻筋も。記憶の中にある顔と重なりかけて、俺は手を止めた。
正義「……あれ?」
男え「何見てやがる!」
男が顔を背けようとした。俺はその横顔を見て、ようやく思い当たった。
カナの家で見た家族写真。そこに写っていた、カナの隣の青年。
まさか。
正義「お前……カナの兄さんなのか?」
男A「……っ!」
男の顔が一瞬だけ強張った。その反応だけで、疑いは確信に近づいた。
けれど、俺が名前を呼ぶより早く、背後で靴音がした。
倒れていたはずの2人が起き上がっている。片方は鼻を押さえ、もう片方は俺たちをにらみながら、路地の出口へ走り出した。
正義「待て!! くそっ!」
俺は反射的に立ち上がりかけた。しかし、目の前の男を縛り終える前に手を離せば、こいつまで逃がすことになる。
ほんの一瞬の迷い。その間に、2人の背中は角の向こうへ消えた。
チャッピー「逃げた2人の顔は記録してあるにゃ。あとからでも見つけられるにゃ」
正義「それはそうかもしれないけど……襲撃が失敗したら、きっともう雇い主に……くそっ」
ロープを締める手に力がこもった。あの2人が戻って、次は別の誰かを連れてくるかもしれない。あるいは、ブェルネンが証拠を消すために、もっと危険な手を打つかもしれない。
チャッピー「どこまでも正義は、本当に刑事にゃ」
正義「今それを褒められても、全然うれしくないよ」
男の手首をしっかり縛り、念のため足も拘束した。男は何度か身体をよじったが、もう逃げられそうにはなかった。
俺は男の顔を改めて見た。カナの兄かもしれない人物を、俺は捕まえた。だが、なぜ彼が襲撃に加わったのかは、まだ分からない。
*
正義の家に着いてから、しばらくして男が目を覚ました。
正義「おはよう。よく寝られた?」
ドック「くっそ……ここはどこだ!! ……いてっ!」
ドックは勢いよく起き上がろうとして、頭を押さえた。顔をしかめ、額に手を当てている。
正義「倒したときに、強く頭を打ったみたいなんだ。あまり動かない方がいいよ」
ドック「……お前、俺に何をした」
正義「襲ってきたのはそっちだろ。俺は身を守っただけだよ」
ドックは返事をせず、周囲を見回した。扉までの距離、窓の位置、俺とチャッピーの立ち位置。逃げ道を探しているのが分かった。
チャッピー「照合が完了したにゃ。カナの家に置いてあった家族写真の兄の顔と一致したにゃ」
ドックの視線が止まった。
ドック「……ちっ」
彼は顔を背けた。もう名前を隠しても意味がないと分かったのだろう。
正義「ドック、だよな」
ドック「名前まで調べたのかよ」
正義「顔を見て気づいたんだ。チャッピーが家族写真の記録と照合してくれた」
チャッピー「記録が役に立ったにゃ」
チャッピーは胸を張った。こんな場面でなければ、頭を撫でてやるところだ。
正義「なぜ、俺を襲った?」
ドック「金を持ってそうだったからだ」
ドックの周囲に、赤い光が浮かんだ。
やっぱり嘘だ。
正義「……嘘だな」
ドック「は?」
正義「俺には分かるんだよ。嘘はつかない方がいい。そんなデタラメ、すぐに分かる」
ドックの目が、警戒するように細くなった。俺は真視の眼のことを説明するつもりはなかったが、ここで適当な言い訳を重ねられても困る。
正義「単刀直入に聞く。ブェルネンの差し金だな?」
ドック「誰だよ、そいつ。知らねぇよ」
また赤い光が見えた。
俺は息を吐いた。やっぱり、ブェルネンの名前を知っている。
正義「まあいいよ。そんなに言いたくないなら、無理に聞き出すのはやめる。その代わり、取引しよう」
ドック「……取り引き?」
正義「本当のことを教えてくれたら、君が欲しがっているものを譲るよ。どう?」
ドック「嘘だな。そんなこと約束したところで、お前にメリットなんかひとつもないじゃないか!! ていうか、俺を憲兵に突き出したところで、また別のやつがお前を襲いに来るぞ? だから意味ねぇんだよ!! こんなことしても!!!」
言葉は荒い。だが、その声には怒りだけではないものが混じっていた。俺を脅しているというより、どうせ何をしても無駄だと、先に諦めようとしているように聞こえた。
正義「意味ならある。俺が狙われている限り、少なくともカナさんには被害が及ばない」
ドック「…………本当だな?」
正義「ああ。本気でそう思ってる。俺はお父さんの事件を解決して、カナさんもカナさんの店も守りたいと思ってる」
ドックは俺の顔をじっと見つめた。次の瞬間、眉を吊り上げた。
ドック「まさかお前……カナが好きなのか!?」
