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防御戦闘

「攻撃続行!第1ならびに第2旅団は後退を開始せよ。」


第1師団計1000機は攻撃と後退を繰り返し敵の漸減に徹していた。


しかし130ミリ砲弾がそろそろ尽きようとしていた。


「第1旅団より報告、130ミリ砲弾残弾11%、これ以上の砲撃続行は不可能です。潮時かと」


アストラル号は4つの旅団からなる師団を4つ、合計4000機のヴァルキリーを保有している、そして各師団の司令部要員は中央航法戦闘司令室にて指揮を執る。


「了解した、第2師団と交代する。全機交代準備完了までは攻撃を続行せよ。」


「了解。」


第1師団は攻撃を続行しつつ離脱の準備を整えた。


10分後

「こちら第2師団第1旅団、これより参戦します。」


やってきた第2師団と順調に交代を終え、弾薬補給のために補給地点に向かった。


「一体どれだけ減らせたのやらな…」


移動中にドストエフスキーは夕陽に聞いた


「詳しい撃破数は司令部に問い合わせないといけないけれどそれでも3000は撃ち落としたはずよ。」


「守り切れるかどうか、怪しいラインだな。」


「他の師団と護衛艦隊を信じるしかないわ。早く補給して戦列に復帰しないと。」


とはいえ第1師団合計1000機の補給にはそれなりの時間がかかることは想像に難くなかった。


()

中央航法戦闘司令室

「第1師団で減らせたのは3200あまりか…、このままでは押し切られるな、レティシア中将、護衛艦隊の投入を。」


「私も同意見です艦長、護衛艦隊に通達!所定の作戦行動を開始せよ。」


()

アストラル号護衛艦隊旗艦武蔵

「司令部よりの作戦開始の指令を受けた、我が艦隊はこれより敵部隊の分断殲滅作戦を開始する、全艦機関出力最大、突撃開始!」


紡錘陣形で待機していた艦隊が速度を上げて接近するクリスタルの群れに対して突撃を敢行する


戦闘を行くフランス艦艇は前部に主砲の全てを配置しているためその突破力と攻撃力を買われて最前部に配置されていた


「守るものを守りきること、当たり前の責務を果たす!砲撃開始!我が砲は勝利のために!」


粒子加速砲の白銀の閃光が一斉に放たれる


護衛艦隊突入に合わせて第2師団はクリスタルの群れの頭を抑える


艦隊はクリスタルの群れに突入する、白銀の閃光と紫の閃光が入り乱れ各艦のシールドにも多数の光線が直撃していく


「艦隊まもなく敵中央部に差し掛かります!」


「中央部艦隊は正面に火力を集中、右側面艦隊は右舷に左側面艦隊は左舷に火力を集中、全武装をもって食い破る!」


さらに艦隊は火力を上げクリスタルを蹴散らしていく、徐々にクリスタルは分断されていく


「もう少しだ!撃ち込め!」


「クリーブランド、シールドが破られました!戦列から離れる!」


「クリーブランドへ通達、下方へ持てる推力を全て使用して退避せよ。と、後方艦隊はクリーブランド支援に火力を30秒間注げ!撃ち方始め!」


被弾により戦列から離れたクリーブランドは下方空間に全力退避を行い、撃沈を免れた。


「艦隊そのまま戦域を離脱、陣形を組み直し殲滅戦に加わる!」


()

中央航法戦闘司令室

「第3師団の準備はできているな?師団長」


「既に。」


「よし、第3師団も戦列に加わり分断したクリスタルの半数に対して総攻撃を仕掛けよ。」


ドレイヤーは分断したクリスタルの半数に対して2個師団を投入しての一挙殲滅に動き出す


「アドミラル、クリスタルの大型種は戦艦級と判明しました、いかがいたしますか?」


ミーミルが現れ判断を仰いだ


「戦艦級ならば急いで対応する必要はない、戦艦級はいまだ最後尾にいる、先に数を減らし、その後に艦隊戦に持ち込む、どうだ?」


「現状ではそれで構わないと考えますが、戦艦級が変異種の可能性もあります、予想外の長距離攻撃による全滅を避けるため配置をこのように変更することを進言します。」


ミーミルはやや間隔の空いた陣形を提案した


「分かった、この陣形でいこう。ヴァルキリーと戦艦に通達せよ。」


「了解しました、アドミラル。」


()

アストラル号ヴァルキリー格納庫

「お待ちしていましたよエバンズ大尉。」


「宮越さん?情報を頂けますか?」


艦長秘書兼副官の宮越が待機していた


「必要な情報はすべてリアルタイムで得られるようにしておきます、私の話はそれ以外にあります。」


「それ以外?」


「本来なら貴方は霜凪で出撃したいところでしょうが、今現在霜凪は定期メンテナンス中でオーバーホールされている。」


「ですからテンペストで…」


「クリスタルが何をしでかすか、ミーミルですら予想しきれていない、そんな状況で貴方の実力を発揮しきれないテンペストで向かう気ですか?」


「…まさか?」


以前見せられたあのヴァルキリーか


「明星は既に全改修を終了し、即座出撃可能体制で待機しています。」


しかし、あの機体は…


「明星の習熟訓練は受けていません、慣れていない機体の方がリスクが高い。」


「貴方は結城さんから受け取った霜凪が幼い頃から触れていたシミュレーターにどことなく"近い"と感じ、すぐに乗りこなせていたはずです、しかしシミュレーターと"同じ"でしたか?」


