第39話:王宮と皇子たちと皇帝
「みなさん、長旅お疲れ様でした。王宮に着きましたよ。さあ、どうぞ下りてください」
「「……うわぁ」」
5日ほど馬車に揺られて、私たちは巨大な王宮に着いた。
庭園みたいなお庭の奥にある横長の宮殿。
屋根はシックなブルーで壁はホワイトな色合いが、非常に清潔感のある印象だ。
コモン商店が100個くらい入りそうな大きさなんですが。
さすがはブランニュー帝国の宮殿だ。
「では、さっそくですが、父上に紹介するので来てください」
「「え! 今からですか!?」」
さらりと言った皇子に驚愕の声を上げる父母。
そりゃ驚くよ。
「ええ、こういうのは早い方がいいですからね」
「「そ、そんな……まだ心の準備が……」」
「大丈夫だよ、私たちがついているから」
〔そうやで。安心しぃ〕
リリスと一緒になだめるも、やはり父母はものすごく緊張しているようだ。
「さて、荷物はここで引き取ります。機織り機……も部屋に運んでおきましょう。おい、これを運んでくれ」
皇子の合図で使用人たちが集まる。
機織り機が運ばれるわけだけど、意外なことに終始静かだった。
安心しているのかもしれない。
皇子とメトルドさんに案内されるコモン家。
格子状にタイルが敷かれた、これまた巨大な廊下を進む。
一歩進むたび、父母の震えや冷や汗がひどくなってきた。
「だだだだ、大丈夫かな。こここ、皇帝様と謁見なんてこの人生であるとは思わなかったよ」
「どどどど、どうしましょう。こここ、皇帝様って一番偉い人ですよね」
「心配しなくて大丈夫だよ、お父たま、お母たま。皇帝様が話したいのは私だろうだから」
「「そそそ、そうは言っても」」
いくら大丈夫と伝えても意味がなかった。
父母の心境を思うと私も不安になる。
そ、卒倒しないよね?
数分歩くと、これまた重厚な扉の前に来た。
両脇には強そうな衛兵、ディーガードの数倍は大きな扉だ。
「「ききき、緊張するなぁ……」」
冷や汗を極限までかいている父母。
もう服がびっしょりだよ。
……って、あれ? 皇子も同じような感じじゃない?
我らがクアトロ皇子も、父母と似たような状況になっていた。
なんで?
さっきまであんなに余裕そうだったのに。
「クアトロ様、王の間に着きましたぞ」
「そ、そんなことはわかってるよ。父上にお会いするのは久しぶりだから緊張しているんだ」
小声で話しているけどしっかり聞こえてくる。
ふーん皇子は皇帝様と会っていなかったんだ。
遠征とか行っていたのかな。
メトルドさんは皇子の背中をグイグイ押す。
「ほら、早くしてください。みなさんお待ちですよ」
「ま、待て。入る前に今日の運勢を占う」
「ですから、それはおやめくださいっ!」
いきなり床で謎のカードを並べ出した皇子と、それを止めるメトルドさん。
どこかで見たような光景だなぁ。
そして、目の前で奇行が繰り広げられているにもかかわらず、衛兵たちは眉一つ動かさず廊下を見ている。
すごいプロ根性だ。
「よ、よし、入るぞ! 門を開けーい!」
決死の表情で指示を出す皇子。
相手は皇帝だもんね。
そこまでして気合いを入れないといけないのだ。
ズズズ……と重そうな扉が開き、王の間が明らかとなった。
両脇から父母の悲鳴に近い声が聞こえる。
「ひぃぃ、皇帝様だぁぁ。怖いぃぃ」
「そういえば、ご挨拶の言葉を考えてなかったわぁぁぁ」
〔へぇ~、ごっつ広い部屋やんなぁ〕
〔至極広大……〕
奥にある巨大な玉座に、これまた大柄な男性が座っている。
重たそうな口髭に服を盛り上げている筋肉質な身体。
くすんだ金色の髪、鋭い黄金の瞳は猛禽類を連想させた。
ブランニュー帝国、皇帝。
この国で一番の権力者。
「お、お久しぶりでございます、父上。クアトロでございます。魔族との戦いに向けて、有力な人材を連れて参りました」
「お前の顔など忘れたわ」
一蹴する皇帝様。
あっという間に皇子は泣きそうになった。
え、いつもこんな感じなの?
にしては、ずいぶんとひどいような……。
「へぇ、あのクアトロが部屋から出てくるなんてなぁ」
「引きこもってていいんだよ? 無理しないでね」
「君は外に出ない方が世のためでしょう」
ズラズラズラっと、玉座の後ろからクアトロ皇子みたいな格好の人たちが出てきた。
だ、誰?
