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水色のベルと緑色のベル  作者: 朱井笑美


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「ルト、今日は朝食後、直ぐに婚礼の衣装合わせだから、朝の鍛錬は早め切り上げるよう殿下を呼びに行ってくれ」「はい承知しました。直ぐに行って参ります」

 ベルトルトは今、王太子殿下の侍従として王城で働いている。最近、やっと見習いが取れた。起床後はいつもライオット卿と王太子宮の中庭で身体を鍛えている殿下を走って呼びに行く。


 本当は自分も殿下と共に身体を鍛えたいのだが、なぜか殿下の婚約者を中心に皆に止められてしまった。「マッチョの妖精はダメ!」そんな理由で。

 だが毎日忙しく王城内を走り回っている。それで運動量は十分足りている気はする。

 

 自分は地方の子爵家の出で本来は王太子殿下の侍従など身分相応ではない。先輩方は皆、伯爵以上の出身者ばかりだ。たまたま殿下と同学年でクラスも同じだったことから機会を得た。


 “殿下のお気に入り”と言われてきたが、ただ真面目なだけで面白味の無い自分の、殿下は何を気に入って取り立てて下さったのか分からない。


 学院のクラス分けは成績順だった。子爵家の家庭教師は優秀だったようで、入学テストは割と上位の結果だった。だから殿下方と同じクラスになれたのだろうが、まさか席まで殿下の隣りだとは思わなかった。

 初めて会った王族に失礼にも目を見開いて見入ってしまった覚えがある。とても眩しい方で、こんな方がいらっしゃるのだと思ったのだ。

 しかし、なぜか殿下も僕を同じように見つめてらっしゃって、婚約者の令嬢が間に入って「男同士見つめ合うのは止めて下さい!気持ち悪いわ」って言うまでお互い確かに見つめ合ったままだった。

 

 殿下は「マレシアナ、彼は誰かに似ていると思わないか?あぁそうだ!兄上だよ。兄に似ていないか?」と言って、気さくに「一つ上に兄がいるのだが騎士学校に行ってしまってね。気軽に会えなくなって寂しい」とそう教えて下さった。それが僕と殿下との最初の出会いだった。

 

 それから殿下は側近達と一緒に、僕まで昼食や行動を共にすることを望まれ、いつの間にか殿下と一緒にいることは当たり前になってしまった。

 もちろん自分の事を偉くなったとか勘違いしてはいけないと解っている。婚約者令嬢も側近達も厳しい目で僕を見ていることに気づいているし。

 ただ殿下が僕をお誘い下さるので断れないだけなのだ。多分、殿下は兄君に似てるらしい僕を寂しさのあまり側に置いているだけなのだろうと思っている。 

一時期の気まぐれだろうと思っていたはずなのになー。

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