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水色のベルと緑色のベル  作者: 朱井笑美


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 冬が過ぎ、また春が来て新入生が入学して来た。僕の一つ下の妹も入学して来た。僕は手紙で両親、特に母から妹の面倒をしっかり見るように言われていた。

 殿下にそれを伝え、妹に会いに行ってもいいか尋ねると、殿下は「ベルの妹かい?私も会ってみたいなぁ。一緒に行こう」と面白そうに仰った。

 大丈夫だろうか?1年生の教室に殿下や側近が押し掛けたら新入生が怯えてしまうのではないか?

 婚約者の令嬢もいい顔をしていない。しかし殿下はワクワクした様子で1年生の教室に向かい始めてしまった。僕は慌てて殿下を追いかける。令嬢も渋々付いてきていた。


 案の定、1年生の教室に動揺が広がっている。にも関わらず殿下は子爵令嬢はいるかい?と入口近くの生徒に聞く。教室は入学式を終え、これからクラス毎に先生の話が始まる前の慌ただしいタイミングで、殿下達の訪れに1年生の生徒達がキャアキャア言いながら集まって来ていた。

 

 婚約者の令嬢も護衛の生徒も眉を顰めている。僕は早くこの場を立ち去った方が良さそうだと思って、「殿下、後で僕だけで来ますから、戻りましょう」と言った、その時に「お兄様!」と妹が金の髪を靡かせて教室の奥から現れた。


 殿下も側近達も妹を見て動きが止まる。「あぁ、さすがベルの妹だな」と誰かが言った。

 殿下が「君がベルトルトの妹かい?」と聞くと妹は「はい。ララベルと申します。兄がお世話になっております。これからも宜しくお願いします」とスカート摘み礼を取りながら元気に言った。

 家族には僕が殿下と共に行動していることを手紙で伝えていたから、ララベルは直ぐに彼らが誰か察したのだろう。

 

 殿下はララベルの様子に気を良くされたのか「君もこの後、教師からの説明が終わったら私達に加わるといいよ。私達は多分カフェテリアにいると思うから」と仰った。

 ララベルは僕の顔を見て少し戸惑った様子で「お友達と校内を見て回ろうと思ってますので」と言うと「なら友達も連れてくるといいよ」と仰った。

 令嬢がハッと顔を上げて何かを仰ろうとされたので、僕が先に言う「殿下それはなりません」と。

 ララベルも僕が困っていると思ったのか「殿下のご配慮ありがとうございます。友達に相談致しますので失礼します」とまた教室の奥に戻って行った。


 ララベルはそれからカフェテリアには友達数人とチラッと顔を出して殿下に会釈をして去ろうとしたので、殿下がご自身の側近数名に「彼女達を案内してやれ」と言って、ご自身はそのままカフェテリアで過ごされた。婚約者の令嬢は少しホッとした顔をされていた。

 しかし、この側近達がララベルを気に入り、これから共に行動するよう色々働きかけるのだ。

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