なんだかすごく偉そうな人たち……。
「ここにはお前の居場所なんかねえよ」
「ス、ストーファ兄さん……」
赤みがかった短い金髪の男性。
皇帝様ほどではないけれど、かなり筋肉質な人だ。
「役に立たずは早く帰りなって」
「カ、カンド兄さん……」
爽やかな雰囲気の男の人。
前髪をサラッとさせながら言っていた。
「ごきげんよう。次会うのはいつになるかわかりませんが」
「サ、サーディー兄さん……」
片眼鏡をかけた長髪の男性。
中性的な見た目も相まって、毒のある言葉がすごいギャップだった。
「あ、兄上方……どうか、そのようなことはおっしゃらないでくださいませ……」
どうやら、みんなクアトロ皇子のお兄さんだったらしい。
兄弟仲はあまりよくないのかな。
クアトロ皇子への当たりがすごく強い。
「クアトロ、まさかとは思うが、そのガキがお前の探してきた人材かぁ? 俺は北の剣聖を連れてきたぞ」
「僕は西の英雄」
「私は南の大賢者を」
三人の兄たちから見下されたクアトロ皇子は、ほとんど泣きそうな顔で私を前に出す。
「ぼ、僕は東の錬金術師を連れてきました。ほら、挨拶を」
「ルー・コモン。5歳です」
「「……あはははは! 5歳!?」」
一瞬の静寂の後、爆笑に包まれる王の間。
私たちの会話を聞いて、玉座の皇帝はもはやため息を吐いていた。
〔なんや、失礼なやっちゃなぁ。ルーはすごいんやで〕
〔不服……〕
「しょうがないよ。私はただの幼女なんだし」
兄皇子たちが大笑いしているので、リリスたちの会話には誰も気づいていないようだ。
「念のため尋ねるが、貴様には何ができるのだ」
「このような武器を造れます」
子どものおもちゃみたいな<すぺしゃるびーむがん>を差し出す。
がっかりした様子の皇帝様と笑いを抑えている兄皇子たち。
「それはなんだ……?」
「光のビームを撃つ武器です」
「意味がわからん。ここでやってみせろ」
「い、いえ! それはできません! すごい威力なので、こんなところでやったら王宮が壊滅してしまいます!」
耐えかねたように、兄皇子たちが馬鹿笑いしている。
クアトロ皇子は真っ赤な顔で俯いていた。
「すごい威力ねぇ……だったら、あの山を使えばいい」
子どもの戯言だと思っているのか、やる気のなさそうな感じで遠方の巨大なはげ山を指された。
あそこに撃てという意味らしい。
「……人とか動物は住んでいませんか? なにぶん、途方もない威力でして……」
「生き物なんぞおらん。立ち入りも禁止してあるから人もいない。さっさとやりなさい」
皇帝様はもう私に興味がないようだ。
だけど、誰もいないのかだけはきちんと確認しておきたい。
「あ、あの……本当にいいんですか?」
「ああ、構わん。早くしたまえ」
呆れ顔の皇帝様。
父母は立ったまま気絶していた。
「お子ちゃまが何するんだろうなぁ?」
「おままごとでもするんじゃない?」
「家で遊んでいればいいものを」
周りの兄皇子たちは、ヘラヘラと私を見下している。
まぁ、そりゃそうだよね。
こんな幼女がやってきたんじゃ。
でも、クアトロ皇子のため、何より父母のために頑張るぞ。
ダイヤルをMAXにセット!
両手でしっかり持つ!
からの~……トリガーを引く!
「それっ!」
るるるるる……と可愛い音がして、光線がぴゅーん! と山に飛んで行った。
その様子を見て大爆笑する兄皇子たち。
笑い声が響く中、光線が山で弾ける。
「「花火かよ。これだからお子ちゃまは……うわああああっ!」」
ドーン! と地を揺らすようなとんでもない大轟音が鳴り響き、ものすごい爆風がここまで吹いてきた。
光線が弾けたところは、ゴゴゴゴ……と天高く光の柱が立ち上っている。
端っこが見えないくらいの巨大な光の柱。
ど、どこまで続いているの?
遥か上空過ぎて私にさえわからなかった。
轟音と爆風で目覚めたのか、父母もあわあわしている。
「や、山が大変なことになっちゃった。弁償しないといけないのかな。でも、ルーの素晴らしさを証明できたわけだから、むしろお金を貰えるはずだ」
「そ、そうよ。ルーちゃんの天才っぷりを目の前で見れるなんて、これ以上ない幸せなことなんだから」
〔めっちゃキレイな景色やなぁ〕
〔美麗……〕
光が収まると……山は消えていた。
完全消滅。
光の柱があったところが、そっくりそのまま抉られているのだ。
「な、なんだよ、あれ……」
「嘘でしょ……」
「あ、ありえない……」
「「あわわわわ……」」
茫然自失とした様子の兄皇子たちと父母。
反面、リリスとディーガードは誇らしげだ。
「……とまぁ、こんな感じなんですが……」
「ふむ……我輩はお前が気に入ったぞ」
そして、どうやら皇帝様には気に入れられたらしい?
父母が卒倒したのは言うまでもない。
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