第41話:披露
「童はルーと申したな。なかなかの実力者だ。まさか、これほどの武器を造れるとは……我輩の目も曇ったものよ」
「あ、ありがとうございます」
父母に<回復ポーションS>をかけていたら、皇帝様はお褒めの言葉を続けてくれた。
急に廊下の方が騒がしくなった。
何人もの大臣が入ってくる。
「「皇帝陛下! 大変です! 攻撃を受けております! 今すぐ避難を……!」」
「落ち着け。敵の攻撃ではない。この童ルーが造った武器の威力だ」
皇帝様が私を指す。
集まる視線。
大臣たちはみな、ポカンと気の抜けた表情だ。
「「お、恐れながら申し上げますが、こんな幼女が何をしたというのでしょうか」」
〔こらっ! 幼女幼女って、ルーは子どもでもそこら辺の子どもちゃうんやで〕
〔天才児……〕
リリスとディーガードを見て、さらに固まる大臣たち。
しかし、皇帝様だけは興味深そうに凄みのある笑みを湛えている。
「童ルー、その者らはなんだ?」
「私が造ったゴーレムです」
〔わてはリリスっちゅうねん! よろしゅうな~、オッサン!〕
〔我が名はディーガード……汝の名は……?〕
リリスたちのフランクな話し方に戦慄する一同。
私も大慌てで謝罪する。
「も、申し訳ございません、皇帝様! 大変失礼なことを……! リリス、ディーガード! もっと丁寧に!」
〔なんでぇ? オッサンはオッサンやん〕
〔真実……〕
「だから、そうじゃなくてっ」
必死に諭すもまったくわかってくれないリリスたち。
ああ、もうどうしよう。
と思ったら、皇帝様が静かに笑いながら言った。
「別に気にせんでいい」
「あ、ありがとうございます」
皇帝様の大変ありがたいお言葉に、私たちはみな心底安堵した。
そして、次に言われたのは意外な言葉だった。
「それより、もっと別のゴーレムを造れるか?」
「ええ、いくらでもお造りできますが……武器じゃなくていいのですか?」
てっきり<すぺしゃるびーむがん>をもっと造るよう言われるのかと思っていた。
「もちろん、武器も造ってほしいが、それよりも兵士たちの代わりになるような強者を造ってくれ。なるべく犠牲は出したくないのだ」
「わかりました。すぐに錬成します」
そうか、いっそのことゴーレムの方がいいのか。
<すぺしゃるびーむがん>は遠距離攻撃できるけど、魔族に近づかれたら危ないもんね。
直接戦わない方が安全なのだ。
そうと決まればさっそく錬成しよう。
ディーガードから土と水の瓶を貰ったら、皇帝様が怪訝な顔で言った。
「……それはなんだ?」
「素材の土と水です。この2つさえあればなんでも造れるんです」
「ほぅ……」
相変わらず茫然自失の兄皇子や、キョトン顔の大臣たちの前で錬成陣を描く。
錬金術の腕も、今では全盛期と同じくらい……いや、それ以上にまで戻った。
素材の量を大幅に超えた魔道具だってたくさん造れる。
……本気でやるか。
「<アルケミー>!」
錬成陣から白い光が放たれたと思ったら、次の瞬間には何体ものゴーレムが姿を現した。
どれもディーガードと同じくらいの大きな鎧騎士。
いや、さらに1.2倍程は大きい。
<錬金魔道具・ルーのごーれむ3号機 (指揮官タイプ)>:SSランク。頭脳明晰。一を聞いて万を知る。頭部の出っ張りから周囲のゴーレムと意思疎通する。伝達域は非常に広範囲。リアルタイムで戦況把握と的確な指示ができる。
<錬金魔道具・ルーのごーれむ4号機 (一般兵タイプ)>:S⁺ランク。装備は剣と盾。Sランクのモンスターでさえ至極簡単にねじ伏せるほどのパワー。ただのパンチで山をも砕く。盾から増幅したルーの魔力を飛ばすこともでき、遠距離攻撃も可能。
<錬金魔道具・ルーのごーれむ5号機 (ドラゴンタイプ)>:S⁺ランク。飛翔できるゴーレム。旋回や急降下などの小回りも得意で、戦場の制空権を支配する。炎、水、氷、雷など多種多様な属性のブレスを吐き、敵を殲滅する。
「「え、SSランク!! おまけに、なんだそのアイテムたちは! 全てSランク以上ではないか!」」
数々の錬金魔道具を見て驚愕する兄皇子と大臣たち。
皇帝様だけはまったく動じていないようだ。
玉座から下りたと思うと、興味深そうにゴーレムや武器を観察している。
「これら全てが貴様の命令を聞くのかね?」
「ええ、そうなりますね。まぁ、命令というよりお願いごとと申しますか……自律機能を持たせておりますので、自分で考えて行動できます」
今回のゴーレムたちも自我がある。
前線に派遣すれば良い働きをしてくれるだろう。
「もっとたくさん造れるか?」
「はい、土と水がもっとあればいくらでも造れます」
「ふむ…………素晴らしい」
皇帝様は満足気な恐ろしい微笑みを浮かべる。
ゴーレムたちと武器をいたく気に入ってくれたようだ。
「クアトロ」
「は、はいっ。何でしょうか、父上」
ずっと石ころみたいになっていたクアトロ皇子が意識を取り戻す。
「よくぞこんな人材を見つけてきたな。褒めて遣わす。今後も精進せい」
「ち、ち、父上っ! ありがたき幸せ……!」
歓喜の涙を流すクアトロ皇子。
お父さんに褒められて良かったね、皇子。
兄の面々は悔しそうに私たちを睨んでいた。
「そして、童ルーの両親よ」
「「は、はぃっ!」」
皇帝様の注目を浴び、父母の表情が凍りつく。
「このような天才児を生み、育てた功績は高く評価される。よくぞここまで育てたな」
「こ、皇帝陛下、なんてありがたいお言葉でしょうか……! 心より感謝申し上げます……! うちの娘の素晴らしさと可愛さが、陛下にも伝わる日が来るのは確信しておりましたが、思ったより早く訪れたのもルーが可愛いからで……」
「な、なんともったいないお言葉……! 私たちはこの日を忘れることはありません! それも全てルーちゃんの天才っぷりと可愛さのおかげでして……」
前半は皇帝様のお言葉に粛々と感謝を述べていたのに、後半からはいつもの親バカ話(早口)が始まるのはさすがの父母だった。
「すぐにでも軍事会議を開くぞ。急ぎ、全体の作戦を立て直す必要がある。各部隊の司令官を集めろ」
「お、お言葉ですが、父上」
会議……と聞き、父母たちがドキリとしていたところで、クアトロ皇子が声を上げた。
「なんだ、クアトロ」
「ルー嬢とご両親は長旅で疲れております。さすがに休憩なしで会議は酷かと……」
「ふむ……それもそうだな。では、昼食後に軍事会議を開くとしよう」
皇帝様の言葉に、父母はホッと一息ついていた。
ありがとう、クアトロ皇子。
コモン家はメトルドさんに案内されながら食堂へ向かう。
〔ルー、会議やって〕
「緊張するね」
〔……ドングリ食べながら聞いてもええかいな〕
「ダメに決まってるでしょ……」
前世では何度か国の会議に参加したことはあるけど、今度の人生でもうまくお話しできるかな。
ということで、コモン家の進化した食事よりさらに豪華な昼食を終え、少し休憩した後、魔族との戦闘に向けた会議が開かれることになった。
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