プロローグ
「【毎日24時更新中!】すでに13万字(30話以上)一気読みできます!」
【※初めてお読みいただく読者の皆様へ】
本作は、境遇も戦い方も全く異なる「3人の主人公」が織りなす、壮大な本格大河群像ファンタジーです。
主人公ごとに、物語の『ジャンル』や『テンポ』がガラリと変化するのが最大の醍醐味となっています。
◆アポカリ編:
丁寧に描かれる世界観と、呪われた異能の暴走に葛藤する少年の心の成長をじっくりと楽しむ、重厚な王道ダークファンタジー。
◆遠藤正義編:
嘘を色で見抜く異能とスマホAI猫を武器に、帝都の悪党たちをハイスピードでぶちのめしていく、なろう特有の超ハイテンポな最強爽快無双コメディ。
◆ピリオド編:
魔法も異能もない『無能力』の少年が、血の滲むような努力の剣技だけで格上の強敵を圧倒していく、熱血少年漫画のような大迫力のバトルアクション。
まずはアポカリと共に、マフラの森の深く美しい世界観にじっくりと浸りながら、ここから始まる3人の英雄たちの交錯する旅路をお楽しみください!
世界は、ひとつの物語で語り尽くせるほど小さくはない。
地図に描かれた山脈の向こうにも道は続き、海の向こうには、まだ見ぬ港や街がある。雪に閉ざされた土地では人々が長い冬に備え、乾いた大地では隊商が水を求めて進む。市場では異なる言葉が飛び交い、名も知られぬ村では、誰かが明日の食事を心配している。
王が国境を引き、学者が世界を測り、旅人が道を記す。それでも、世界のすべてを知る者はいない。
人間の暮らす土地があり、魔族の暮らす土地がある。
互いをよく知る者もいれば、聞いた話だけで相手を決めつける者もいる。同じ空の下に生きながら、まるで違う世界を見ているかのように。
古い石の下には忘れられたものが眠り、誰も踏み入れたことのない場所が残されている。歴史書に名を刻む王や英雄がいる一方で、記録に残らない人々もまた、笑い、悩み、旅をし、誰かを守ろうとしていた。
世界の名は、ルナーテ。
マフラの朝は、いつもと変わらなかった。
アポカリ・ヴェルシアは採集袋を背負い、森へ向かおうとしていた。家々から人の声が聞こえ、風が木々を揺らしている。いつもの景色。いつもの道。
けれど、森の奥で鳥の声が途切れた。
アポカリは足を止め、木々の向こうを見つめた。何かがいるのかもしれない。姿は見えない。ただ、近づきたくないと思った。
彼は少し迷ってから、森へ入るのをやめた。
それだけのことだった。誰かに話すほどでもない。鳥はすぐに鳴き始め、森はいつもの森に戻った。
その日、世界のどこかでは誰かが旅立ち、誰かが約束を交わし、誰かがそれを破っていた。小さな出来事が、誰かの明日を変えていく。
遠藤正義は、自分が正しいと思ったことを黙って見過ごすのが苦手だった。
余計なことをするなと言われても、面倒に巻き込まれても、見て見ぬふりをするよりは動いたほうがましだと思っていた。
彼はまだ知らない。自分の常識が通じない場所があることも、自分の正義を自分で選び直す日が来ることも。
遠い土地では、ひとりの少年が剣を握っていた。
何度振っても、思うようには動けない。それでも少年は構え直す。強くなりたい。約束を守れる人間になりたい。その願いが、いつか彼を故郷の外へ連れ出し、見たこともない土地と人々に出会わせることになる。
今はまだ、彼はそれを知らない。
歴史書には、戦争の始まった年が記され、王の名が残る。後世の人々は、出来事を並べて時代を説明する。
けれど、歴史が動く瞬間に生きる者たちは、自分が歴史の中にいるとは知らない。
誰かを守るための選択が、別の誰かを傷つけることもある。信じたことで救われる者がいれば、同じように信じて傷つく者もいる。それでも人は、迷いながら、自分の明日を選ぶ。
故郷も過去も信じるものも違う人々。その道が交わるとき、彼らは救い合うのか、それとも刃を向け合うのか。
ひとりの英雄だけで決まる世界ではない。
ひとつの正義だけで答えが出る世界でもない。
人間と魔族。旅立つ者と故郷を守る者。強さを求める者と、正しさを探す者。
それぞれの人生が、広大な世界のどこかで続いている。
そして、いつかその物語は交差する。
新たな物語は今、静かに紡がれる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
平和とは秩序であり、規律で出来ている。
各々が自分の役割を全うせず自由を選択するのならばそこに秩序も規律も生まれず平和はもたらされない。
今一度考えてみて欲しい。誰かが自由を選択する時その裏では誰かが不自由を強いられている。
そのものまた自由を選択するなら?
混沌の世界の出来上がりだ。
人々や魔族は自由を求めるくせに平和を蔑ろにする。ならば完全なる平和とはなにか。
それは選択の余地を与えないということだ。
自由を放棄すれば平和は訪れ全ての種族は争いのない世界を享受できる。
誰もそれをなさないのならばこの『私』が完璧な平和を与えよう。
仮にそれが『支配』と呼ばれようとも。
本作をお読みいただき、誠にありがとうございます。
「世界は、ひとつの物語で語り尽くせるほど小さくはない」
冒頭のこの一言が、本作『ルナーテ(仮)』のすべてを象徴しています。
私たちが生きる現実と同じように、この物語の世界にも、教科書に載るような英雄だけでなく、名もなき市井の人々がいて、それぞれの「正しさ」や「守りたいもの」を胸に生きています。
ある場所での何気ない選択が、遠く離れた誰かの運命を大きく変えてしまうかもしれない――そんな広大で、ままならない、けれど愛おしい世界を描きたいと思い、この物語を書き始めました。
森の前で足を止めたアポカリ、己の正義を貫こうとする遠藤正義、そして強さを求めて剣を振るう少年。まだお互いの存在すら知らない彼らの道が、これからどのように交わり、どのような火花を散らすのか。
彼らと共に、この広大な世界「ルナーテ」を旅していただければ幸いです。
次章からは、いよいよ彼らの運命が動き出します。どうぞ最後までお付き合いください。




