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 夕暮れ時の今、私は一仕事終えられたお兄様とご長男様5歳と一緒に一心不乱に木刀を振っている。もう冬になろうという晩秋の冷たい風が心地良い。

「マリベル、侍女になるんじゃ無かったの?」もう何度も鍛錬に参加しているマリベルに、お兄様が当然の疑問をぶつけてくる。

「そうなのですが邪念を払いたくて」と言うと「僕はマリィちゃんと鍛錬できて嬉しいよ」ご長男様の笑顔が眩しい!これも参加の理由だ。お陰で邪念の浄化が早まってありがたい。


「マリィは聖女候補の侍女に決まったんだもんな。もしかして、そのことで母と妻に何か吹き込まれたのかい?あの2人は、確か以前、聖騎士が主人公の読み物や観劇にハマっていたからね」困り顔でお兄様が言う。


「聖騎士様よりも近衛騎士様の方がカッコいいんだぞーっ」と言うご長男様の木刀を持つ手に力が入るのと同時に「家に妖精が来てるって?!」と飛び込んで来た男がいた。

「お前、何ヶ月振りに帰ってきたの?」というお兄様を華麗にスルーして「おぉ!俺の妖精マリィ!」と、私の振る木刀を軽々片手で払って侯爵家次男が私を抱きしめてきた。そういえばこのお方、近衛騎士で王太子殿下の護衛の隊長様だったかも。

 気付いたら次男様に抱き込まれていただけでなく頭に頬擦りされている。

「ヤバーい、王女様より可愛くね?」いやヤバいのは次男様の発言と言葉遣いですよ!という言葉を呑み込んだが、お兄様が代弁して言って下さって安心した。


「マリベルは聖女候補の侍女に決まってね。春から大神殿に行くんだよ」夕食後のお茶の席で小侯爵様が次男様に説明した。

 ちなみに私はなぜかずっと次男様の膝の上に抱えられ頭を撫でられている。せっかく鍛錬で払っていたドス黒い邪念が次男様のせいで湧きまくっている。

「嫌だよぉマリィ」と次男様、「えっ嫌とかじゃないからね」とお兄様が言った。横から「僕もイヤー」「わしもイヤー」と5歳児と50歳児が立て続けに叫んで、私も「嫌だ」と叫びたくなった時、侯爵夫人が次男様に「あなた何で帰って来たの?」と嫌そうに聞いている。家族なんじゃないんですか?


 次男様は普段は王太子殿下のところに、直ぐに駆けつけられるよう王城の一室に住んでいるのだそうだ。「父が城に来た時、我が家に妖精がいるって自慢してくるんだよ。俺も癒しが欲しい。はー癒される」また私の頭への頬擦り攻撃に変化した。


「えっ王太子殿下は大丈夫なの?」もう、まともな男性はお兄様、あなたしかいないのかも。「春まで有給を入れる。もう何年も休んでないから」それは確かに可哀想だ。だけど何のため?

「へー楽しそう、三男も隣国から呼ぶ?」とお姉様。侯爵家三男様は外交官として今は隣国にいらっしゃる。「そうねぇ。でもいきなりは無理じゃないかしら」「やっぱそうだよなーワッハッハ」と笑い合う侯爵家の人々。


「じゃあさ領地の爺様、婆様は来るんじゃない?」いや待て!なんで私ごときに一族全員集まろうとするの?これ以上はカオスじゃないか!

 確かに私の祖父母でもあるのだけれど、止めて欲しいと表情に出さずに耐え忍ぶ。頭への頬擦り攻撃はまだ持続している。マリベルは無の境地を必死で保つ。

 

 そこは侍女としての忍耐が培えたのかもしれないけどさ。でも口は間違いなく悪くなったと思う。女神様、マリベルの忍耐は試練の始まりなのでしょうか?

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