その言葉にふと感覚を思い出す


「確かに、レスポンスはコンマ数秒遅かった、加速も望むほどは出ていませんでした。」


そうだ、子供の頃からひたすら触れ続けたあの感覚と霜凪の機体の振る舞いにはリアルと再現という誤差では収まらない違いがあった、テンペストはもっと論外なのだが…


「貴方が触れていたシミュレーターの機体データは全て明星のものを元にしています、世界にたった4つしかないシミュレーター、そのうちの一つだったのです。」


「覚悟はお決まりですね?行きましょう。」


もし、その話がほんとうだったなら、ようやく思うままに飛ぶことができる、ケイはそう思った。


「あ、あの〜!エバンズ大尉!?」


あぁ、忘れていた


「クロエさん、HP03で待機、アントラセン中佐達と合流し中佐の指揮下に一時的に入ってください。」


「え?わ、わかりました!」


クロエさんは自分の機体に戻っていった


3次元エレベーターを乗り継ぎアストラル号上部、特別開発区画に辿り着く


ドアが開くと明星が起動状態で待機していた


「まずはコックピットに着座調整を終わらせます。」


コックピットに座る、あらかじめある程度調整していたのだろう、何も違和感はなかった


「4ミリだけ席を前に、それ以外は完璧です。」


席の調整を終えてスクリーン、ホログラムを起動する。


「完璧だ。」


機体の操作には何も困らなかった、その全てが最新鋭の機体と共通化されている。


「一つだけ注意を、この機体はよもや人の限界を超えた機体です、機体はいくらでも振り回せるが貴方の身体には緩和しきれない分の負荷がかかる、自分で自分を殺さないようにしてください。」


「僕は機体を振り回す側です、問題ない。」


「それは心強い、それでは貴方を宇宙に放ちます、どうか無事のご帰還を。」


「了解。000エバンズ、移動を開始します。」


反重力システムが起動し、機体が浮き上がる。


機体はロックされそのまま上に連れていかれる。


船外に出ると船体下部からカタパルトが現れた。


そのカタパルトに乗るとカタパルトは方向転換し主戦場の方角を向く。


「何度も言いますが、機体に殺されないでください。頼みますよ。」


「了解、000エバンズ出撃!」


カタパルトから放たれた機体はまるで自分の手足のようにこれまで以上に素直に動いてくれた。


()

「全艦砲撃続行!あと少しだ!押しきれ!」


護衛艦隊は分断したクリスタルと同航戦に持ち込み砲撃を継続していた。


第2、第3師団も弾幕を浴びせつづけている、クリスタルの数はその数を確実にそして急速に減らしていた。


「司令!後方に大型のクリスタルを多数確認!戦艦型クリスタル、数は16!」


予想は常に外れるもの、今回もそうだ。クリスタルの戦艦型は敵集団最後尾にいたはずなのに今は分断した部分まで前進してきている、高速航行で迫ってきたのだ。


「全艦反転180°!これより対艦戦闘へ移行する、全艦我に続け!」


先頭を航行していた武蔵は弧を描いて反転する、航続する艦艇も同じ軌道を辿り大型クリスタルに正面を向ける。


「中央司令部に通達、我これより敵大型種を迎撃する。と」


「大型種、なお接近中、速い!まもなく主砲射程!」


「砲撃を許可する、全力砲撃だ!撃ち方始め!」


艦隊は白銀の閃光を放ち、さらなる戦いの火蓋を切った


()

「こちら第2師団、予定宙域の全目標の殲滅を完了。損害機なし、これより補給に入ります。」


「こちら第3師団、任務達成、損害機なし、補給に入る。」


戦闘開始より3時間後、クリスタルの半数を撃破することに成功した。


「思っていたより順調だな。」


レティシア中将の言葉は中央司令部の全員の気持ちであった、分断した前方部は確かにアストラル号に近づいたものの砲撃距離に入る前に全て撃ち落とした。


「ただ、何故やつらは分断された部分との合流を行う様子を見せなかった?ミーミル、分析しろ。」


「承知しましたアドミラル。……考えられる可能性として、護衛艦隊突入時に後方部隊にも損害が発生しておりそれが足枷となった可能性、もしくはクリスタルが彼ら半数を切り捨てる判断をした可能性の二択です。」


「半数を切り捨てるなど合理的ではないぞ。」


「いえ、これが大規模な陽動であった場合、必ずしも非合理的とは言えません、我々は投入戦力の大半を彼らの殲滅にあてましたから。」


その時である、

「左舷側より接近する高速少数の物体を確認!画像識別、クリスタルです!距離100万キロを切りました!」


「何だと!?」


「クリスタルの別動隊と判断します、彼ら少数でも本艦に甚大なダメージを与えることは可能です。」


「迎撃部隊を回せ、シールド全開!個艦防御兵装の使用を許可する。」


ドレイヤーは困惑していた、いつ、どのタイミングで回り込んでいたのか、こちらの索敵網を潜り抜けて。目的は?ただの脅しか、それともあの少数は…


「警告、警告、左舷側通路にはコンサートよりの待避民が停滞しています、D12 13 14 15番隔壁の解放を進言します。」


「何!?何故まだ残っている!くそ、構わん、解放しろ、退避を急がせるんだ!」


この時、ステラリスのコンサートにいた人達は艦内各所の隔壁閉鎖に伴い避難経路が全て遮断されていたのだった。


「艦内非常事態宣言に伴い、全隔壁が閉鎖され避難誘導が不可能な状態となっていたようです。」


「おいミーミル、何のためのAIだ、気づいたら早く解放しないか!」


「現在、戦闘並びに航行支援に全リソースを投入しているため艦内までの把握は現バージョンでは不可能です。」


アストラル号は想定外の危機に突如として引き摺り込まれたのであった。

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