第21話:副産物
「これくらいあればいいかな」
「ああ、十分過ぎるぞ、ルー」
「ありがとう、ルーちゃん」
パジャマを乾かした後、小型乾燥機を3個錬成した。
コモン商店で販売するためだ。
実際の需要がどれくらいあるかわからないので、まずはお試しで造ってみた。
「「じゃあ、行ってきま~す」」
「気を付けてね~」
荷物を持ってコモン商店へ。
相変わらず、道中のディーガードは目立つけど、意外にもそれほど騒ぎにはならなかった。
街には冒険者も出入りするので、その類の人だと思われているようだ。
お店に入ると、さっそくアイテムを窓際に並べる。
「売れるといいね、お父たま」
「そうだな。しかし、雨がそろそろ止んでくれると助かるんだが……」
〔止みそうにあれへんなぁ〕
〔雨強し……〕
朝から降り続けている雨は、一向に止む気配がない。
天気が悪いと客足も遠のくので、雨の日はさらに売り上げが少ないのであった。
それどころか、時間が経つにつれどんどん雨足が強くなってくる。
「なんかどしゃ降りになってきたね」
「ううむ……せっかく、ルーが新商品を造ってくれたというのに」
〔お客さんが来えへんと、売れる物も売られへんね〕
各々やるせない気持ちで外を眺めていたら、カツカツカツッ! と石畳を走るような音が聞こえてきた。
お店の前で音が止まると、ガチャッと扉が開かれる。
「「こ、こんにちは~」」
しずしずと、三人の令嬢が入ってきた。
みんな薄い緑や青色、茶色などの落ち着いたワンピースを着ている。
年は15、6歳くらいかな。
いずれも貴族か、裕福な家の娘さんという感じだ。
「雨がすごく降ってきちゃって……すみません、少し雨宿りさせてもらえませんか?」
「ああ、いいよ。今日は天気が悪いねぇ」
父は快く了承する。
優しい申し出に安心したのか、令嬢たちはホッとしながら体を拭いていた。
しかし、やはり雨足が強かったためか、ワンピースの裾は重く濡れている。
令嬢たちも困った様子だ。
「せっかく新しいワンピースを買ってもらいましたのに台無しですわ……」
「ええ、まさかこんなに降ってくるとは……」
「お気に入りのお洋服が濡れると気持ちも沈んでしまいます……」
彼女らの会話を聞いていたら閃いた。
これは小型乾燥機を売り込むチャンスだぞ。
「すみません、私はコモン商店のルーと申しますが、ちょっとよろしいですか?」
「「うん、どうしたのかしらお嬢ちゃん?」」
「お洋服が濡れて大変お困りだと思います。ですが、こちらの商品を使えばすぐに乾いてしまいますよ」
「えっ、そんな商品が?」
棚から小型乾燥機を取り出す。
私が見せると、令嬢方は興味深げに眺めていた。
「これは<ポータブル式ミニ乾燥機(静音タイプ)>という商品です。持ち手のでっぱりを押すと、魔力を消費して温かい風が出てきます。ほら、このように」
ぅぅぅぅ……と温風が吹き出ると、令嬢たちは歓喜の叫び声を上げた。
「「まぁ、なんてすごい!」」
「この風を当てると、どんなに濡れていてもあっという間に乾いてしまいます。少し試してみますか?」
「「ええ、ぜひ!」」
令嬢のワンピースに温風を当てる。
表から裏から当てていると、ものの一分で完全に乾いてしまった。
彼女らはもう大騒ぎだ。
「本当に乾いてしまったわ! これは素晴らしい商品ね!」
「優しい温風でございますので、お風呂上がりの髪を乾かすのにも使えますよ」
「「なんですって!?」」
毎日の生活で、髪を乾かすのは意外と手間がかかる。
短ければ自然乾燥でいいけど、長かったりケアをしっかりしたい人は火魔法と風魔法を駆使しなければならない。
思った通りというか、令嬢たちも好反応だった。
「私は魔法があまり得意じゃないから大助かりだわ」
「髪は長くしたいけど、乾かすのが大変だったの」
「すぐに乾くなんて、これ以上ないほど嬉しいわね」
彼女らは嬉しそうにキャッキャッしている。
もうひと押し。
「全部で3個ご用意しておりますが……いかがでしょうか?」
「「もちろん買うわ。それで、この商品はいくらかしら?」」
脳をフル回転させて計算する。
できることならば、なるべく高く売りたいところ。
でも、あまりにも高すぎると、口コミが広がらないかもしれない。
むしろ、“あそこの店はがめつい”的な評判になっちゃうかも。
かと言って、安売りしては今まで通りだ。
どうすれば最大限に利益が出るのか……よし。
「通常品は7000レンでございますが、こちらは試作品なので特別に5000レンでお売りさせていただきます」
「「安いじゃないの! 買うわ!」」
「お買い上げありがとうございます」
アイテムを渡してお金を受け取る。
コモン家にとってはすごい大金だ。
「ありがとう、お嬢ちゃん。すごく良いお買い物ができたわ」
「これさえあれば、雨なんか問題ないわね」
「毎日愛用させてもらうわ」
令嬢たちからは鬱々とした表情は消え、太陽のように輝く笑顔だ。
いつの間にか、さっきまで強かった雨もだいぶ弱くなっていた。
さて、もう潮時かなと思ったとき、薄い緑服の令嬢が尋ねた。
「誰が造ったアイテムなのかしら?」
「あっ、私です」
「「…………あなたが造ったの!? え、な、何歳? もしかして、本当は500歳くらいなんじゃ……」」
「5歳です」
「「!?」」
激しく驚く令嬢たち。
私みたいな幼女が造った、って言ったら信頼性が下がるかな。
……いや、たぶん大丈夫ね。
ウソを吐くのもなんだし。
はぁー! とか、へぇー! とか感嘆の声を上げる彼女らを出口まで見送る。
「今日はどうもありがとうございました。今後ともコモン商店をぜひよろしくお願いいたします」
「「こちらこそありがとう。絶対また来るわ」」
令嬢たちに手を振ってお店に戻ると、父やリリスが感心した様子で佇んでいた。
〔ルーは商才があるでんなぁ。わてはずっと圧倒されてたで〕
「うむ! さすがは私の娘だ! 私では絶対にあんな上手く売れないぞ!」
〔見事なり……〕
「いや、たまたま偶然が重なっただけだよ」
パチパチパチとみんなに拍手される。
おねしょの副産物から生まれたアイテムではあるけれど、コモン家の収入が増えて良かった。
お忙しい中読んでいただき本当にありがとうございます
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