正義「は?」
ドック「カナの気持ちを利用して、カナを手に入れようとしてるのか!? 答えろ!!」
正義「はあ!? なんでそうなるんだよ!! 俺は純粋にカナさんとあの家を守りたくて……っていうか、カナさんとあの店なんてどうでもよかったんじゃないのか? カナさんから、お父さんが死んでから兄が変わったって聞いたぞ?」
ドック「どうでもいいわけないだろ!!!」
ドックの声が部屋に響いた。
ドック「あの店も!! 妹も!! 俺にとっては大事なもんなんだよ!!!」
その瞬間、ドックの周囲に浮かんでいた赤い光が消えた。
俺は言葉を失った。
今の言葉は嘘じゃない。ドックは本当に、家族と店を大切に思っている。
だったら、どうして。
正義「……じゃあ、どうしてこんなことをしてるんだ? 俺はカナさんとあの店を本気で守りたいと思ってる。頼む。話してくれないか?」
ドックはうつむき、唇を噛んだ。しばらく、何も言わなかった。
ドック「…………くそっ。やっと終われると思ったのに……」
正義「終われる? 何が?」
ドックは答えず、固く握った拳を見つめた。指先が小さく震えている。
ドック「……店はいい。せめて、母さんとカナだけは……お前が守ってやってくれないか」
正義「……約束する」
軽々しく言える約束じゃない。それでも、ここで曖昧な返事をすることだけはできなかった。
ドックはしばらく俺を見ていた。俺が目をそらさないのを確かめるようにしてから、ようやく口を開いた。
ドック「……帳簿だよ。ブェルネンに頼まれたんだ。親父が死んでから数ヶ月たったある日、俺はあのクソ野郎に呼び出された」
*
ジムが亡くなってしばらく経った頃
夜。店も通りも静まり返った頃、ドックはブェルネンのもとを訪ねた。
ドック「ブェルネンさん! こんばんは! どうしたんですか、こんな時間に」
ブェルネン「やぁ、こんばんは。悪いね。今日は頼みたいことがあって呼んだんだ」
ブェルネンはいつもの穏やかな笑みを浮かべていた。ジムが亡くなったあと、家族を気遣い、何かと手を貸してくれた人物。ドックにとっては、世話になった相手だった。
ドック「いえいえ、俺にできることなら何でもしますよ。親父のことで世話になりましたし!」
ブェルネン「実は、非常にまずいことになってね。君のお父さんがつけていた帳簿の写しが、家にあるはずなんだ。それを探して、私のところへ持ってきてくれないか?」
ドック「帳簿? 何のことですか? 親父から、いつそんな話を?」
ブェルネン「いつ? ははっ。そりゃ、君のお父さんが死ぬ前に決まっているだろう。あいつは言ったんだ。帳簿の写しが家にあるから、これを俺から奪っても意味はないってね」
ドックは笑みを浮かべたままのブェルネンを見つめた。
言葉の意味が、すぐには頭に入ってこなかった。
ドック「は……? な、何を言ってるんですか? それじゃあ、まるで……ブェルネンさんが親父を……」
ブェルネン「そうだよ。私が殺したんだ」
あまりにもあっさりと、ブェルネンは言った。
ドックの耳の奥で、何かが鳴った。目の前の男が、今までと同じ顔で立っている。そのことが、かえって現実味を失わせた。
ブェルネン「あいつ、帳簿に数字のおかしいところがあるって、いちいち突っ込んできやがってな。魚の質が下がっただの、金の流れがおかしいだの……俺の気持ちも知らねぇで、好き勝手言いやがって!」
ドック「な、何言ってんだ、あんた……。お、お前が……親父を……」
息がうまく吸えない。喉が詰まり、胃の奥からこみ上げるものを抑えきれなかった。
ドックは口元を押さえ、壁に手をついた。
ドック「う……うえぇ……っ!」
ブェルネン「事故に見せかけて殺したんだ。こいつ吐きやがった!!汚ぇな!!」
ブェルネンは、まるで仕事の失敗でも話すように肩をすくめた。
ブェルネン「それで、何でもやるって言ったよな? 帳簿の写しを探してこい。あれが残ってちゃ困るんだよ」
ドック「……っ」
ブェルネン「持ってこなかったら……君の妹のカナちゃんと、お母さんがどんな目に遭うか。分かるよな?」
ドックは顔を上げた。
ブェルネンの笑みは、もう穏やかなものには見えなかった。
ドック「……くっ」
助けを呼べば、家族が危険にさらされる。憲兵に話せば、話したことが知られるかもしれない。何より、父親を殺したと平然と言い切った相手が、すでに自分たちの生活のすぐそばにいる。
ドックには、誰を信じればいいのか分からなかった。
*
