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 マリベルが初夏に聖女候補の侍女を希望して半年、秋も深まる頃、マリベルは3ヶ月程前から親戚の侯爵家に身を移し、聖女の侍女になるため高位貴族の侍女の見習いを始めていた。善は急げなのである。


 侯爵様は父の一番上の兄で伯父にあたり喜んでマリベルを迎えてくれた。父は男ばかりの5人兄弟の末っ子で、伯父と父は12歳離れている。

 伯父のところも息子ばかり3人なので、まだ14歳のマリベルが可愛くて仕方ないのか「侍女なんて止めて伯父さんの養女にならないか?」と顔を合わせる度に目尻を下げて言ってくるのだ。


 聖女の侍女の申し込みの前に言ってくれれば…と思わなくもなかったが、自分の人生は他力本願ではダメだ!と思い直し、それでも「侍女になれなかった時は、よろしくお願いします」と滑り止めのように頼んでおいた。

 もちろん両親を裏切る気はない。伯母の侯爵夫人も小侯爵夫人(お姉様と呼んでと言われている)も、とても良い方で高位貴族のマナーをしっかり教えてくれる。マリベルは侍女見習いなのだが、なぜか毎日、可愛いドレスを着せられてお茶会に駆り出されている。そしてなぜか目尻を下げた伯父もいるのが日課となっているのだった。


 それから1ヶ月、待ちに待った神殿から聖女候補の侍女の内定通知が届いた。

 しょんぼりする伯父を横目に、私は伯母とお姉様と喜びを分かち合った。これも家庭教師の先生と侯爵様の推薦状のお陰だ。


 通知を運んでくれた神殿の使者様によると、侍女の選抜は30倍だったのだとか。聖女候補6人に対して6人の侍女なのだ。平民も希望できるし、その倍率は当然だろう。聖女候補は家の侍女は連れて行けず、独りで神殿に入らないといけない。身の回りのことを1人でこなせるようになることも必須だ。それでも貴族令嬢であるということと、聖女教育に集中するために生活の補佐の役目で侍女が1人付くのだ。まさに2年間、聖女候補と侍女、2人3脚の生活だ。


 もしかして他の聖女候補や侍女たちの間で、落とし合い貶し合いの闘いとかあるのかしら?!とマリベルが想像を膨らませているところに、お姉様が「想像以上の倍率ねぇ。王太子殿下の存在を抜きにしても、聖騎士様の存在は大きいわよねぇ」と仰った。マリベルの理解が追いつかないタイミングで「もちろんマリベルも聖騎士様との出会いが狙いなんでしょ?学院の青臭いお子ちゃまより、はるかに魅力的だものね」とニマニマして仰った。

 お姉様のその発言に、更にショックを受けている伯父を横目に、伯母は「聖騎士様、素敵よねぇ。かつて憧れたわ」と溜め息交じりに呟いた。


 伯母もお姉様も自分の対象年齢の時に聖女の選出が無く、聖騎士様とは無縁だっそうだ。「マリベルが羨ましいわぁ」と散々、2人に言われた。貴族の間でも恋愛結婚が普通になった今、侯爵家嫡男を落としたお2人に言われてもと思ったが、今回退任される聖女様は今23歳で、その前の聖女様も2人の年齢とは重なってなかったなと思った。


 伯母もお姉様もいつの間にか聖騎士様はどこへやらで、現聖女様の話で盛り上がり始めた。これは長くなるなとマリベルは、そっと4人のカップにお茶を注ぎ足しながら話を聞く。聖女様は候補期間も含め8年間聖女を勤め上げ、2年後に王弟殿下とご結婚されるのだ。王弟殿下は御年28歳。22歳の時に17歳の聖女様を見初め、6年間もお待ちなのだとか。結婚まであと2年「純愛〜‼︎」と悶えている2人を尻目に、マリベルは未だ打ちひしがれている伯父に「うちにもう1人妹がいますよ」と囁いておいた。女神様、マリベルは妹を売ってしまいました。懺悔します。

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― 新着の感想 ―
侍女になるのは難しい的な雰囲気だったからダメなのかも? と、思っていましたがなれたのですね。 皆、聖騎士を狙っているのが、その人気の高さを伺わせます。 (*´ω`*)
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