第12話 新しい装備
4月3日。
蒼太は昼前に、白峰探索者サポートセンターへ来ていた。
昨夜、届いた契約書類を確認して手続きを済ませると、今朝には前田から連絡が来た。支援用の装備が用意できたので、一度センターへ来てほしいという話だった。
案内された建物の中へ入ると、受付の奥にも何人か探索者らしい人の姿が見えた。壁際には大きな案内表示があり、トレーニングエリアやシャワールーム、食事スペース、休憩用の個室まで並んでいる。
「ここ、全部使えるんですか!?」
「白峰と契約している探索者の方なら利用できますよ。個室も空いていれば使えますし、食事もこちらで用意しています」
「すご……」
蒼太は案内表示をもう一度見た。
ダンジョンへ潜る前後に必要になりそうなものが、ほとんど同じ建物の中に揃っている。
「まずは装備を見ますか?」
「はい!」
前田についてエレベーターへ乗り、上の階へ移動する。
扉が開いた先には広いトレーニングエリアがあった。床は硬い素材で覆われ、奥には何本ものレーンが並んでいる。壁際には武器を振るための空間が取られ、その先には厚い標的や、サンドバッグのような大きな的が固定されていた。
すでに何人かが訓練している。剣を振っている男もいれば、少し離れた場所では弓を構えている探索者もいた。
「おおっ!」
蒼太の視線があちこちへ動く。
「上山さんの分はこちらです」
前田が近くのテーブルを指した。
置かれていたのは、黒を基調にしたリュックだった。
「これがアイテムバッグです」
「これ?」
蒼太はすぐに持ち上げた。
見た目は普通のリュックとそれほど変わらない。肩へ掛けても扱いづらさはなく、背負ったまま動くこともできそうだった。
「中に今回の支援品を全部入れてあります」
「全部? これに?」
「はい。かなり入りますし、中へ物を入れてもバッグ自体の重さは変わりません」
「マジですか!?」
これだけ中に入っているとは思えないほど、さっき持ち上げた時のバッグは軽かった。
蒼太はすぐにバッグを下ろし、開けた。
最初に出てきたのは、黒い鞘へ収まった一本の剣だった。
「おおっ!」
蒼太はすぐに手へ取った。
「これ、俺のですか?」
「はい。上山さん用に用意したものです」
引き抜くと、銀色の刃が照明を反した。
これまで施設で借りていた片手剣より、柄も鞘も作りがしっかりしている。蒼太は軽く握り直し、その場で少しだけ刃を動かした。
「これ、使っていいんですよね?」
「もちろんです。そのための装備ですから」
蒼太は剣を手にしたまま、すぐ近くの訓練スペースへ向かった。
前方に置かれた厚い標的へ立ち、何度か距離を確かめる。
踏み込んで、そのまま横から振った。
ザンッ!
刃が標的へ入り、重い音が返ってくる。
「おお!」
もう一度。
今度は下から斬り上げ、そのまま手首を返して上から落とす。昨日まで使っていた剣より振った時のぶれが少なく、途中で力を入れ直さなくても刃がついてきた。
「これ、めっちゃ使いやすい!」
「上山さんの体格や現在の能力も見た上で選んでいます」
蒼太はもう何度か振ってから剣を鞘へ戻した。
すぐにバッグの方へ戻る。
中から次に出てきたのは、身体へ沿うように作られた黒い戦闘服だった。厚みはそれほどないが、腕や胸、脇腹、脚の一部には別の素材が重ねられている。
「防具って、もっと硬いやつだと思ってました」
「金属製のものもありますが、探索では動きやすさも大事です。これはモンスター素材を使って、防御力を持たせながら動きを邪魔しにくいように作られています」
盾も入っていた。
さらに弓、斧、メイス。細長い杖まで出てくる。ほかにも撮影用のドローンや探索用の物資が入っていて、それでもバッグの中にはまだ余裕があった。
「こんなに?」
「基本的な武器は一通り用意しています。実際に使ってみて、今後必要なものを絞っても構いません」
蒼太は並んだ武器を見た。
剣以外は、まともに使ったことがない。
それでも一番近くにあった斧を手に取る。
両手で持って標的の前へ立ち、剣と同じ感覚で振ろうとした。
「……あれ?」
刃先が少し外れた。
もう一度振る。今度は当たったが、剣のようには動かない。
重さそのものは問題ない。けれど、振り始めてから狙った場所へ持っていくまでの感覚が違った。
「剣と全然違うな」
蒼太は斧を持ったまま、何度か構えを変えた。
昨日まで、剣を使えば剣術が伸びた。素手で戦えば体術が伸び、避け続ければ回避も上がった。
なら、これも使い続ければ何か増えるかもしれない。
斧を置くと、今度は弓へ手を伸ばした。
矢をつがえ、前方の的へ向ける。
引くところまではできる。
「これで……」
指を離す。
矢は飛んだ。
ただし、狙っていた中央からはかなり外れ、端の方へ刺さった。
「うわ、むず」
蒼太はすぐに次の矢を取った。
一本目より少しだけ姿勢を変え、もう一度弦を引く。
剣とは違う。
斧とも違う。
それでも、使えないわけではない。
目の前には、まだメイスも盾も杖も残っていた。
蒼太は二本目の矢をつがえ、そのままもう一度的へ向けた。
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