話を終えたドックは、膝の上で手を握りしめていた。
ドック「それからずっと、帳簿を探してる。でも見つからねぇ。家の中も、親父が使ってた物も、何度も調べた。それでも出てこなかった」
正義「……ブェルネンは、俺が持っていると思ったんだな」
ドック「お前が数字の羅列が書かれた紙を見つけたって話を聞いて、帳簿の写しだと思ったんだろ。あいつ、相当追い詰められてる。だから俺たちに、お前を襲わせたんだ」
正義「……そうか。紙の話を聞いて、帳簿だと判断したのか」
ブェルネンが「ジムが隠した紙」と口にした理由も、ようやくつながった。数字の羅列を聞いた瞬間、彼は帳簿の写しを連想した。焦りが、隠していた事情を言葉に滲ませたのだ。
ドック「それがあれば、カナと母さんを助けられると思ったんだ……。でも、お前が持ってるって話だったから……」
正義「俺たちは、帳簿の写しをまだ見つけていない」
ドック「……は?」
正義「数字が書かれた紙は、嘘だ。ブェルネンが何を知っているのか確かめるために、俺が仕掛けたブラフだった」
ドック「な、なんだと?…最悪だ……! それがあれば、カナと母さんを助けられたかもしれないのに! 嘘なのかよ!! 騙したな!!」
正義「落ち着け!!」
ドックが身を乗り出した。俺は逃げずに、その目を見返した。
正義「仮に帳簿の写しを見つけたとして、それをブェルネンに渡したらどうなる? あいつがお前たちをそのままにしておくと思うか!? 口封じをしないって、本当に信じられる相手なのか!?」
ドック「……っ」
正義「お前は、家族を守るためにずっと帳簿を探してきたんだろ。でも、見つけて渡したら終わりとは限らない。むしろ、あいつにとっては邪魔な人間が増えるだけかもしれない」
ドック「じゃあ……俺が帳簿の写しを見つけても……」
チャッピー「殺される可能性が高いにゃ」
チャッピーの声は、いつもより静かだった。
ドック「……じゃあ、俺は……どうすれば……」
ドックの顔から、力が抜けていった。ずっと握りしめていたものを、急に失ったような顔だった。
正義「俺に任せてくれないか」
ドック「……え?」
正義「俺が必ず助けてみせる。お前も、お母さんも、カナさんも。ブェルネンに好き勝手させない」
ドック「……いいのか? 本当に……?」
ドックの目に涙が浮かんだ。彼は必死にこらえようとしたが、頬を伝った涙を止めることはできなかった。
ずっとひとりで抱えてきたのだろう。父親を殺されたことも、その犯人に脅されていることも、家族に何も言えずにいたことも。
守りたいものがあるのに、守るための力も、助けを求める相手も見つからなかった。
正義「……ずっと、ひとりで支えてきたんだな」
ドックは何も答えなかった。ただ、涙をぬぐおうともせず、うつむいていた。
正義「守りたくて手を伸ばしても届かない。届いたと思っても、自分に力がなくて、いつか手からこぼれ落ちてしまう。大切なものを、握っていられない……そんな気持ちだったんだろ」
俺は一度、言葉を切った。うまい言い方なんて分からない。誰かの人生を、たった数分話を聞いただけで理解できたとも思わない。
それでも、今ここで何も言わずにいることはできなかった。
正義「でも、お前は諦めなかった。怖くても、苦しくても、家族を守ろうとしてきた。そんな小さな手でも、必死に家族を離さないようにしてきたんだろ」
俺は、ドックへ手を差し出した。
正義「だから今度は、その家族を握りしめてるお前の手を、俺に握らせてくれ。ひとりで全部背負わなくていい。俺も一緒に守る。必ず助ける」
ドックは差し出された手を見つめた。
ためらいながら伸ばした指が、俺の手をつかむ。最初は弱々しかった手に、少しずつ力がこもっていった。
そしてドックは、声を押し殺しながら泣いた。
俺はその手を握り返した。
正義「……あのクソ野郎に、必ず罪を償わせてやる」
ブェルネンが何をしてきたのか、少しずつ見えてきた。
けれど、帳簿の写しはまだ見つかっていない。逃げた2人もいる。ブェルネンが次に何をするのかも分からない。
それでも、もうドックをひとりにはしない。
今度は俺が、あの家族を守るために手を伸ばす番だった
読んでくれてありがとうございます!!
いかがだったでしょうか!!!
ドックの想いもカナの想いも背負ってブェルネンに立ち向かう正義を是非応援してあげてください!!
次の更新も明日の24時にします!!是非続きも読んでくれると嬉しいです!!
よろしくお願いします!




